アルギニンは糖尿病と糖尿病合併症の両方を予防・改善します!〔アルギニンの血糖低下作用はインスリン分泌促進作用とインスリン抵抗性改善作用の両作用(新規メカニズム)の働きによります。アルギニンの糖尿病合併症予防・改善作用は糖化抑制作用などの働きによります〕
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1.アルギニンは糖尿病を予防・改善します! |
1)糖尿病とはどういう病気でしょうか ●糖尿病とは、すい臓(膵臓)からのインシュリンの分泌が悪くなったり、末梢組織(筋肉、脂肪組織、肝臓など)でのインシュリンの働きが悪くなったり(インシュリン感受性の低下。インシュリン抵抗性)して、血糖値が高くなる病気です〔インシュリンはすい臓のベータ細胞(β細胞)というところから分泌される、糖分(ブドウ糖)を体に取り込ませて利用させるために働くホルモンです〕。 ●糖尿病は、1型糖尿病と2型糖尿病に大きくわけられます。日本人の糖尿病の大部分は2型糖尿病です。 1型糖尿病は、すい臓が働かなくなってインシュリンが分泌されなくなり発病します。 2型糖尿病は、すい臓からのインシュリンの分泌が悪くなるのと、末梢組織でのインシュリンの働きが悪くなる(インシュリン感受性の低下。インシュリン抵抗性)ことで発病します。 ●糖尿病の診断 ①早朝空腹時血糖値が126mg/dl以上、または②75gOGTT〔75g経口ブドウ糖負荷試験(75gのブドウ糖を飲ませて血糖値の上がり具合を調べる試験)〕で2時間値200mg/dl以上、または③随時血糖値200mg/dl以上、または④HbA1c(NGSP)が6.5%以上〔HbA1c(JDS)が6.1%以上〕のとき糖尿病型と判定されます。ただし①~③のいずれかと④が確認された場合には糖尿病と診断されます。 なお、別の日に行った検査で、糖尿病型が再確認できれば糖尿病と診断できる。ただし、初回検査と再検査の少なくとも一方で、必ず血糖値の基準を満たしていることが必要で、HbA1cのみの反復検査による診断は不可。 血糖値が糖尿病型を示し、かつ次のいずれかが認められる場合は、初回検査だけでも糖尿病と診断できる。1)口渇、多飲、多尿、体重減少などの糖尿病の典型的な症状。2)確実な糖尿病網膜症。 検査した血糖値やHbA1cが糖尿病型の判定基準以下であっても、過去に糖尿病型を示した資料(検査データ)がある場合や、上記1)、2)の存在の記録がある場合は、糖尿病の疑いをもって対応する。 なお、早朝空腹時血糖値110mg/dl未満で75gOGTT2時間後の血糖値が140mg/dl未満の場合正常型と判定します。また、正常型にも糖尿病型にも属さない場合は境界型と判定します。境界型にはIFG(空腹時血糖異常)とIGT(耐糖能異常)とがあります(WHO分類)。IFGは空腹時血糖値が110~125mg/dlで、75gOGTT2時間後の血糖値が140mg/dl未満の場合をいいます。IGTは空腹時血糖値が126mg/dl未満で、75gOGTT2時間後の血糖値が140~199mg/dlの場合をいいます(WHOの糖尿病診断基準)。 ●糖尿病が強く疑われる人は約950万人、糖尿病の可能性が否定できない人は約1,100万人、合わせて約2,050万人に上るものと推計されています(男女とも60歳以上の3~4割は高血糖と推計されています)(「平成24年国民健康・栄養調査結果の概要」厚生労働省)。 近年、糖尿病患者は急増しており、10~20年後には日本人の半分は糖尿病あるいはその予備軍となる可能性があると予測している人もいます。 いま、糖尿病は、患者数の異常な増加と、その合併症の悲惨さから、結核に代わって、「日本の国民病」といわれています。 ●1型糖尿病は、インシュリンを分泌するすい臓のベータ細胞に対する自己免疫反応(自分の免疫が自分の組織や臓器を攻撃して壊すことをいいます)がおこり、その結果、すい臓に炎症が生じ、ベータ細胞が死んで少なくなり、インシュリンの分泌がすごく少なくなるか分泌されなくなることが原因でおこります。 2型糖尿病の発病は、遺伝的に糖尿病になりやすい人(日本人は特に糖尿病になりやすい体質といわれています)に、肥満、食べ過ぎ、運動不足、ストレスなどの生活習慣の乱れや加齢(老化)などが加わっておこると考えられています。そのため2型糖尿病は典型的な生活習慣病です。 ●糖尿病を治療する最大の目的は、糖尿病合併症、特に、慢性合併症がおこるのを防ぐことにあります。糖尿病合併症には重篤なものが多く、その代表的なものとして腎症、網膜症、神経症などの細小血管症や、動脈硬化症、脳血管障害(脳出血、脳梗塞など)、虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞など)、末梢循環障害(閉塞性動脈硬化症、壊疽など)などの大血管症があり、ひどくなってくると命に関わります。 血糖値をできるだけ正常値に保つことが、糖尿病合併症の発病や進行を抑える効果的な方法ですが、現実にはこれは大変困難なので、現在の治療法では合併症の発病や進行を延ばすだけで、最終的にはほとんどの糖尿病患者は合併症になります〔現在の治療法では糖尿病を治癒する(正常に戻す)ことはできません〕。 なお、糖尿病患者の主な死因は合併症の心筋梗塞、脳梗塞、腎症などです。また、糖尿病患者の平均寿命は67~68歳で、日本人の平均寿命の81歳よりかなり短命です。 一方、一旦糖尿病になった後では現在の治療法では糖尿病を治癒する(正常に戻す)ことはほとんど不可能なので、糖尿病になる一歩手前の境界型(糖尿病予備軍。準糖尿病状態)の状態から糖尿病へ移行するのを防ぐ、または正常に戻すための治療が積極的に行われるようになってきました。また、境界型の中でもIGTは糖尿病の場合と同様に動脈硬化などの大血管症が起こりますのでその予防のためにも境界型から正常に戻す治療が積極的の行われています。 ●1型糖尿病では、すい臓からインシュリンはほとんど分泌されませんので、その治療は必要なインシュリンを外から補充するインシュリン療法によって行われます。 2型糖尿病の治療の基本は食事療法と運動療法です。この両療法によっても血糖のコントロールが困難な場合は血糖低下剤による薬物療法がおこなわれます。血糖低下剤には、すい臓からのインシュリンの分泌を促進して血糖値を下げる薬剤、末梢組織でのインシュリンの働き(インシュリン感受性)を高めて(インシュリン抵抗性の改善)血糖値を下げる薬剤、糖の吸収を抑えて血糖値を下げる薬剤などがあります。 血糖低下剤には重篤な副作用(場合によっては死ぬような)を示すものが多いので注意が必要です。最も注意すべき副作用は低血糖です。近年、夜間の低血糖による認知症が特に高齢者で問題になっています。また、肝障害で多くの死亡者が出たことがあります。その他注意すべき副作用として、乳酸アシドーシス、むくみ、心不全、腎障害、腹痛、下痢などがあります。 境界型の治療は先ず生活習慣の改善(運動療法や食事療法など)です。これにより境界型の一部は正常に戻ることが示されていますが、その効果は十分ではありません。そのため糖尿病の治療に使われている医薬品をその目的のために使えないか検討が進められ、最近一部の薬剤が使用されるようになって来ましたが、使用者の約半数に副作用が見られ、その中には重篤な副作用も見られています。しかしながら、境界型のような軽症(軽症糖尿病)の患者に副作用の心配のある医薬品を使うことが本当に良いのか疑問に感じられます。 ●2型糖尿病の発病は、遺伝的に糖尿病になりやすい人(日本人は特に糖尿病になりやすい体質といわれています)に、肥満、食べ過ぎ、運動不足、ストレスなどの生活習慣の乱れや加齢(老化)などが加わっておこると考えられていますが、糖尿病の発病にアルギニンの不足が関わっている可能性があります。アルギニンは肥満、食べ過ぎ、運動不足、ストレス、加齢(老化)などによって体内での濃度や働きが低下することが知られています。アルギニンは、GLP-1(血糖低下ホルモン)の分泌を促進することで、血糖値の上昇に応じてすい臓からのインシュリンの分泌を促進しますが(すい臓のインシュリンを分泌するβ細胞の働きを高めます)、さらに末梢でのインシュリンの働き(インシュリン感受性)を高める(インシュリン抵抗性の改善)作用も持っていますので、その不足は糖尿病の発病や進行を促進する可能性があります。実際、糖尿病患者において、アルギニンの摂取によって血糖値が低下し糖尿病は改善されました。また、境界型(IGT)の患者ではアルギニンは血糖値を正常化し、糖尿病への移行を防ぎました。アルギニンはまた直接糖尿病合併症を予防・改善する作用もあります。このようにアルギニンは糖尿病(およびその合併症)を根本から予防・改善するなくてはならない生体成分と考えられます。アルギニンは生体成分(体に必要なアミノ酸)です。アルギニンは安全性が高く副作用の心配はほとんどないと考えられます。 医薬品では、1つの成分でインシュリンの分泌を促進し、末梢でのインシュリンの働きを高める両作用を持つものはほとんどありません。また、医薬品はほとんどが生体にとって異物ですので副作用も強いです。一方、アルギニンは、1つの成分でこの両作用を持っています(糖尿病薬として望ましい作用。新規メカニズム)。さらにアルギニンは糖尿病合併症を直接予防・改善しますので、糖尿病(および糖尿病合併症)予防・改善成分としては最も望ましい作用と言えます。それはアルギニンが糖尿病になるのを防いだり、糖尿病やその合併症を改善したりする役目を持つ生体成分だからこそこれらの作用を同時に持つものと考えられます。また生体成分ですので副作用の心配はほとんどありません。つまり、アルギニンは糖尿病(およびその合併症)を根本から予防・改善することが期待できる、安全性の心配がない、最も理想的な糖尿病(および糖尿病合併症)予防・改善成分と考えられます。 2)アルギニンの糖尿病予防・改善効果 (1)糖尿病に対するアルギニンの効果 〔以下のアルギニンの働きは国際的な一流の医学誌や科学誌に掲載された信頼できるデータに基いたものです。詳しくは「(6)アルギニンが効果を示す文献例」をご覧下さい〕 ●アルギニンは、すい臓からのインシュリンの分泌を促進しました(β細胞の働きを高めます)。 ●アルギニンは、末梢組織(筋肉、脂肪組織、肝臓など)でのインシュリンの働き(インシュリン感受性)を高めました(インシュリン抵抗性の改善)。 ●アルギニンは、2型糖尿病患者の血糖値を低下させ、糖尿病を改善しました。アルギニンの血糖低下作用は血糖値が高いほどより強力でした。また、血糖低下剤で効きにくい患者でも強力に血糖値を下げました。 ●アルギニンは、肥満2型糖尿病患者の体脂肪と腹部脂肪を減少させて肥満を改善し、血糖値を低下させて糖尿病を改善しました。 ●アルギニンは、IGTの患者で、血糖値を正常化し、糖尿病への移行を防ぎました。 ●アルギニンの血糖低下作用は、血糖低下ホルモンであるGLP-1の分泌促進を介していることが明らかとなりました。すなわち、アルギニンはGLP-1の分泌を促進することで、血糖値の上昇に応じてインシュリンの分泌を促進し、上昇した血糖値を低下させることが明らかとなりました。アルギニンのこの働きは、最新の糖尿病治療薬であるDPP-4阻害剤(ジャヌビアなど)やGLP-1作用薬(ビクトーザなど)と同じGLP-1の作用を介する血糖低下作用であり、そのため強力に血糖値を低下させる一方で低血糖の心配はほとんど無いことになります。実際アルギニンが低血糖を起こすという報告はほとんどありません ●このように、アルギニンは、インシュリンの分泌を促進し(β細胞の働きを高め)、インシュリンの働き(インシュリン感受性)を高めて(インシュリン抵抗性を改善して)、高血糖を正常化したり、血糖値を低下させ、糖尿病を予防・改善します(新規メカニズム)。また、糖尿病患者の肥満や合併症を改善します。 アルギニンは、合成医薬品(血糖低下剤)と違って、副作用の心配はほとんどありません。 ●アルギニンは、高血糖を正常化したい方、糖尿病を改善したい方、糖尿病でお悩みの方、医薬品の副作用が怖い方、医薬品の副作用でお悩みの方におすすめします。また、肥満や合併症の改善にもおすすめです。アルギニンは生体成分(体に必要なアミノ酸)です。アルギニンは安全性が高く副作用の心配はほとんどないと考えられます。 (2)アルギニンの摂取方法 ●通常のアルギニンサプリメントの場合 (アルギニンには重大な問題点があるため『進化型スーパーアルギニンサプリメント』をおすすめします) アルギニンの摂取量は1日2~4gくらいから開始し、様子を見ながら摂取量を調節してください。これを1日1~3回にわけ摂取します。改善が見られたときは改善具合を見ながら摂取量を調節してください。 現在、薬をお飲みの場合は一緒に飲んでも特に問題は無いと考えられます。 なお、高血糖の正常化や、糖尿病の予防や改善にアルギニンを摂取される場合は、できるだけ生活習慣の改善〔運動やカロリー制限(ダイエット)〕と併用されることをおすすめします。 ※アルギニンの重大な問題点 アルギニンが高血糖の正常化や血糖低下作用を示すには、アルギニンの大量摂取が必要と報告されていますが、その理由は①アルギニンは、腸(のアルギナーゼ)によって分解され、摂取した量の2~5割しか体に利用されません。また、持続性が短いです(5~6時間程度)。②老化や老化病、高血糖や糖尿病などにおいて、あるいは長期間の摂取(例えば3ヶ月程度以上など)や大量摂取(例えば1日3g程度以上など)などにおいて、全身のアルギナーゼ活性が上昇することが知られており、そのような時、アルギナーゼによってアルギニンが分解されるため、アルギニン不足により、アルギニンの働きが弱くなったり、消失したり、アルギニン不足によって生成した活性酸素でかえって健康障害や病気の悪化を引き起こしたりします。③アルギニンの最も重要な作用として、アルギニンがNOS(一酸化窒素合成酵素)の働きによって変化を受け生成するNO(一酸化窒素)による働きがありますが、NOSは活性酸素の影響を受けやすく、酸化ストレス(活性酸素)が亢進しているとき〔老化や老化病、高血糖や糖尿病などにおいて〕、活性酸素によってNOSの働きは阻害され、NOSはNOを生成せずに活性酸素(スーパーオキシド)を生成します。その結果、アルギニン(NOを介した)の働きが弱くなったり、消失したり、生成した活性酸素でかえって健康障害や病気の悪化を引き起こしたりします。 すなわち、アルギニンにはこのような重大な問題点があるため、働きが弱く〔働きを示すために大量摂取が必要〕、持続性が短く(6時間程度。1日4回程度の頻回摂取が必要と考えられます)、長期間(例えば3ヶ月程度以上)の摂取で働きが弱くなったり消失したり、かえって健康障害が生じたりします。そのため、大量のアルギニンを長期間漫然と摂取することはお避け下さい。 一方、アルギニンの重大な問題点①~③を克服することによって、アルギニンの働きは数倍以上に強力になり、持続性が長くなり、長期間の摂取によっても働きが弱くなったり、消失することがなく強力に働き続けることが期待できます。 ●『進化型スーパーアルギニンサプリメント』の場合 (『進化型スーパーアルギニンサプリメント』について詳しくは「アルギニンの欠点を克服し、超強力・超持続を目指した、進化型「スーパーアルギニンサプリメント」の開発の試み=長寿、健康長寿、若返り、老化・老化病抑制も夢ではない、究極のスーパーアンチエイジングサプリの創製を目指して=〚詳細編〛または〚概要編〛をご参照ください)。 『進化型スーパーアルギニンサプリメント』は、アルギニンの重大な問題点①~③を克服し、働きの発現が非常に早く、超強力(6~8倍程度あるいはそれ以上)・超持続(2倍程度)で、長期間(例えば3ヶ月程度以上)働きが期待できます。そのため、高血糖や糖尿病などの予防・改善には、アルギニンとして1日1g程度の摂取から始めます。効きめを見ながら摂取量を調節します。効果をあらわす摂取量は個人によって異なる場合があります。なお、『進化型スーパーアルギニンサプリメント』の場合、そのアルギニン1gは、通常のアルギニンサプリメントのアルギニン6~8g程度あるいはそれ以上に相当すると考えられます。また、アルギニンを長期間(例えば3ヶ月程度以上)摂取し続けても、アルギニンの効果が弱くなったり、消失したりする可能性は低いことが期待できます(『アルギニンサプリメントの正しい選び方』もご参照下さい)。 ●アルギニンを摂取する場合の注意点 これについては『アルギニンサプリメントの正しい選び方』をご覧ください。 (3)糖尿病を改善したい方のための『アルギニン+運動+ダイエット』健康法 【日本人になぜ糖尿病(高血糖)が多いのでしょうか?】 ●日本人はもともと糖尿病になりやすい体質(遺伝)(インシュリンの出がもともと悪い)です。 ●しかし、昔は糖尿病の人はほとんどいませんでした。 ●その理由:昔の人の食事は質素でした。また、良く歩いていました。このように体質(遺伝)だけでは糖尿病にはなりません。 ●今は男女とも60歳以上の3~4割は高血糖。その主な理由はぜいたくすぎる食事(食べ過ぎ:現在日本人のほとんどはカロリーの取りすぎ)と運動不足(による肥満)です。 ●食べ過ぎと運動不足(による肥満)はインシュリンの働きを悪くします。 ●つまり、現代の日本人に特に糖尿病が急激に増えてきたのは、体質(遺伝)+カロリーのとりすぎ+運動不足が主な原因です。 ●インシュリンの出が悪い体質(遺伝)に加え、食べ過ぎと運動不足(による肥満)でインシュリンの働きが悪くなれば、当然糖分が体に利用されにくくなり、血糖値は上がり糖尿病になります。つまり、現代の日本人の多くは糖尿病になる危険を背負っています。 【糖尿病にならないための、あるいは糖尿病を改善するための一番良い方法はあるのでしょうか?】 ●糖尿病にならないための一番良い方法は、昔の生活に戻ることです。つまり、粗食に耐え、車を使わない生活をすることです。 ●でもこのような生活を我々に求めても無理。 ●糖尿病になるとまず食事療法と運動療法(によって痩せる)をするようにといわれますが、なかなか目標を達成するのは困難です。 ●その場合は体内にある糖尿病や肥満を防ぐ成分の助けを借ります。それによって食事療法と運動療法の効果をより高めることができます!その成分とは『アルギニン』。アルギニンはインシュリンの出を良くし、インシュリンの働きを良くする体の糖尿病予防成分です。また、脂肪の分解を促進して肥満を防ぐ成分です。しかし、食べ過ぎや運動不足でアルギニンが足りなくなります。不足するアルギニンを補充すると糖尿病を防いだり改善することができます。また、体脂肪や腹部脂肪を減少させ肥満を改善することができます。 ●アルギニンだけでも糖尿病に効果が示されていますが、アルギニンに加え、摂取カロリーを少なくし、軽い運動をすれば、糖尿病をより強力に防いだり改善することができるようになります(相乗効果)。また、より強く肥満を改善することができます。 ●アルギニンは1日2~9g程度を摂取します。『進化型スーパーアルギニンサプリメント』の場合は、アルギニンとして1日1g程度の摂取から始めます。効きめを見ながら摂取量を調節します。(アルギニンには重大な問題点があるため『進化型スーパーアルギニンサプリメント』をおすすめします)。 ●運動は1日30分~1時間程度を時速4~6km程度でウォーキングします(1万歩くらいを目安にしてください)(ウォーキングマシーンを使っても、あるいは水泳など他の同等の運動をしても結構です)。但し、これを少なくとも週3~5日程度は行ってください。 ●ダイエットは1日摂取カロリーを1400~1500kcal程度(女性ではこれより200~300kcal程度少ない1100~1200kcal程度です)に抑えます。最初はおなかがすきますがそのうち慣れます。ただ、これだけではあまりに切ないので、1週間に1回ぐらいはぜいたくして、美味しいものをお腹いっぱい食べるのもいいでしょう。 ”『アルギニン』の摂取(+運動+ダイエット)で血糖値が正常化することが文献で報告されています(下記文献参照)!!” (4)もし私が糖尿病、あるいは糖尿病予備軍だったらどういう治療法を選択するでしょうか 以上述べてきました糖尿病に対するアルギニンの非常に望ましい働きから、もし私が糖尿病になったら[あるいは糖尿病予備軍だったら(境界型の場合など)]、私はアルギニンをどう使うでしょうか。まず、私が境界型の場合を考えて見ます。境界型とは、血糖値が糖尿病より低いが正常より高い場合を言います。この場合、糖尿病になるのを防ぐために食事療法や運動療法を行いますが、2年くらいでほぼ半数が糖尿病に移行するといわれています。この時薬(医薬品)はおすすめできません。その理由はこのような軽い状態で(まだ糖尿病になっていない状態で)使える、副作用の心配が無い安全な薬が現在ないからです。 アルギニンの信頼のおけると考えられる臨床試験データによりますと、境界型の人にアルギニンを18ヶ月間摂取させたところ、糖尿病への移行率は、アルギニンを摂取させない場合に比べ、約半分に低下したということです。また半分近くの人が血糖値が正常に戻ったということです。副作用に関しては、試験期間中のアルギニンの副作用はほとんど認められなかったということです(下記文献を参照下さい)。 境界型の段階でしっかり治療し、糖尿病への移行をいかに防ぐかは極めて重要なことです。というのは、一旦糖尿病になるともう正常に戻るのはかなり難しいからです。どんどん進行していき(いくら治療しても糖尿病の進行を完全に止める薬や治療法は現在は無いからです)、最後には糖尿病合併症(腎不全・透析、失明、手足の潰瘍・壊疽による切断など)で苦しみ死亡(心筋梗塞、脳梗塞、腎症などで)することになります(糖尿病患者の平均寿命は67~68歳で、日本人の平均寿命の81歳よりかなり短命です)。 このように、アルギニンは極めて安全性が高く、境界型からの糖尿病移行率を低下させ、血糖値を正常化させる効果が明らかに認められるために、もし私が境界型でしたらアルギニンを絶対摂取します。(アルギニンには重大な問題点があるため『進化型スーパーアルギニンサプリメント』を摂取します)。 次に、不幸にも私が糖尿病になったらどういう治療法を選択するでしょうか。アルギニンの効果が十分なときはアルギニンのみを摂取します。その理由は他の薬剤に比べ低血糖のリスクがないのを含め安全性が格段に高いからです。糖尿病が進行してアルギニンのみでは血糖低下効果が十分でないときは他の薬剤を併用します。他の薬剤との併用効果も期待できるからです。また、アルギニンには糖尿病合併症への直接効果(「2-2.アルギニンは糖尿病合併症を予防・改善します!」を参照下さい)がありますのでそれを期待して最後まで使い続けます。(アルギニンには重大な問題点があるため『進化型スーパーアルギニンサプリメント』を摂取します)。 以上の私の糖尿病治療法が少しでも皆様の参考になれば幸です。 (5)アルギニンの血糖低下作用のメカニズム 高血糖(や2型糖尿病。インスリン依存性でない)は、インスリン分泌低下やインスリン抵抗性をきたす複数の遺伝因子に、過食(特に高脂肪食)、運動不足などの生活習慣の乱れ、およびその結果としての肥満が環境因子として加わり、インスリンの作用不足を生じて発症します(参考文献1)。このように、高血糖(や2型糖尿病)では、インスリン分泌低下とインスリン抵抗性の両者が発症や進展にかかわっています。肥満があるか、過去に肥満歴を有する者が多いです。高血糖(や2型糖尿病)の有症率は加齢とともに増加します。高血糖(や2型糖尿病)の是正には、生活習慣を改善(食事療法や運動療法など)すると共に、インスリン分泌能の回復やインスリン抵抗性の改善が必要となります。また、正常高値や境界型などにおける高血糖は、糖尿病や動脈硬化のリスクを高めるため、正常型への移行を目的として、インスリン分泌能やインスリン抵抗性の正常化を目指して、積極的な介入を行う必要があります。 アルギニンは、高血糖において、血糖値を低下させる作用を有しますが、その働きは、インスリン分泌促進作用とインスリン抵抗性改善作用の両作用によって行われると考えられます。その機序について以下述べます。 【アルギニンのインスリン分泌促進作用の機序】 ●高血糖(や2型糖尿病)におけるインスリン分泌低下の機序
膵β細胞において、グルコースがインスリンを分泌するまでの経路についておおまかに以下のように考えられています。グルコースは、細胞膜のグルコーストランスポーター(GLUT)を介して細胞内に取り込まれると、解糖系、ミトコンドリアでの代謝を受けて細胞内ATP濃度が上昇します。細胞内ATP/ADP比の上昇は、ATP感受性K+
(KATP)チャネルの閉鎖をもたらし、細胞膜電位が上昇し脱分極します。その結果、電位依存性Ca2+チャネル(VDCC)が開口し、細胞外からCa2+が細胞内に流入します。細胞内Ca2+濃度の上昇はインスリン分泌顆粒の開口放出をもたらし、血中にインスリンが分泌されます。従って、これらの経路のどこかで異常が起これば、グルコースによるインスリン分泌機能に障害が生じることになります。高血糖(や2型糖尿病)においては、グルコースによるインスリン分泌反応は低下します。一方、同じくインスリン分泌を刺激するアルギニンは、高血糖(や2型糖尿病)においても分泌反応はほとんど変化しないか、むしろ高くなる傾向にあります。このことは、グルコースに対する選択的なインスリン分泌障害が存在し、またグルコースとL-アルギニンのインスリン分泌刺激作用の機序や経路は異なることを示しています。このグルコースに対する選択的なインスリン分泌不全は、細胞内のグルコース代謝障害に基づくATP産生障害が原因であると考えられています。 高血糖(や2型糖尿病)ではβ細胞量が減少しています。日本人においては、β細胞量は、高血糖(や2型糖尿病)では正常と比べて約30%減少すると報告されています。高血糖(や2型糖尿病)では、慢性高血糖や遊離脂肪酸、IAPP(islet amyloid polypeptide)の増加が膵β細胞死を促進させることが知られています。これらの因子は、膵β細胞に炎症、酸化ストレス増加、小胞体ストレス増加を誘導し、膵β細胞死を促進します。 Montiらは(参考文献6)、IGT(impaired
glucose tolerance、耐糖能障害、境界型)の被験者において、アルギニンが、経口投与による長期摂取(18ヶ月)によって、プラセボに比べ、インスリンの分泌を有意に促進し、IGTからNGT(normal glucose tolerance、耐糖能正常)への移行を有意に増加することを示しました。アルギニンは、プラセボに比べ、OGTT30分後のインスリン値を有意に増加させ、その時の血糖値を有意に低下させました。一方、OGTT120分後の血糖値はアルギニン群とプラセボ群において有意な差は認められなかったが、インスリン値はアルギニン群で有意に低下しました。また、β細胞機能を示す指標(IGI、プロインスリン/c-ペプチド比など)はプラセボに比べ有意に改善しました。このように、Lアルギニンは、インスリン分泌能とβ細胞の機能を有意に改善しました。 アルギニンのインスリン分泌促進作用についての作用機序としていくつか提案されています。Schmidt らは(参考文献7)、膵β細胞において、グルコースの存在下で、アルギニンがインスリンと一酸化窒素(NO)の放出を引きこすこと、一方、一酸化窒素合成酵素(NOS)阻害剤が、グルコースの存在下、アルギニンによるインスリン分泌を抑制することを示しました。また、そのNO生成は1型のNOS(NOS1、nNOS)によることを明らかにしました。このことは、アルギニンが膵β細胞において、グルコース存在下で、nNOSを活性化し、それによってアルギニンから生成増加したNOにより、インスリン分泌を促進することを示していると考えられます。グルコキナーゼは、グルコース刺激による膵β細胞からのインスリン分泌に重要な役割を果たしていますが、NOがグルコキナーゼを調節している可能性が示されています(参考文献8)。一方、Clemmensenらは(参考文献9a)、アルギニンによるインスリン分泌促進作用と血糖値改善作用には、そのGLP-1分泌促進作用が関係していることを明らかにしました。非肥満マウス(C57BL/6)と、高脂肪食肥満マウス(C57BL/6)に生理食塩水またはアルギニンを経口投与し、その後ブドウ糖負荷試験を行いました。その結果、非肥満マウスおよび肥満マウスともに、アルギニン投与群で、生理食塩水投与群に比べ、ブドウ糖負荷による血糖値上昇は有意に抑制されました。一方、非肥満マウスおよび高脂肪食肥満マウスにおいて、アルギニンは、血漿GLP-1濃度を有意に増加しました。次に、高脂肪食肥満マウスにおいて、ブドウ糖負荷試験を行いました。ブドウ糖負荷によって生じたGLP-1の血漿中濃度の増加は、生理食塩水経口投与に比べ、アルギニンの経口投与によって有意に増強されました。これに一致して、ブドウ糖負荷によって生じた血漿中インスリン濃度の増加は、生理食塩水経口投与に比べ、アルギニンの経口投与によって有意に増強されました。アルギニンによる血糖値上昇抑制作用とインシュリン増加増強作用が、GLP-1を介するかどうかの検討が、GLP-1のレセプターを欠損したマウス(Glp1r KOマウス)を用いて検討されました。その結果、野生型マウスではアルギニンの経口投与で血漿中インスリンレベルは有意に増加しましたが、Glp1r KOマウスではアルギニンの効果は見られませんでした。ブドウ糖負荷試験においては、野生型マウスでは、アルギニンの経口投与によって、生理食塩水の投与に比べ、血糖値の上昇は有意に抑制されましたが、Glp1r KOマウスではアルギニンの効果は見られませんでした。これらの結果は、アルギニンによるインシュリン増加作用と血糖上昇抑制作用の少なくとも一部は、GLP-1のレセプターを介して行われていることを示しています。つまり、アルギニンは、インシュリン分泌を増加させ、血糖値を改善する働きを示しますが、少なくともその働きの一部はGLP-1が関与していることが明らかとなりました。アルギニンによるGLP-1分泌促進作用はヒト(健常人)でも報告されました。Aminらは(参考文献9b)、アルギニンの経口投与が、健常人において、食後の血漿中GLP-1濃度の増加をプラセボに比べ有意に増強することを示しました。 高血糖状態や糖尿病におけるインスリン分泌低下の原因として、膵β細胞量の減少や機能の低下があげられます。Vasilijevicらは(参考文献10)、膵β細胞量や機能へのアルギニンの効果を評価するために、アロキサンによって引き起こされた糖尿病ラット(アロキサン糖尿病ラットモデル)(非肥満インスリン分泌低下型2型糖尿病モデル)を用いました。アロキサンは、2型糖尿病患者に見られるような、膵β細胞における活性酸素(ROS)の生成と細胞障害を引き起こします(参考文献11、12)。従って、アロキサン糖尿病ラットは、ROSによって引き起こされた膵β細胞障害モデルと考えられます。アロキサン糖尿病ラットにおいて、アルギニンの経口投与は、高血糖の有意な低下と、低下したインスリン分泌能のほぼ正常レベルまでの回復を示しました。免疫組織化学的検討から、アルギニンは、β細胞の新生に望ましい効果を有することが示されました。アルギニンは、膵臓において、インスリン陽性細胞を増加させました。さらに、膵内分泌および外分泌両方にインスリンとPDX-1の共存が示されました。このインスリン発現細胞の増加は、調節された様式で、細胞増殖の増加を伴っていました。また、抗酸化防御におけるアルギニンの効果が認められました。アルギニンによるこれらの働きは、nNOSによって生成されたNOを介すると考えられました。これらのことから、アルギニンは、NO(nNOSによって生成された)の働きを介して、膵β細胞量の増加促進作用や機能促進作用を有する可能性が示されました。なお、前述したように、アルギニンはGLP-1分泌促進作用を有していることが示されています(参考文献9)。GLP-1受容体作動薬は、GKラット(非肥満インスリン分泌低下型2型糖尿病モデル)膵島細胞において、高グルコースによる活性酸素(ROS)過剰産生を抑制し、高グルコースによるATP増加の障害を改善しました(参考文献13)。また、GLP-1あるいはGLP-1受容体作動薬は、2型糖尿病動物モデル(アロキサン糖尿病モデルを含む)において、血糖値およびインスリン分泌改善作用を示すとともに、膵β細胞増殖の増加、膵β細胞アポトーシスの減少、膵β細胞量増加、膵β細胞における酸化ストレスの抑制などの作用を示しました(参考文献14、15)。これらのことから、アロキサン糖尿病ラットにおけるアルギニンの膵β細胞増殖の増加、膵β細胞量増加、抗酸化などの作用は、NO(nNOSによって生成された)やGLP-1を介して行われると考えられました。 以上をまとめると、アルギニンのインスリン分泌促進作用やインスリン分泌低下改善作用の機序として以下のように考えられます。 膵β細胞において、アルギニンからnNOSの働きで生成したNOが、グルコースの存在下で、インスリンの放出を引き起こすことが示されました。一方、アルギニンはGLP-1を分泌促進することでインスリンを分泌促進することが示されました。これらの結果は、アルギニンのインスリン分泌促進作用にはグルコースの負荷が必要であり、低血糖を引き起こす可能性は低いものと考えられました。また、アルギニンは、膵β細胞増殖の増加、膵β細胞量増加、抗酸化などの作用を有することが示されました。 これらのことから、アルギニンは、インスリン分泌促進作用を示すとともに、膵β細胞のインスリン分泌能障害と膵β細胞量の減少の両者を抑制することで、高血糖状態におけるインスリン分泌低下を改善することが期待できますが、これらの作用もNO(nNOSによって生成した)や、GLP-1の作用を介していると考えられます。 ●肥満、高血糖、または2型糖尿病におけるインスリン抵抗性発現の機序 インスリン抵抗性とは、インスリンに対する標的細胞の代謝反応が減少すること、または、インスリンによる血糖低下作用が障害されることを示します(参考文献2、16)。インスリン抵抗性は、それをきたす遺伝因子に、過食(特に高脂肪食)や運動不足(身体不活動)、およびその結果としての肥満(特に腹部肥満)が環境因子として加わり、引き起こされると考えられています。グルコースのホメオスタシスは、空腹時の肝臓におけるグルコース生成と、摂食時の骨格筋および脂肪組織でのグルコース利用との調和によって維持されます。インスリンは、肝臓のグルコース産出を抑制し、筋肉や脂肪組織へのグルコースの取り込みを促進します。グルコースは、肝臓においてはグルコーストランスポーターGlut2によって放出され、筋肉や脂肪においてはインスリン感受性Glut4によって取り込まれます。 高脂肪食や肥満がインスリン抵抗性を引き起こす機序として大略以下のように説明されています(参考文献2、16)。高脂肪食や肥満は、グルコース新生に関わる肝細胞の調節因子の働きを乱して(例えば、Foxo1の働きを増加させる)、肝臓のグルコース産出を増加します。一方、骨格筋においては、インスリンによるGlut4のグルコーストランスポーター反応(Glut4トランスロケーション)を抑制しグルコースの取り込みを抑制します。また、インスリンに対する脂肪組織の反応性が阻害されます。これらの糖調節機構の乱れ(インスリン反応の低下、あるいはインスリン感受性の低下、あるいはインスリン抵抗性の増加)は、高血糖を引き起こし、膵β細胞からのインスリン分泌を増加させて高インスリン血症を生じさせます(参考文献16)。 アルギニンが、インスリン抵抗性を改善することは、いくつかの文献で報告されています(例えば、参考文献17,18)。 アルギニンのインスリン抵抗性改善作用の機序として以下のように考えられます(参考文献19, 20および引用文献)。 アルギニンは、主としてNOの働きを介してインスリン抵抗性を改善すると考えられます。アルギニンからeNOSの働きで生成されたNOは、インスリンによる糖調節に重要な役割を果たしているように思われます。NOはインスリン刺激によるグルコース輸送の重要なメディエーターである可能性があります。インスリンは、そのレセプターとインスリンシグナル経路を介してeNOSを活性化し、NO生成を増加します。インスリンによる細胞膜におけるGLUT4の動員とグルコース処理は増加したNO生成によるものと考えられます。NOは、骨格筋において、細胞表面におけるGLUT4レベルの増加によりグルコースの輸送を刺激し、グルコースの酸化を促進します。脂肪組織においては、アルギニン(NO)は、グルコースの酸化を促進します。また、NOは、肝臓において内因性グルコース産生を減少させます。一方、eNOSの障害やNO生成不足はインスリン抵抗性の原因となると考えられます。実際、NOの不足は、インスリンによるグルコースの取り込みを阻害し、インスリン抵抗性を誘導します。またNOの不足は、インスリンによる糖新生抑制作用を阻害します。NOは、肥満や糖尿病状態において減少するため、このNO不足は肥満や糖尿病におけるインスリン抵抗性の原因の一つになると考えられます。このように、インスリン抵抗性の重要な原因の一つとしてNOの不足が考えられますが、アルギニンは、eNOSを活性化してNOレベルを高め、NOの働きを介して、インスリンの働きを高め、細胞膜におけるGLUT4の動員によるグルコースの取り込みやグルコース処理を促進し、糖新生を抑制することなどでインスリン抵抗性を改善すると考えられます。 一方、肥満はインスリン抵抗性の重要な原因の一つと考えられているため、肥満の改善はインスリン抵抗性の予防や改善に重要です。アルギニンは、NO(cGMP)を増加し、肥満(特に腹部肥満)を改善します。アルギニンは、脂肪組織や筋肉において、白色脂肪を減少させる一方、褐色脂肪や筋肉を増加させます。また、脂肪細胞の大きさは減少させます。アルギニンは、脂肪組織において、脂肪分解および脂肪酸の酸化を促進します。アルギニン(NO)は、PGC-1αの発現を増加して、ミトコンドリアの量を増やし、脂肪組織において基質の酸化能を活性化し、白色脂肪細胞の褐色脂肪細胞化を促進するものと考えられました。アルギニン(eNOS、NO)は、肝臓において脂質合成を減少させ、肝臓および骨格筋において脂肪酸化を促進します。アルギニンは、トリグリセリドや遊離脂肪酸の血漿中濃度を減少させます。アルギニンは、このような抗肥満作用によって、インスリン抵抗性を防いだり改善するものと考えられました。 また、アルギニンは、ADMA(内因性のNOS阻害物質でインスリン抵抗性を引き起こすと考えられている)(参考文献19)の血漿中濃度を減少させ、アディポネクチンレベルを増加させるため、これらの作用によってもインスリン抵抗性を改善するものと考えられます。 アルギニンは、インスリン分泌促進作用とインスリン抵抗性改善作用の両作用によって、血糖値を低下させると考えられます。 アルギニンのインスリン分泌促進作用の機序として以下のように考えられます。膵β細胞において、アルギニンからnNOSの働きで生成したNOが、グルコースの存在下で、インスリンの分泌を引き起こすことが示されました。一方、アルギニンはGLP-1を分泌促進することでインスリンを分泌促進することが示されました。これらの結果は、アルギニンのインスリン分泌促進作用にはグルコースの負荷が必要であり、低血糖を引き起こす可能性は低いものと考えられました。また、アルギニンは、膵β細胞増殖の増加、膵β細胞量増加、抗酸化などの作用を有することから、高血糖状態におけるインスリン分泌低下の原因として考えられている膵β細胞量の減少やインスリン分泌能障害を抑制することで、高血糖状態におけるインスリン分泌低下を改善することが期待できますが、これらの作用もNO(nNOSによって生成した)や、GLP-1の作用を介していると考えられます。 アルギニンのインスリン抵抗性改善作用の機序として以下のように考えられます。アルギニンは、eNOSを活性化してNOレベルを高め、NOの働きを介して、インスリンの働きを高め、細胞膜におけるGLUT4の動員によるグルコースの取り込みやグルコース処理を促進し、糖新生を抑制することなどでインスリン抵抗性を改善すると考えられます。一方、肥満はインスリン抵抗性の重要な原因の一つと考えられているため、肥満の改善はインスリン抵抗性の予防や改善に特に重要です。アルギニンは、eNOSを活性化してNOレベルを高め、NOの働きを介して、肥満(特に腹部肥満)を改善すると考えられます。アルギニンは、脂肪組織や筋肉において、白色脂肪を減少させる一方、褐色脂肪や筋肉を増加させ、脂肪細胞の大きさを減少させます。アルギニンは、脂肪組織において、脂肪分解および脂肪酸の酸化を促進します。アルギニン(NO)は、PGC-1αの発現を増加して、ミトコンドリアの量を増やし、脂肪組織において基質の酸化能を活性化し、白色脂肪細胞の褐色脂肪細胞化を促進するものと考えられます。アルギニン(eNOS、NO)は、肝臓において脂質合成を減少させ、肝臓および骨格筋において脂肪酸化を促進します。アルギニンは、トリグリセリドや遊離脂肪酸の血漿中濃度を減少させます。アルギニンは、このような抗肥満作用によって、インスリン抵抗性を予防したり改善するものと考えられます。また、アルギニンは、ADMA(内因性のNOS阻害物質でインスリン抵抗性を引き起こすと考えられている)の血漿中濃度を減少させ、アディポネクチンレベルを増加させるため、これらの作用によってもインスリン抵抗性を改善するものと考えられます。 1.日本糖尿病学会(編・著),糖尿病診療ガイドライン2016.
日本糖尿病学会(2016);日本糖尿病学会(編・著),糖尿病治療ガイド2018-2019.
文光堂(2018). 2.綿田(編),糖尿病:研究の“いま”と治療の“これから”.実験医学,Vol35
(No.2), (2017)(増刊). 3.Eremin O, L-Arginine: Biological
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resistance by nitric oxide. Free Radic Biol Med, 73, 383 (2014). (6)アルギニンが効果を示す文献例 ≪アルギニンが高血糖を正常化し糖尿病のリスクを低下させる文献例≫ ●アルギニンは、糖尿病へ高率に移行する境界型(耐糖能異常、IGT)の高血糖を正常に戻し、糖尿病や動脈硬化のリスクを低下させることが、長期摂取(18ヶ月)によって明らかになりました。そして、その効果は摂取を中止したあとの12ヶ月の観察期間中も維持されていました。アルギニンによる問題となる副作用はほとんどありませんでした。 〔文献:L. D. Monti, E. Setola, P. C. G. Lucotti, M. M. Marrocco-Trischitta, M. Comola, E. Galluccio, A. Poggi, S. Mammi, A. L. Catapano, G. Comi, R. Chiesa, E. Bosi, P. M. Piatti. Effect of a long-term oral L-arginine supplementation on glucose metabolism: a randomized, double-blind, placebo-controlled trial. Diabetes Obes Metab, 14, 893(2012)〕。 【試験の背景および目的】 いまや糖尿病は、患者数の異常な増加と、その合併症の悲惨さから、日本のみならず世界的にも大きな問題となっており、その治療法や予防法の開発は焦眉の急となっています。糖尿病合併症には重篤なものが多く、その代表的なものとして腎症、網膜症、神経症などの細小血管症や、動脈硬化症、脳血管障害(脳出血、脳梗塞など)、虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞など)、末梢循環障害(閉塞性動脈硬化症、壊疽など)などの大血管症があり、ひどくなってくると命に関わります。糖尿病合併症は、血糖値が高い(高血糖の)状態が続くことで起こりますので、血糖値を正常状態に戻すことが出来れば合併症は起こりません。そのため、高血糖を正常化する試みが種々なされましたが、糖尿病になってから血糖値を正常に戻すこと(糖尿病を治し、薬の力を借りずに血糖値が正常に維持されること)は極めて困難です。 一方、糖尿病になる一歩手前の状態(境界型)ではまだ正常に戻る(糖尿病にならないですむ)ことが可能であることが示されてきつつあり、そのための方法がいくつか提案されてきています。例えば、生活習慣の改善(運動療法や食事療法など)を行うことで境界型の一部は正常に戻ることが示されていますが、その効果は十分ではありません。そのため糖尿病の治療に使われている医薬品をその目的のために使えないか検討が進められ、最近一部の薬剤が使用されるようになって来ましたが、使用者の約半数に副作用が見られ、その中には重篤な副作用も見られています。しかしながら、境界型のような軽症(軽症糖尿病)の患者に副作用の心配のある医薬品を使うことが本当に良いのか疑問に感じられます。 境界型の患者を治療する目的は、糖尿病へ移行するのを防ぐというだけではなく、境界型においても糖尿病の場合と同様に動脈硬化などの大血管症が起こりますので、それを予防するためにも積極的に治療する必要があります。 糖尿病や境界型の高血糖の原因は、インシュリンを分泌するすい臓のβ細胞が何らかの原因で働きが弱くなりインシュリンの分泌量が少なくなるのと、末梢組織でのインシュリンの働きが悪くなることで、血液中のブドウ糖が組織に取り込まれにくくなり、血液中にブドウ糖が長くとどまることによるものです。従って、β細胞の働きを正常に戻し、インシュリンの働きを正常に戻すことが出来れば糖尿病や境界型の高血糖は正常化することになります。 アルギニンはこれまでの多くの研究で、すい臓からのインシュリンの分泌を促進し、インシュリンの働きを高めることが示されてきていますので、境界型の高血糖を正常化することが期待できます(場合によっては糖尿病の一部でも)。また、通常の使用において安全性の面でも特に問題となるものはありません。これらのことから、アルギニンは安全性の高い望ましい高血糖正常化成分として非常に期待されます。 本研究では、先ず境界型(IGT、耐糖能異常)の患者においてアルギニンが高血糖を正常化するかどうか検討されました。 【方法】 境界型(IGT、耐糖能異常)※1の患者(メタボリックシンドロームを併発)144人を2群にわけ、一方には生活習慣の改善を、他方には生活習慣の改善に加えアルギニン(1日6.4gを1日2回に分け)を経口摂取させました。試験はランダム化二重盲検プラセボ対照試験(医薬品やサプリメントなどの効果を調べるための最も信頼性の高い試験)で行われました。アルギニンの摂取期間は18ヶ月で、その後摂取を止めた後12ヶ月間経過観察を行いました。 ※1境界型:糖尿病型にも正常型にも属さない血糖値#を示す群のことを言います。境界型は糖尿病に準ずる状態であり、数年の内にその多くが糖尿病に移行します。また、動脈硬化や動脈硬化性疾患(心筋梗塞、脳梗塞など)による死亡を糖尿病と同様に促進します。そのため糖尿病になるのを予防するためにも、動脈硬化を防ぐためにも境界型を治療し、正常に戻すことが積極的に行われています。なお、糖尿病になってしまうといくら治療しても現在正常に戻すことは極めて困難ですので、正常に戻すことが可能な境界型のところで積極的に治療することが極めて重要になってきます。 #血糖値による糖尿病の判定基準:空腹時血糖値が110mg/dl未満で75gOGTT(75g経口ブドウ糖負荷試験)2時間後の血糖値が140mg/dl未満の場合正常型、空腹時血糖値が126mg/dl以上または75gOGTT2時間後の血糖値が200mg/dl以上の場合糖尿病型、正常型にも糖尿病型にも属さない場合は境界型と判定します。境界型にはIFG(空腹時血糖異常)とIGT(耐糖能異常)とがあります。IFGは空腹時血糖値が110~125mg/dlで75gOGTT2時間後の血糖値が140mg/dl未満の場合をいいます。IGTは空腹時血糖値が126mg/dl未満で75gOGTT2時間後の血糖値が140~199mg/dlの場合をいいます(WHOの糖尿病診断基準)。 【結果】 生活習慣の改善に加えアルギニンを1日6.4g18ヶ月間経口摂取した境界型(IGT、耐糖能異常)の患者の内、血糖値が正常の戻った人は42.4%でした。一方、生活習慣の改善のみの患者では18ヵ月後に血糖値が正常化した人は22.1%でした。このように、アルギニンは明らかに血糖値の正常化率を高め(統計的に有意に)、アルギニンを摂取しない場合に比べ約2倍正常化率が高まりました。また、その正常化率はアルギニンの摂取期間が長くなるほど高くなり、アルギニン摂取後6ヶ月で約1.5割、12ヶ月で約3割、18ヶ月で約4割の高血糖(境界型)の患者が血糖値が正常化しました。 観察期間(12ヶ月)終了後の30ヵ月後では、アルギニンを摂取していたグループの血糖値正常化率は45.5%でアルギニンを摂取しないにもかかわらず高血糖が正常化する人はさらに増えました。一方、アルギニンを摂取しなかったグループの観察期間終了後(30ヵ月後)の血糖値正常化率は20.6%で観察期間中の正常化率は減少しました。 なお、観察期間終了後(30ヵ月後)の境界型から糖尿病への移行率は、アルギニン摂取グループでは27.2%でしたが、アルギニンを摂取しないグループでは47.1%で、アルギニングループでは約半分でした。すなわち、アルギニンによって血糖値の正常化のみならず、糖尿病移行率も低下しました。 試験期間中のアルギニンの副作用はほとんど認められず、アルギニンを摂取しないグループと同様でした。 アルギニンが何故血糖値の正常化率を高めたり、糖尿病移行率を低下させるかについて検討されました。試験開始18ヵ月後において、アルギニン摂取グループ(生活習慣の改善に加えアルギニンを摂取)ではアルギニンを摂取しないグループ(生活習慣の改善のみ)に比べ(試験開始前の状態との差において)、体脂肪や腹囲がより多く減少し、OGTT後30分の血糖値がより低下し、OGTT後30分のインシュリン値がより増加し、OGTT後120分のインシュリン値がより低下しました。これらの結果に他の指標も加え判断しますと、アルギニンはβ細胞の働きを高めてインシュリンの分泌を増やし、末梢でのインシュリンの働きを高めて血糖値を正常化させるものと考えられました。また、アルギニンによって高められたインシュリンの分泌とインシュリンの働きは、アルギニンを摂取しない観察期間中も維持されていました。この結果アルギニングループでは血糖値の正常化率や糖尿病への移行阻止率が観察期間中も増え続けたものと考えられました。 このように、アルギニンは、高血糖(糖尿病や境界型の)の原因であるすい臓のβ細胞の働きの低下や末梢組織でのインシュリンの働きの低下の両方を改善し、高血糖を正常化させ、糖尿病や動脈硬化のリスクを低下させました。 【解説】 糖尿病は、患者数の異常な増加と、その合併症の悲惨さから、日本のみならず世界的にも大きな問題となっており、その治療法や予防法の開発は焦眉の急となっています(糖尿病について詳しくは上記の「糖尿病とはどういう病気でしょうか」をご覧下さい)。しかしながら、現在のところ数多くの糖尿病の薬が開発されてきているにもかかわらず血糖値を正常化し糖尿病を根本的に治す薬はまだありません。そのため、例え見かけ上血糖値が正常値近くにコントロールされていても糖尿病は進行し続けます。一方、糖尿病の前段階の境界型の場合、生活習慣の改善などによってその一部は正常まで戻りうることが最近の臨床試験等で明らかにされてきており、糖尿病にならないための対策として境界型から正常化する方法が種々検討されてきています。例えば、生活習慣の改善だけでは正常化率が不十分であるため、さらに上乗せ効果を期待してα-グルコシダーゼ阻害薬のベイスン(すでに糖尿病治療薬として使われています。武田薬品工業の製品)が境界型の患者で検討されました。その結果、生活習慣の改善に加えベイスンを投与したグループでは(平均約1年間投与)、生活習慣の改善のみの群に比べ、境界型から糖尿病への移行率が約半分に低下しました。また、血糖正常化率もベイスン群でより高率でした。しかしながら、ベイスン群では高率に副作用が生じました(鼓腸、腹部膨満、下痢などが12~17%の患者にみられました)。また、劇症肝炎などの重篤な副作用が生じる場合もあります。そのため、境界型のような軽症の場合にベイスンのような副作用の危険のある医薬品を使うということが本当に良いのか疑問に感じられます。 糖尿病や境界型の高血糖の原因は、インシュリンを分泌するすい臓のβ細胞が何らかの原因で働きが弱くなりインシュリンの分泌量が少なくなるのと、末梢組織でのインシュリンの働きが悪くなることで、血液中のブドウ糖が組織に取り込まれにくくなり、血液中にブドウ糖が長くとどまることによるものです。従って、β細胞の働きを正常に戻し、インシュリンの働きを正常に戻すことが出来れば糖尿病や境界型の高血糖は正常化することになります。 アルギニンはこれまでの多くの研究で、すい臓からのインシュリンの分泌を促進し、インシュリンの働きを高めることが示されてきていますので、境界型(場合によっては糖尿病の一部でも)の高血糖を正常化することが期待できます。また、通常の使用において安全性の面でも特に問題となるものはありません。これらのことから、アルギニンは安全性の高い望ましい高血糖正常化成分として非常に期待されます。 本文献の臨床試験は最も信頼できる方法(ランダム化二重盲検プラセボ対照試験)と多数の患者(144人)を用いて行われた信頼できるものです。 本試験は境界型(IGT、耐糖能異常)の患者の高血糖がアルギニンの摂取で正常化するかどうか検討されました。また、境界型から糖尿病への移行が抑えられるかも検討されました。その結果、アルギニンを18ヶ月間経口摂取した時、血糖値が正常の戻った人の割合はアルギニンを摂取しない場合に比べ約2倍に増加しました。また、その正常化率はアルギニンの摂取期間とともに増加しました。 アルギニンを摂取していない観察期間(12ヶ月)を含めた30ヵ月後では、アルギニングループの血糖値正常化率はアルギニンを摂取しないにもかかわらずさらに増えました。一方、アルギニンを摂取しなかったグループの観察期間終了後(30ヵ月後)の血糖値正常化率は減少しました。 境界型から糖尿病への移行率は、観察期間終了後(30ヵ月後)において、アルギニン摂取グループではアルギニンを摂取しないグループに比べ約半分でした。すなわち、アルギニンによって血糖値の正常化のみならず、糖尿病移行率も低下しました。 試験期間中のアルギニンの副作用はほとんど認められず、アルギニンを摂取しないグループと同様でした。 アルギニンが何故血糖値の正常化率を高めたり、糖尿病移行率を低下させるかについて検討された結果、アルギニンはβ細胞の働きを高めてインシュリンの分泌を増やし、末梢でのインシュリンの働きを高めて血糖値を正常化させるものと考えられました。また、アルギニンによって高められたインシュリンの分泌とインシュリンの働きが、アルギニンを摂取しない観察期間中も維持されていたことにより、血糖値の正常化率や糖尿病への移行阻止率が観察期間中も増え続けたものと考えられました。 このように、アルギニンは高血糖の根本原因であるβ細胞の働きの低下によるインシュリン分泌の低下と、インシュリンの働きの低下の両方を改善することにより高血糖を改善し正常化する望ましい成分と考えられます。加えて、安全性面での心配もほとんどないことから、境界型のような軽症の場合も安心して使用できるものと考えられます。 つまり、アルギニンは現時点では、医薬品(糖尿病治療薬)も含め、境界型の治療に最も望ましい成分と考えられます。 なお、実際に摂取するに際して、アルギニンには種々の重大な問題点があるため(特に長期摂取に際して)、このような問題点を克服した製品(例えば『進化型スーパーアルギニンサプリメント』)ではさらに高い効果が期待されます。 アルギニンが糖尿病の高血糖も正常化するかどうかについては、多数の患者で長期間(数年以上)摂取させる試験で検討する必要がありますが、可能性はあると思われます。 なお、アルギニンは動脈硬化を直接防ぐ働きがありますので(詳しくは「アルギニンは動脈硬化および心血管病を予防・改善します!」を参照下さい)、高血糖による動脈硬化の防止については、血糖の正常化と直接効果の両面から効果が期待できます。 ≪アルギニンが2型糖尿病を改善する文献例≫ ●アルギニンはインシュリンの分泌を促進します アルギニンがインシュリンの分泌を促進することは教科書にも載っているほど良く知られています(生化学辞典(東京化学同人)など)。アルギニンのインシュリン分泌促進作用は人において注射および経口投与の両方においてみられました(O. Eremin, ed. L-Arginine: Biological aspects and clinical application. Chapman & Hall 1997: 1-25)。 2型糖尿病患者では、食事やブドウ糖摂取後のインシュリン分泌は、正常な人に比べると低下していることが知られていますが、アルギニンによるインシュリン分泌促進作用は2型糖尿病患者と正常な人のあいだでほとんど差がないと報告されています(Metabolism, 1994; 43: 385-389)。 ●アルギニンはインシュリンの効きめ(インシュリン感受性)を高め、血糖値を下げます Piattiらは、2型糖尿病患者にアルギニンを経口投与すると、肝臓および組織のインシュリン感受性(インシュリンの効きめ)が改善(インシュリン抵抗性の改善)され、血糖値が下がることを示しました(Diabetes Care, 2001; 24:875-880)。 2型糖尿病患者(12人)を2群に分け、一方には食事療法に加えアルギニン(3gを1日3回)を1ヶ月間経口投与しました。他方(対照群)にはアルギニンの代わりにプラセボを投与しました。その結果、アルギニン投与群では血糖値は126mg/dlから115mg/dlへ(9%)低下しました。また、組織での糖の利用率は34%増加し、体内でのブドウ糖の産生(糖新生)が29%減少しました。加えて、血液循環系にも改善が見られ、前腕血流は36%増加し、収縮期の血圧は14%低下しました。一方、対照群ではこれらに変化はみられませんでした。 アルギニンのインシュリン感受性改善作用は静脈内投与でも認められました(Eur. J. Clin. Invest., 1997; 27: 690-695)。 ●アルギニンは2型糖尿病患者の血糖値を下げ糖尿病を改善しました Dasらは、2型糖尿病患者にアルギニンを経口投与すると糖尿病が改善することを示しました(Med. Sci. Res., 1993; 21: 669-670)。 経口血糖低下剤、インシュリンまたは食事療法(1名)で治療中の2型糖尿病患者8名に、これらによる治療を継続しながら、アルギニンを10日間経口的に投与しました。その結果、血糖低下剤による治療を受けているにもかかわらず、アルギニンの投与によって、空腹時血糖値はさらに23%(平均129mg/dlから100mg/dlへ)、食後血糖値はさらに16%(182mg/dlから152mg/dlへ)低下しました。 アルギニンの血糖低下作用を個別に見てみますと、血糖値が高い患者ほど血糖値の低下の程度は大きいことが分かりました。例えばアルギニン摂取によって空腹時血糖値(mg/dl)は233(アルギニン摂取前、以下同様)→147(アルギニン摂取後、以下同様)、148→99、135→97、133→100、118→105、111→91へ低下しました。一方、血糖値が良くコントロールされている患者では血糖値の大きな低下(低血糖)は見られませんでした(空腹時血糖値(mg/dl)の変化92(アルギニン摂取前、以下同様)→79(アルギニン摂取後、以下同様)、63→79)。 血中インシュリン値はアルギニン投与によって空腹時180%、食後153%増加しました。 腎症の指標である蛋白尿とクレアチニンクリアランスはアルギニンの投与によって改善傾向が見られました。 ●アルギニンは肥満した2型糖尿病患者の血糖値、肥満、血圧および合併症の原因を改善しました
Lucottiらは、アルギニンが肥満2型糖尿病患者の血糖値、肥満および血管合併症の原因を改善することを示しました( Am J Physiol Endocrinol Metab, Nov 2006; 291: E906 - E912)。
Lucottiらは、肥満した2型糖尿病患者(インシュリン感受性が低下した)にアルギニンを長期に摂取させて血糖値、体脂肪、インシュリン感受性、血管内皮機能※1などにどういう効果があるかを検討しました。 2型糖尿病患者(33人)を21日間の低カロリー食(1日1,000kcal)と運動療法(1日1時間半の運動を週に5日)の試験に参加させました。これらの患者は2つのグループに分けられ、一方には1日8.3gのアルギニンを摂取させました(16人:女性12人、男性4人)(アルギニングループ)。また、他方にはプラセボ(アルギニンが入ってない偽薬)を摂取させました(17人:女性13人、男性4人)(プラセボグループ)。試験は二重盲検法※2で行いました。試験期間中これらの患者には副作用はありませんでした。 その結果(表参照)、低カロリー食と運動療法(プラセボグループ)によって体重、ウェスト周囲径、血糖値、フルクトサミン値(検査前1~3週間の血糖コントロール状態を示します)、インシュリン値などは明らかに(統計的に有意に)低下しました(すなわち、低カロリー食と運動療法によって、体重や腹部脂肪が減少し、インシュリン感受性が高まり、血糖値が低下して糖尿病と肥満が改善しました)。 一方、低カロリー食と運動療法に加え、アルギニンを1日8.3g毎日摂取させると(アルギニングループ)、低カロリー食と運動療法の場合よりもさらに大きく(統計的に有意に)体脂肪、ウェスト周囲径、血糖値、フルクトサミン値は減少しました(血糖値はほぼ正常まで改善しました)。また、インシュリン値はさらに減少し(統計的に有意に)、インシュリン感受性はさらに高くなりました。さらに、アルギニングループでは血管内皮機能※1が改善され血管合併症の危険が低下しました。 加えて、アルギニングループでは血圧(収縮期と拡張期)が正常値まで低下しました(統計的に有意に)が、プラセボグループでは変化はありませんでした。 アルギニングループではアディポネクチン※3が増加しました(統計的に有意に)が、プラセボグループでは変化はありませんでした。 アルギニンのこれらの働きは主に、アルギニンから生成する一酸化窒素(NO)によるものと考えられました。 このように、アルギニンは、肥満した2型糖尿病患者(低カロリー食と運動療法で治療中の)で体脂肪(および腹部脂肪)をさらに減少させて肥満を改善し、血糖値をより低下させて(ほぼ正常まで低下させて)糖尿病を改善しました。さらに血管の内皮機能を改善して血管合併症の危険を低下させました。また、血圧も正常値まで低下させ動脈硬化の危険もさらに低下させました。 ※1 血管内皮機能:糖尿病では高血糖によって血管の内皮機能が障害されることが血管合併症(神経症、網膜症、腎症、動脈硬化、心筋梗塞、脳梗塞、壊疽、EDなど)の大きな原因になると考えられています。そのため、内皮機能が改善されると血管合併症の危険が低下します ※2 二重盲検法:医薬品やある成分の効果を正しく判定するための統計的手法です。医薬品やある成分をプラセボ(効果が無い偽薬)と同時に投与してその効果を判定します。医薬品やある成分の効果が、プラセボの効果よりも統計的に明らかに(有意に)高ければ医薬品やある成分は正しく効果があるということになります。 ※3 アディポネクチン:アディポネクチンは脂肪細胞から分泌されるホルモン(善玉ホルモン)で、筋肉や肝臓の細胞が脂肪を燃焼するのを助け、肥満、糖尿病、動脈硬化などを防ぎ、メタボリックシンドロームを抑える働きがあるといわれています。ところが肥満、特に腹部肥満の人でアディポネクチンが減少し、これが肥満(腹部肥満)によるメタボリックシンドロームの大きな原因の一つであることが示されてきています。そのためこれを増やすことで肥満やメタボリックシンドロームの改善が期待できます。(参考文献:Adiponectin and adiponectin receptors in insulin resistance, diabetes, and the metabolic syndrome. Takashi Kadowaki, Toshimasa Yamauchi, Naoto Kubota, Kazuo Hara, Kohjiro Ueki, and Kazuyuki Tobe,J. Clin. Invest., Jul 2006; 116: 1784 - 1792など) 表:肥満2型糖尿病患者に対する低カロリー食と運動療法の効果、およびそれに対するアルギニンの増強効果
(解説)
糖尿病は、糖尿病になりやすい体質の人〔膵臓の働きが元来(遺伝的に)弱くてインシュリンを十分に出すことができない人。日本人の多くはこのタイプです〕が、食べ過ぎと運動不足により体重過多(肥満)になることでインシュリンの働き(インシュリン感受性)が悪くなり発病します。すなわち、日本人の多くが肥満によって糖尿病になる危険があります。 この理由から、糖尿病の治療は先ず、低カロリー食と運動療法によって肥満を改善することから始めます〔糖尿病になりたての人は痩せると多くの場合血糖値が低下し糖尿病が改善したり正常化します。薬(血糖低下剤)は最初からは処方しません。低カロリー食と運動療法を指導しないで血糖低下剤をすぐ出すのは間違っています〕。低カロリー食と運動療法をしっかりやって痩せれば多くの人は血糖値は正常になります。しかし、また油断して肥ると(遺伝的に糖尿病のリスクを持っていますので)血糖値は上がって糖尿病に逆戻りです。これを繰り返していると低カロリー食と運動療法をやっても血糖値は元に戻らなくなって糖尿病が一生続くことになり(膵臓に負担をかけることで膵臓が弱っていくためインシュリンの出が徐々に悪くなっていくためです)、そのうち合併症が出てきて悲惨な結果となります。こうならないためには、糖尿病(望ましくは糖尿病予備軍)と診断された最初の段階から、規則的な生活と厳密な低カロリー食と運動療法を一生続ける覚悟が必要です。 アルギニンは、インシュリンの出を良くして、インシュリンの感受性を高めて血糖値を低下させ糖尿病を改善します。また、合併症を予防し改善します。 本文献は、低カロリー食と運動療法で治療している場合でも、アルギニンを摂取することでさらに体脂肪や腹部脂肪を減らして肥満を改善し、血糖値をより低下させて(血糖値をほぼ正常まで改善して)、糖尿病を改善することを示しています。さらに血管の内皮機能を改善し、血圧をさらに低下(正常値まで)させることで合併症(動脈硬化を含む)の危険をさらに低下させることを示しました。 このように、アルギニンは糖尿病の軽症から重症(合併症を併発している場合)まで広く改善できることが明らかになりました。また、アルギニンは血糖値の改善だけでなく、肥満(腹部肥満)、高血圧、合併症の改善まで一つでできる初の成分と考えられます。 特に、アルギニンは生体成分(体に必要なアミノ酸)であり、安全性が高く副作用の心配がほとんどないため安心して摂取できることから、糖尿病の初期段階から食事療法や運動療法をより強化するため、また、中等症から重症(合併症)まで医薬品をサポートするため、糖尿病の方あるいは糖尿病が心配な方に是非お勧めしたいサプリメントです。 ●アルギニンは肥満ラットの血糖値、および体重と体脂肪を減少させました Fuらは、アルギニンが肥満ラットの血糖値、および体重と体脂肪を減少させることを示しました(J. Nutr. 2005; 135: 714-721)。 肥満ラット(Zucker diabetic fatty rat※)に10週間アルギニンを水に溶かして飲ませました。ラットの体重は、アルギニンを飲ませ続けたとき、4、7、10週目に、アルギニンを飲ませなかった場合に比べ、それぞれ6、10、16%減少しました。アルギニン摂取によって腹部脂肪重量は45%減少し、血液中のブドウ糖および中性脂肪はそれぞれ25%および23%低下しました。アルギニンの摂取によって、脂肪組織の脂肪分解が22~24%増加しました。 ※Zucker diabetic fatty rat:遺伝的に食欲を抑制するホルモン(レプチン)の働きが悪く、過食(食べ過ぎ)によって肥満し2型糖尿病にもなります。ヒトの肥満、肥満2型糖尿病、メタボリックシンドロームなどのモデルとして使われ、医薬品やサプリメントなどが肥満、肥満2型糖尿病、メタボリックシンドロームなどに効果があるかどうかの試験などに使われます。 (解説)
アルギニンは、成長ホルモンの分泌促進や一酸化窒素(NO)などの働きを介して、脂肪の分解、筋肉の増加、代謝の促進などにより、体脂肪や体重を減少させ、望ましいプロポーションをつくることが期待されています。そのため、アルギニンはダイエット時における強力なサポート役として期待されます。本文献は、肥満ラットで、アルギニンは、脂肪組織での脂肪の分解促進などの働きによって体脂肪や体重を大幅に減らすことを示しました。このことは、アルギニンが人においても体脂肪や体重を減らすことが期待できることを示しています。アルギニンは、さらに、血糖値や血中の中性脂肪も減少させたことから、糖尿病(高血糖)や高脂血症も改善することが期待されます。
≪アルギニンがGLP-1の分泌促進を介して血糖値を低下させる文献例≫ ●アルギニンは、血糖低下ホルモンであるGLP-1の分泌を促進することで、血糖値の上昇に応じてインシュリンの分泌を促進し、血糖値を低下させることが明らかにされました Clemmensenらは、アルギニンが、最新の糖尿病治療薬であるDPP-4阻害剤と同様に、GLP-1を増やして血糖値を下げることを明らかにしました。 (Clemmensen C, Smajilovic S, Smith EP, Woods SC, Bräuner-Osborne H, Seeley RJ, D'Alessio DA, Ryan KK. Oral L-arginine Stimulates GLP-1 Secretion to Improve Glucose Tolerance in Male Mice. Endocrinology. 2013 Nov; 154(11): 3978-83.)。 アルギニンは糖尿病患者の血糖値を下げ糖尿病を改善することが知られていましたが(上記文献を参照下さい)、どうしてそのような働きをするかのメカニズムは明らかではありませんでした。 Clemmensenらは、アルギニン(経口投与)は血糖低下ホルモンであるGLP-1を増やすことで血糖値を低下させることを明らかにしました。 最新の糖尿病治療薬であるDPP-4阻害剤は、GLP-1を分解する酵素DPP-4を阻害することでGLP-1を増やし血糖値を低下させますので、アルギニンとDPP-4阻害剤は結果的にGLP-1を増やすという同じメカニズムで血糖値を低下させ糖尿病を改善することになります。 Clemmensenらは、2型糖尿病モデルマウス(雄)(C57BL/6)を用いて試験を行いました。C57BL/6は高脂肪食を食べさせると肥満、高血糖、高インシュリン血症を引き起こし、ブドウ糖を負荷すると耐糖能異常(耐糖能異常とは、ブドウ糖(グルコース)に対して生体が示す代謝能力が障害を受けている状態です。糖尿病は耐糖能異常が引き起こす代表的な疾患です)を示すため、ヒトの2型糖尿病のモデルとして広く使われています。 通常食を食べさせて肥満していないマウスと、高脂肪食を食べさせて肥満したマウスを用いてアルギニンの効果を検討しました。 マウスには生理食塩水またはアルギニン(1g/kg体重)を経口投与し、その後ブドウ糖負荷試験を行いました。その結果、肥満していないマウスおよび肥満マウスともに血糖値は改善され(耐糖能異常の改善)、血糖値は生理食塩水を投与された場合に比べ両マウスともアルギニン投与によって約30%低下しました(肥満していないマウスでブドウ糖負荷後15分での低下率。肥満マウスでブドウ糖負荷後60分での低下率)。 次に、アルギニンが血糖低下ホルモンであるGLP-1にどういう影響があるか検討されました。その結果、肥満していないマウスにおいて、アルギニンの投与はGLP-1の血中濃度を明らかに増加させました(アルギニン投与後15分で2.3倍の増加)。また、肥満したマウスでも同様に明らかに増加しました(アルギニン投与後15分で2.8倍の増加。生理食塩水の投与ではほとんど増加せず)。アルギニン投与後のGLP-1の量はブドウ糖負荷によってさらに増加しました(ブドウ糖負荷後15分で5倍の増加)。 次にインシュリンの分泌量に対するアルギニンの効果について検討されました。肥満したマウスにおいて、血中インシュリンはアルギニンの投与によって明らかに増加しました(アルギニン投与後15分で1.8倍の増加)。インシュリン量はブドウ糖の負荷によってさらに増加しました(ブドウ糖負荷後15分で2.3倍の増加)。 アルギニンによるインシュリン増加作用と血糖低下作用がGLP-1を介するかどうかの検討がGLP-1のレセプター(受容体)を持たないマウス(Glp1r KOマウス)を用いて検討されました(GLP-1の作用はそのレセプターを介して行われますので、そのレセプターを持たないマウスではGLP-1の作用は生じないことになります)。その結果、Glp1r KOマウスでは、アルギニンの投与によって血中インスリンに影響しないことが明らかになりました。また、Glp1r KOマウスにおいて、ブドウ糖負荷後の血糖上昇に対しアルギニンは影響しないことが示されました。これらのことは、アルギニン(経口投与)のインシュリン増加作用と血糖低下作用はGLP-1のレセプターを介して行われていることを示しています。つまり、アルギニン(経口投与)は、GLP-1を増加させてインシュリン分泌を増加させ、血糖値を改善することが明らかとなりました。 以上の結果から、アルギニン(経口投与)は、DPP-4阻害剤と同様に、体内のGLP-1を増やして血糖低下作用を示す、新しい糖尿病治療薬として期待されます。さらに、アルギニンは、糖尿病合併症にも効果を示す可能性があるために(「2-2.アルギニンは糖尿病合併症を予防・改善します!」を参照下さい)、またDPP-4阻害剤よりもより安全と考えられるために、DPP-4阻害剤より優れた糖尿病治療薬になる可能性があります。 【解説】 糖尿病とは、すい臓からのインシュリンの分泌が悪くなったり、末梢組織(筋肉、脂肪組織、肝臓など)でのインシュリンの働きが悪くなったりして、血糖値が高くなる病気です〔インシュリンは、すい臓のベータ細胞(β細胞)というところから分泌される、糖分(ブドウ糖)を体に取り込ませて利用させるために働くホルモンです〕。 そのため、(2型)糖尿病の治療薬としては、インシュリンの分泌を促進して血糖値を低下させるものと、末梢組織でのインシュリンの働きを高めて血糖値を低下させるもの、糖の吸収を抑えて血糖値を下げるものなどがあります。しかしながらこれまでのインシュリン分泌促進剤は、インシュリンの分泌を高めるとそれとともに重篤な副作用である低血糖が生じるという重大な問題がありました。それを解決するものとして注目されたのが血糖低下ホルモンであるインクレチンです。 インクレチンは、食事摂取に反応して消化管の上皮細胞から分泌されるペプチドホルモンであり、血糖値に依存してインシュリン分泌を増強させ、肝臓や末梢の筋肉、脂肪組織への糖の取り込みを促進させます。代表的なインクレチンホルモンとしてGLP-1(グルカゴン様ペプチド1)およびGIP(Glucose-dependent insulinotorpic polypeptide)が知られており、これらのホルモンは血糖値に依存してインシュリンの生合成および分泌を促進することが知られています。これらの働きのためにインクレチンは低血糖を起こしにくい血糖低下ホルモンとして非常に注目されました。実際、糖尿病患者を対象とした臨床試験で、GLP-1を静脈内持続投与した結果、インシュリンの分泌量が増加し、血中グルコース濃度が低下するとともに、血糖コントロールの指標であるHbA1cが低下することが明らかになりました。しかしながら、GLP-1およびGIPはともにDPP-4という酵素によって迅速に代謝され不活化されます。このDPP-4を阻害することによりインクレチンホルモンであるGLP-1およびGIPの不活化を阻害し、その生物活性を持続させるために開発されたのがDPP-4阻害剤です(Physiol. Rev., 87: 1409-1439, 2007)。 では、DPP-4を阻害したときに、DPP-4を阻害していないときに比べ活性GLP-1の濃度はどれ位増加するのでしょうか。またその時にインシュリンの増加量や血糖低下の程度はどのくらいでしょうか。これは、DPP-4を持たないマウス、あるいはDPP-4阻害剤を用いて検討されました(PNAS, 97: 6874-6879, 2000)。 DPP-4を持たないマウス(C57BL/6 CD26-/-マウス)では、DPP-4を持っているマウス(C57BL/6 wild-typeマウス)に比べ、ブドウ糖負荷後の血糖値が明らかに低下しました(ブドウ糖負荷後30分での低下率27%)。この時インシュリンとGLP-1に対する影響も検討されました。その結果インシュリン並びにGLP-1は、DPP-4を持っているマウスに比べ、DPP-4を持たないマウスにおいて増加しました(ブドウ糖負荷後15分におけるインシュリンの増加率1.8倍、GLP-1の増加率2.5倍)。 次にDPP-4阻害剤の効果が検討されました。DPP-4を持っているマウス(C57BL/6 wild-typeマウス)にDPP-4阻害剤(valine-pyrrolidide)が投与された後ブドウ糖が負荷されました。その結果、ブドウ糖負荷後30分の血糖値はDPP-4阻害剤を投与されないマウスに比べ、投与されたマウスでは32%低下しました。 以上の結果から、マウスを用いての実験からは、アルギニンとDPP-4阻害剤の血糖降下作用はほぼ同等と考えられました。 では、DPP-4阻害剤の糖尿病患者における臨床効果はどうでしょうか。DPP-4阻害剤として最初に市販されたシタグリプチン(日本での商品名ジャヌビア(MSD)、グラクティブ(小野薬品))の臨床試験結果が報告されています(Int. J.Clin.Pract., 65: 397-407, 2011)。それによりますと、シタグリプチン(100mg/日)を2型糖尿病患者に52週間にわたって経口投与した結果、投与4週間後の空腹時血糖値の低下率は、投与前に比べ11%でした。また、投与52週間後の空腹時血糖値の低下率は投与前に比べ約5%でした。 現在日本では、DPP-4阻害剤として、シタグリプチン(日本での商品名ジャヌビア(MSD)、グラクティブ(小野薬品))、ビルダグリプチン(日本での商品名エクア(ノバルティスファーマ))、アログリプチン(日本での商品名ネシーナ(武田薬品工業))、リナグリプチン(日本での商品名トラゼンタ(日本ベーリンガーインゲルハイム))、テネリグリプチン(日本での商品名テネリア(田辺三菱製薬))、アナグリプチン(日本での商品名スイニー(三和化学研究所))、オキサグリプチン(日本での商品名オングリザ(協和発酵キリン))などが市販されていますが、その血糖低下作用については薬剤間の差はほとんどないものと考えられます(各薬剤の添付文書を参照下さい)。副作用については、これらの薬剤は全て化学合成によって作られているために、体にとっては異物であり、当然ながら重篤なものも含めて副作用は避けることはできませんので、安心して使うことはできず十分注意して使用する必要があります(副作用についても各薬剤の添付文書を参照下さい)。 一方、アルギニンの臨床効果はどうでしょうか。境界型(IGT、耐糖能異常)の患者(メタボリックシンドロームを併発)に18ヶ月間経口投与し、アルギニンが高血糖(糖尿病や境界型の)の原因であるすい臓のベータ細胞の働きの低下や末梢組織でのインシュリンの働きの低下の両方を改善し、高血糖を正常化させ、糖尿病のリスクを低下させるという試験はありますが(試験期間中のアルギニンの副作用はほとんど認められませんでしたので、アルギニンは非常に安全性が高く長期間安心して摂取できる成分と言えます)、ほとんどの臨床試験の投与期間は1ヶ月程度です。いくつかの文献によりますと、2型糖尿病の患者に10~21日間アルギニンを経口投与したところ、空腹時血糖値は23~35%低下し、血糖値はほぼ正常化しました(上記文献を参照下さい)。 以上の結果から、アルギニンがDPP-4阻害剤より、血糖低下作用においてより優れているということは断定できませんが、少なくともアルギニンの効果はDPP-4阻害剤と同等以上である可能性があります。また、アルギニンには、DPP-4阻害剤が持っていない、糖尿病合併症を直接予防・改善する効果(「2-2.アルギニンは糖尿病合併症を予防・改善します!」を参照下さい)や、肥満を改善する効果(「絶対やせる!ダイエットの決め手はこれだ!(ダイエットの革命『アルギニンダイエット』について」を参照下さい)などがありますので、より望ましい糖尿病治療薬になる可能性があります。さらに特に重要なのは、アルギニンが生体成分で高い安全性を持っているという点において、化学合成され副作用の心配があるDPP-4阻害剤と決定的に違う点です。 ◆◆図.アルギニンは糖尿病・糖尿病合併症を予防・改善します◆◆ ●アルギニンは、GLP-1(血糖低下ホルモン)の分泌を促進することで、血糖値の上昇に応じて膵臓からのインシュリンの分泌を増やします。また、インシュリンの働きを高めます。アルギニンは、これらの両作用の働きで血糖値を低下させ糖尿病を改善します(糖尿病改善作用として非常に望ましい作用。新規メカニズム))。 ●アルギニンは、脂肪の燃焼を促進して肥満を予防したり、改善します。アルギニンは、抗酸化作用、糖化抑制作用、免疫増強作用、成長ホルモン作用、一酸化窒素作用などにより、老化を予防したり、改善します。アルギニンは、これらの働きで糖尿病を予防します。 ●アルギニンは、糖化抑制作用、抗酸化作用、一酸化窒素作用などにより糖尿病合併症を予防したり、改善します。 ●アルギニンは、1つの成分で、糖尿病改善作用と合併症予防・改善作用を併せ持つ、糖尿病治療成分として非常に望ましい作用を有しています。加えてアルギニンは生体成分(アミノ酸)のため、安全性の心配はほとんどありません。 |
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1)本当に怖い糖尿病合併症!! |
1.糖尿病合併症とは ●糖尿病合併症とは、血糖値が高い(高血糖の)状態(糖尿病状態)が続くことでおこる特徴的な合併症をいいます。 ●糖尿病合併症は急性と慢性にわけられますが、近年の治療法の進歩により、問題となるのはほとんど慢性合併症にかぎられます。 糖尿病慢性合併症は大きく血管障害合併症とその他の合併症にわけられます。 血管障害合併症は、高血糖(血糖値が高い状態)で血管が障害されて生じる合併症ですが、それはさらに細小血管症と大血管症にわけられます。 細小血管症は細い血管が糖尿病(高血糖)でボロボロになり、血管が狭くなったり詰まったりして、組織や臓器に血液が十分行かなくなって酸素不足や栄養不足になり、組織に障害がおこるものをいいます。細小血管症は糖尿病に特徴的な合併症ですが、その代表例として腎症、網膜症、神経症があり、これらを糖尿病の三大合併症といいます。 大血管症は、動脈が動脈硬化になり、それが原因でおこる合併症で、糖尿病だけにおこるものではありませんが、糖尿病によって起こる危険性が大きく増大します(糖尿病では通常の動脈硬化の6倍のスピードで動脈硬化が進むといわれています。つまり糖尿病の人は通常の動脈硬化の人より6倍も早く心筋梗塞や脳梗塞になり易いともいえます)。また、通常の動脈硬化(高血圧や高脂血症や老化によって起こる動脈硬化)が特定の太い動脈しか動脈硬化にならないのに対し、糖尿病による動脈硬化は細いものから太いものまで全身の動脈が動脈硬化になり、それだけ悪性度が高くなります。大血管症として動脈硬化症、脳血管障害(脳出血、脳梗塞など)、虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞など)、末梢循環障害(閉塞性動脈硬化症、壊疽など)などがあげられますが、糖尿病患者ではこれらの病気になる確率が高く悪化するのも早いといわれています(つまり、心筋梗塞や脳梗塞や壊疽になりやすい)。 その他の合併症として重要なものに、高脂血症、高血圧症、慢性感染症、皮膚疾患、肝機能障害、胆石症、白内障、消化器障害(胃アトニー、下痢、便秘など)、ED(勃起不全)、骨減少症(骨粗鬆症)などがありますが、極めて多岐にわたっており、これらは特に糖尿病患者の生活の質(QOL)に影響するという点で重要となっています。これらの中には高血圧症、消化器障害、ED(勃起不全)などのように血管障害合併症により二次的に生じるものもあります。 最近の研究では、糖尿病患者に認知症(脳血管性認知症およびアルツハイマー病)が多いことが明らかにされてきました。また、糖尿病患者では脳の働き(認識機能、記憶力など)が低下することが示されています。 三大合併症の腎症、網膜症、神経症についてもう少し詳しく述べます。 糖尿病性腎症は、高血糖によって腎臓の機能が損なわれて生じたものです。腎臓は、体の中にできた血液中の老廃物や余分なものを尿として排泄したり、体の中の成分を一定に保つ働きをしています。尿は血液をろ過し、濃縮してつくられますが、このろ過を最初におこなうのが糸球体です。糸球体は非常に細い毛細血管が糸玉のようになったものですが、高血糖状態が長く続くとそれが肥厚し硬くなってきて、その働きが悪くなってきます。これが糖尿病性腎症です。腎症は最初はほとんど症状はみられませんが、しだいに尿にタンパク(アルブミン)が漏れ出てくるようになり(ミクロアルブミン尿といいます)、その量もだんだん増えてきて、タンパク尿がいつもみられるようになってきます(持続性タンパク尿といいます)。その頃になると糸球体での尿のろ過量が低下してきます。また、高血圧になり腎症が悪化する速度が速くなってきます。ここまでくると数年で腎不全になり、尿が出にくくなって浮腫や尿毒症になります。このようになると腎透析が行われるようになります(腎透析の原因の第一位は糖尿病性腎症です)。この時期には重篤な心血管病(心筋梗塞、脳血管障害、末梢循環障害など)を併発していることが多く、透析を始めてから4~5年でほぼ半分の人が亡くなるといわれています。 糖尿病性網膜症は、高血糖によって網膜が損なわれついには失明に至る疾患です。成人の失明の最大原因が糖尿病性網膜症です。糖尿病による高血糖状態が続くと、網膜にある毛細血管に変化がおこって、毛細血管瘤(りゅう)というこぶができたり、血液成分がしみだしたり、毛細血管が詰まったり(閉塞)して、網膜に酸素や栄養が行きにくくなります。これを単純網膜症といいます。さらに悪化すると、毛細血管の閉塞がひどくなり網膜への血流が途絶えるようになり、網膜は酸素不足、栄養不足の状態になり、これを補うために新しい血管(新生血管といいます)が応急的につぎつぎつくられてきます(これを増殖網膜症といいます)。この新生血管は急作りのため破れやすく、ちょっとしたきっかけ(急な血圧上昇など)によって破れて出血し網膜が障害を受け、網膜剥離などが起こり、最終的に失明にいたります。 糖尿病性神経症は、高血糖によって神経が障害をうけて生じます。高血糖によって、神経に栄養や酸素を運んでいる細い血管がボロボロになり、狭くなったり、詰まったりして神経が酸素不足や栄養不足になり、神経が障害をうけて生じると考えられています。合併症の中ではもっともよくみられる病気で、全身的にさまざまな症状が現れます。感覚神経、運動神経や自律神経が障害をうけます。感覚神経と運動神経の障害によって、手足のしびれや刺すような痛み、冷感などの感覚異常やこむら返りなどを生じます。症状がすすみ感覚がなくなると足にけがや火傷をしてもわからなくなります。自律神経の障害によって、起立性低血圧(立ちくらみがおこります)、発汗異常、胃アトニー(胃の運動が障害をうけ、食物が胃から腸に行きにくくなりもたれた状態になります)、便秘、下痢、神経因性膀胱(尿がたまっても尿意が感じられなくなったりします)、ED(勃起不全)などが起こります。 2.糖尿病合併症の原因 慢性合併症が起こる主な原因は、ブドウ糖などの糖がタンパク質、脂質、遺伝子などと結合して生成する糖化物(終末糖化産物、AGE)と考えられています。ブドウ糖の一部はアルデヒド型の悪玉糖*として存在しています。この悪玉糖がタンパク質、脂質、遺伝子などに結合して糖化(グリケーション)という現象を引き起こします。糖化によって生成した物質を糖化物(終末糖化産物、AGE)といいます。タンパク質、脂質、遺伝子などの糖化によって、タンパク質、脂質、遺伝子などの働きは異常を起こし、また、糖化物は活性酸素を発生させたり、体に異常を起こす物質を生成させたりして、私たちの体をボロボロにし、合併症を引き起こします。この糖化が目に起ると網膜症や白内障に、神経に起ると神経症に、腎臓に起ると腎症に、血管に起ると動脈硬化症になり、動脈硬化が進むと心筋梗塞や脳梗塞や壊疽などになります。 *:『悪玉糖』という名称は、ブドウ糖のような糖(還元糖)の一部として存在している、糖化(グリケーション)を引き起こす糖(主にアルデヒド型の糖)について、本ホームページ責任者古賀によって名付けられたものです。 3.合併症の発病時期と死因 糖尿病を発病してから数年で合併症が出始めます。通常一番早く出てくるのは神経症で、糖尿病になってから数年で手足が冷たく感じたり、しびれたりする感じがします。そして次第にひどくなってきて感覚の麻痺が起こり、最後にはけがをしても火傷をしても痛みを感じなくなり、そこに細菌が感染して潰瘍になります。次に糖尿病になってから10年ほど経つと網膜症になりひどくなると目が見えなくなります。15年後くらいには腎障害がおこってひどくなると腎臓が働かなくなって(腎不全)腎透析を受けなければならなくなります。 動脈硬化は一般の人でもなりますが、糖尿病(境界型も含む)では特に早く進行します。しかし、動脈硬化が軽いうちは症状としては現れてきませんのでほとんど気づくことはありません。気づくのは動脈硬化が相当進んで虚血性疾患〔狭心症、心筋梗塞、脳梗塞、閉塞性動脈硬化症(足の血管が動脈硬化で狭くなったり詰まったりして足に血液がいきにくくなり、歩くと筋肉が痛くなったりひどくなると壊疽になり足を切断しなければならなくなります)など〕になったときです。このように、動脈硬化症は深く静かに進行し、気づいたときは死んだ後だったということにもなりかねない大変怖い合併症といえます(そのため「サイレントキラー」と呼ばれています)。 (注:最近は血管年齢、つまり動脈硬化の進行度を測ることができますので心配な方は病院で測定してください。望ましい血管年齢は年相応ではなくて20~30代です)。 糖尿病患者の主な死因は心筋梗塞、脳梗塞、腎症などの合併症によるものですが、この頃にはすでに多くの人は他の末期の合併症(失明、潰瘍・壊疽など)にもなっています。また、糖尿病患者の平均寿命は67~68歳で、日本人の平均寿命の81歳よりかなり短命です。 4.糖尿病合併症の予防と治療 糖尿病合併症は一旦発病すると現在の治療法では治すことはできません。そして最後は大変悲惨な結果(腎不全、失明、心筋梗塞、脳梗塞、壊疽による足切断など)になります。そのため、予防が大変重要になってきます。 合併症の現在最も効果的な予防法は血糖値を正常値近くまで厳密にコントロールする方法ですが、現在の血糖低下剤による一般的な治療ではこれを達成することは極めて困難です。また、糖尿病そのものを治さない限り血糖のコントロールのみによって合併症の発病や進行を十分に防ぐことはできません。そのため、糖尿病治療剤(血糖低下剤)で治療しているのもかかわらず、合併症を発病したり症状がどんどん進行していくことになります。 なお、血糖低下剤で治療していても、空腹時血糖値が126mg/dl以上であると、合併症はどんどん進行していきますので、糖尿病発病後数年経つといつ合併症が出てもおかしくありませんし、一旦合併症が出るとどんどん悪化していきます。また、血糖値が境界領域(空腹時血糖値が110~125mg/dl)であっても動脈硬化症は進んでいきます。つまり、糖尿病が治って正常(空腹時血糖値が110mg/dl未満、かつ75g経口糖負荷試験2時間値140mg/dl未満)にならない限り合併症の危険は続きますし、合併症は進行し悪化していきます。。 5.糖尿病合併症の最新予防および治療法 現在、糖尿病合併症を、その原因に基づいて直接、そして強力に抑えることができる医薬品はほとんどありませんが、現在、合併症の主な原因と考えられている糖化〔終末糖化産物(AGE)の生成〕を抑える薬剤(アミノグアニジンなど)がその切り札として米国を中心として開発が進められています。糖化を抑える物質(アミノグアニジン)が実際動物試験や臨床試験で糖尿病合併症(腎症、網膜症、神経症、動脈硬化など)を抑えたり改善したりしましたが、アミノグアニジンは合成化学物質のため副作用が強く現在開発が中止されています。現在、他の物質が開発中ですがまだ開発の初期段階です。そのため、医薬品として患者さんが使用できるようになるのはまだまだ先のことです(10年以上先!?)。 一方、私たちの体にはこの糖化を抑え、合併症を防ぐ成分がもともとあります。それが生体成分の『アルギニン』です。ところが、糖尿病では『アルギニン』の量や働きが低下していることが知られていますので、これが合併症を引き起こす原因になったり、合併症を悪化させたり進行をさらに促進している可能性があります。実際、アルギニンは糖化を強力に抑え、合併症を抑えました。また、アルギニンは生体成分(体に必要なアミノ酸))のため副作用の心配はほとんど無いと考えられます。このように、アルギニンは、現在治す薬がない糖尿病合併症を治療できる成分として大いに期待されます。 ◆◆図.本当に怖い糖尿病合併症◆◆ ●網膜症の図(網膜の毛細血管が破れて出血を起こした状態。網膜はく離などにより失明します) ●白内障の図(白内障でレンズが白く濁った状態。手術でレンズを取り替えないと見えません) ●壊疽の図(糖尿病では動脈硬化が急速に進み血液が流れにくくなります。また、神経症でけがややけどをしても気づかなくて、また、そこが感染しやすくなります。その結果糖尿病では潰瘍や壊疽を起こしやすくなります。壊疽がひどくなると切断しなければなりません。糖尿病性壊疽は足切断の最大の原因です) ●動脈硬化の図(糖尿病では動脈硬化が急速に進みます。動脈硬化部位に血栓などが詰まると心筋梗塞、脳梗塞など死に直結する虚血性疾患を引き起こします) |
2)アルギニンは糖尿病合併症を予防・改善します! |
《アルギニンの糖尿病合併症予防・改善効果のまとめ》 ◎『アルギニン』は最新医学が明らかにした合併症を強力に予防・改善する注目の新成分です! ◎アルギニンは、糖化(グリケーション)を強力に抑えるとともに、抗酸化作用や一酸化窒素作用などにより糖尿病合併症を強力に予防・改善します。 ◎アルギニンは生体成分(体に必要なアミノ酸)です。アルギニンは安全性が高く副作用の心配はほとんどないと考えられます。 ◎アルギニンは、糖尿病合併症を予防・改善するだけでなく、すでに述べましたように、強力に血糖値を低下させ(場合によっては血糖値を正常化させ)ますので、副作用の心配がほとんどない、非常に安全性の高い、極めて望ましい糖尿病・糖尿病合併症予防・改善成分であると期待されます。そのため、軽症から重症(糖尿病合併症を併発している)まで幅広く糖尿病患者の治療に有用であることが期待されます。 |
【糖尿病合併症のアルギニン療法】 1.糖尿病合併症に対するアルギニンの効果 〔以下のアルギニンの働きは国際的な一流の医学誌や科学誌に掲載された信頼できるデータに基いたものです。詳しくは「≪アルギニンが糖尿病合併症に効果を示す文献例≫」をご覧下さい〕 ●アルギニンは、糖尿病合併症の主な原因と考えられている糖化〔終末糖化産物(AGE)の生成〕を、いま医薬品として開発されている物質(アミノグアニジン*)より強力に抑えました。 *:アミノグアニジンは、動物試験および臨床試験で合併症を防ぐ効果が認められましたが、合成化学物質のため副作用が強く現在開発中止中です。 ●アルギニンは、抗酸化作用(活性酸素の害を防ぎます)を示しました(活性酸素は糖尿病合併症を発病したり悪化させる原因の一つと考えられていますので、抗酸化作用は合併症の発病や悪化を防ぐと考えられます)。 ●アルギニンは、糖尿病(高血糖)で障害を受けた血管を改善し、血管を広げ、血液の流れを良くし、血圧を下げました。アルギニンのこれらの作用は、主にアルギニンから生成した一酸化窒素による作用と考えられました。 ●アルギニンは糖尿病で治りにくくなった傷の治りを明らかに早くしました。また、アルギニンは糖尿病での足の血流を促進し、足の温度を高めました。アルギニンは糖尿病による足の潰瘍を治しました。 ●アルギニンは、糖尿病性神経症を強力に防ぎました。 ●アルギニンは、糖尿病性腎症を強力に予防改善しました。 ●アルギニンは動脈硬化を強力に予防改善しました。 ●アルギニンは狭心症を予防改善しました。 ●アルギニンは閉塞性動脈硬化症を予防改善しました。 ●アルギニンはEDを改善しました。 ●アルギニンは認知症を改善しました。また、アルギニンは記憶力や学習機能の低下を改善しました。 ●このように、アルギニンは、主に糖化抑制作用と抗酸化作用と一酸化窒素作用によって糖尿病合併症を直接強力に予防・改善することができる初めての成分として、糖尿病合併症の予防および治療に大いに期待されます。 ●アルギニンは、糖尿病で合併症が心配な方、あるいは糖尿病合併症でお悩みの方におすすめします。アルギニンは生体成分(体に必要なアミノ酸)です。アルギニンは安全性が高く副作用の心配はほとんどないと考えられます。 2.アルギニンの摂取方法 ●通常のアルギニンサプリメントの場合 (アルギニンには重大な問題点があるため『進化型スーパーアルギニンサプリメント』をおすすめします) 糖尿病合併症の予防や治療には、アルギニンとして1日2~4g程度の摂取(1日2~3回に分け摂取)から開始します。1~3ヶ月程度摂取して効きめを見ながら摂取量を調節します。 現在血糖低下剤などで糖尿病を治療している場合は、これらの医薬品とアルギニンを一緒に飲んでも特に問題はないと考えられます。 ※アルギニンの重大な問題点 近年の医学的研究によりアルギニンには重大な問題点があることが明らかになってきました。それは、①アルギニンは、腸(のアルギナーゼ)によって分解され、摂取した量の2~5割しか体に利用されません。また、持続性が短いです(5~6時間程度)。②老化や老化病、糖尿病や糖尿病合併症などにおいて、あるいは長期間の摂取(例えば3ヶ月程度以上など)や大量摂取(例えば1日3g程度以上など)などにおいて、全身のアルギナーゼ活性が上昇することが知られており、そのような時、アルギナーゼによってアルギニンが分解されるため、アルギニン不足により、アルギニンの働きが弱くなったり、消失したり、アルギニン不足によって生成した活性酸素でかえって健康障害や病気の悪化を引き起こしたりします。③アルギニンの最も重要な作用として、アルギニンがNOS(一酸化窒素合成酵素)の働きによって変化を受け生成するNO(一酸化窒素)による働きがありますが、NOSは活性酸素の影響を受けやすく、酸化ストレス(活性酸素)が亢進しているとき〔老化や老化病、糖尿病や糖尿病合併症などにおいて〕、活性酸素によってNOSの働きは阻害され、NOSはNOを生成せずに活性酸素(スーパーオキシド)を生成します。その結果、アルギニン(NOを介した)の働きが弱くなったり、消失したり、生成した活性酸素でかえって健康障害や病気の悪化を引き起こしたりします。 すなわち、アルギニンにはこのような重大な問題点があるため、働きが弱く〔働きを示すために大量摂取が必要〕、持続性が短く(6時間程度。1日4回程度の頻回摂取が必要と考えられます)、長期間(例えば3ヶ月程度以上)の摂取で働きが弱くなったり消失したり、かえって健康障害が生じたりします。そのため、大量のアルギニンを長期間漫然と摂取することはお避け下さい。 一方、アルギニンの重大な問題点①~③を克服することによって、アルギニンの働きは数倍以上に強力になり、持続性が長くなり、長期間の摂取によっても働きが弱くなったり、消失することがなく強力に働き続けることが期待できます。 ●『進化型スーパーアルギニンサプリメント』の場合 (『進化型スーパーアルギニンサプリメント』について詳しくは「アルギニンの欠点を克服し、超強力・超持続を目指した、進化型「スーパーアルギニンサプリメント」の開発の試み=長寿、健康長寿、若返り、老化・老化病抑制も夢ではない、究極のスーパーアンチエイジングサプリの創製を目指して=〚詳細編〛または〚概要編〛をご参照ください)。 『進化型スーパーアルギニンサプリメント』は、アルギニンの重大な問題点①~③を克服し、働きの発現が非常に早く、超強力(6~8倍程度あるいはそれ以上)・超持続(2倍程度)で、長期間(例えば3ヶ月程度以上)働きが期待できます。そのため、糖尿病合併症の予防・改善には、アルギニンとして1日1g程度の摂取から始めます。効きめを見ながら摂取量を調節します。効果をあらわす摂取量は個人によって異なる場合があります。なお、『進化型スーパーアルギニンサプリメント』の場合、そのアルギニン1gは、通常のアルギニンサプリメントのアルギニン6~8g程度あるいはそれ以上に相当すると考えられます。また、アルギニンを長期間(例えば3ヶ月程度以上)摂取し続けても、アルギニンの効果が弱くなったり、消失したりする可能性は低いことが期待できます(『アルギニンサプリメントの正しい選び方』もご参照下さい)。さらに、『進化型スーパーアルギニンサプリメント』には、抗酸化剤(ビタミンC、ビタミンE、コエンザイムQ10)が含まれていますので、糖尿病合併症に対するアルギニンの働きを増強することが期待できます。 ●アルギニンを摂取する場合の注意点 これについては『アルギニンサプリメントの正しい選び方』をご覧ください。 ≪アルギニンが糖尿病合併症に効果を示す文献例≫ ●アルギニンは糖尿病での血管障害を改善します。 糖尿病患者では、血管の拡張性(弛緩性)が障害されていることが知られています。これが全身の血液の流れを阻害し合併症の原因となっていることが考えられています。 Pieperらは、糖尿病ラット(ストレプトゾトシン惹起糖尿病ラットおよび遺伝性糖尿病BBラット)の血管では内皮依存性(アセチルコリン反応性)血管弛緩反応に障害が起こるが、アルギニンによってそれがほぼ正常まで改善されることを示しました(Eur. J. Pharmacol., 1996; 317: 317-320; Diabetologia, 1997; 40: 910-915)。 Huversらは、網膜症を併発した1型糖尿病患者において、アルギニンの投与は内皮依存性(アセチルコリン反応性)の血流増加を促進することを示しました(Diabetologia, 1995; 38 (Suppl.1): A48)。 ●アルギニンは高血糖による循環動態の異常を改善します。 糖尿病患者では、高血圧、血液粘度上昇、赤血球変形能低下、血小板凝集能亢進、凝固能亢進など循環動態に異常をきたし、それが合併症の原因になることが考えられています。 Giuglianoらは、ヒト(健常人12名)において高血糖(グルコースクランプ法により血糖値は一定に保った状態)により引き起こされた、血圧上昇、足の血流低下、血小板凝集能亢進、血液粘度増加などの血液動態異常はアルギニン投与により完全に回復することを示しました(Circulation, 1997; 95: 1783-1790)。 Piattiらは、2型糖尿病患者にアルギニンを経口投与すると、血流の増加と血圧の低下がみられることを示しました(Diabetes Care, 2001; 24:875-880)。2型糖尿病患者(12人)を2群に分け、一方には食事療法に加えアルギニン(3gを1日3回)を1ヶ月間経口投与しました。他方(対照群)にはアルギニンの代わりにプラセボを投与しました(二重盲検比較試験)。その結果、アルギニン投与群では、血液循環系に改善が見られ、前腕血流は36%増加し、収縮期の血圧は14%低下しました。一方、対照群ではこれらに変化はみられませんでした。 ●アルギニンは糖尿病性神経症の神経血流を改善します。 糖尿病性神経症では、神経に酸素や栄養を供給する血液の流れが悪く、この結果神経が酸素不足や栄養不足になり神経障害を起こすことが考えられています。 Kiharaらは、糖尿病性神経症のラットモデル(ストレプトゾトシン惹起糖尿病ラット)で、低下した神経血流がアルギニンの投与によってほぼ正常レベルまで改善されることを示しました(Exp. Neurol., 1995; 132: 180-185)。 ●アルギニンは糖尿病性神経症を予防・改善しました。 Rondonらは、糖尿病性神経症のラットモデル(ストレプトゾシン惹起糖尿病ラット)において、アルギニンの経口投与は痛覚過敏(hyperalgesia)および異痛症(allodynia)を消失させました。また、アルギニンは血漿中NO濃度を正常化させました。このように、アルギニンは糖尿病性神経症を予防・改善しました(Eur J Nutr. 2018, 57, 2353)。 ●アルギニンは糖尿病性腎症の進展を抑制します。 Reyesらは、糖尿病性腎症のラットモデル(ストレプトゾトシン惹起糖尿病ラット)に14週間アルギニンを摂取させたところ、アルギニンを投与しないラットに比べ尿タンパクは半分以下に減少し、腎症の進展抑制効果があることを示しました(J. Am. Soc. Nephrol., 1993; 4: 1039-1045)。 ●アルギニンは糖化を強力に抑制します。 Servetnickらは、アルギニンが糖化を抑制することを試験管内(in vitro)試験で示しました(Amino Acids, 1996; 11: 69-81)。また、その阻害作用の強さは糖化抑制剤として知られているアミノグアニジン(現在糖尿病合併症の治療薬として欧米で開発中)より強いことを示しました。ヒト血清アルブミン(100mg/ml)をグルコース(200mM)と37℃で2週間培養しますと糖化アルブミンが生成されました。この培養系にアルギニン塩酸塩(200mM)またはアミノグアニジン(200mM)を添加し同様に37℃で2週間培養したところ、アルギニン添加によってアルブミンの糖化は約70%抑制されましたが、アミノグアニジン添加によっては約30%の抑制でした。アルブミンはグルコースとの培養によりたんぱく分解酵素(トリプシン)による消化に抵抗する成分(難分解成分)が増加しますが、アルギニンはこの増加を89%抑制したのに対し、アミノグアニジンの抑制作用は66%でした。 ●アルギニンは腎の糖化を抑制し腎症の進展を抑えます。 Lubecらは、糖尿病性腎症動物モデルにおいて、アルギニンが糖化および腎病変の進展を抑制することを示しました(Nephron, 1992; 62: 80-83; Nephron, 1997; 75: 213-218)。糖尿病マウス(糖尿病db/dbマウス*、糖尿病kkマウス**)にアルギニン(50mg/kg体重)を4ヶ月間経口投与し、アルギニンを投与しない場合と比較しました。アルギニンを投与しない糖尿病マウスにおいては、非糖尿病マウスに比べ腎コラーゲン量、腎糖化(AGE)産物(カルボキシメチルリジン、ペントシジン)、腎脂質過酸化産物が増加しましたが、アルギニン投与によってこれらの増加は統計的に有意に抑制されました。また、糖尿病マウスにおいては還元性チオール量が減少(体内に活性酸素が増えたことを示しています)しましたが、アルギニンの投与によってその減少は有意に抑制され正常レベルに保たれました。糖尿病性腎症の特徴である腎重量およびアルブミン尿の増加はアルギニン投与によって有意に抑制され、特に尿中アルブミン量はほぼ正常レベルにまで改善されていました。 *:糖尿病db/dbマウス:遺伝的に2型糖尿病を発症したマウス。 **:糖尿病kkマウス:遺伝的に2型糖尿病を発症したマウス。 ●アルギニンは糖尿病性腎症を改善します! (Klahr S, Morrissey J. L-arginine as a therapeutic tool in kidney disease. Semin Nephrol. 2004 Jul;24(4):389-94. Review.)
アルギニンは種々の原因で起こる腎障害(腎臓病)を改善することが報告されています。
アルギニンは糖尿病腎症の蛋白尿を減少させ腎症を改善しました。アルギニンは血糖値が高いままの状態でも強力に腎症の改善効果を示しました。アルギニンはほとんど副作用を示しませんでした。
(古賀のコメント)
アルギニンはいろんな原因で起こる腎臓病を改善することがいろんな文献で報告されています。特に糖尿病による腎症を強力に改善します。アルギニンの特徴は、血糖値が高いままで下がらない場合にも腎症を予防改善することです。
●アルギニンは糖尿病患者の脂質過酸化を抑制します。 糖尿病患者では健康な人(健常人)に比べ脂質過酸化(脂肪が活性酸素によって酸化されること)が増加していることが知られており、これが合併症、特に動脈硬化の発症や進展に大きくかかわっていることがいわれています。 Lubecらは、糖尿病患者において、アルギニンが脂質過酸化を抑制することを示しました(Free Radical Biol. Med., 1997; 22: 355-357)。糖尿病患者では健常人に比べ脂質過酸化物の量(尿中マロンジアルデヒド量で評価)が3倍近くまで増加することが見出されました。ついで糖尿病患者(30名)にアルギニン(1gを1日2回)またはプラセボを3ヶ月経口投与したところ、アルギニン投与群では脂質過酸化物の量が有意に減少し、ほぼ正常レベルまで改善しました。また、アルギニンの投与を止めると脂質過酸化物の量は投与前のレベルまで増加しました。 ●アルギニンは糖尿病で治りにくくなった傷の治りを早めました。 アルギニンはやけどやけがや手術の患者の傷の治りを早くすることが知られていることから、糖尿病でも同様に傷の治りを早くするかどうかが検討されました。 糖尿病ラット(ストレプトゾトシン惹起糖尿病ラット)の背中に傷をつけアルギニンを投与したところ、アルギニンを投与したラットでは投与しないラットに比べ傷の直りが有意に促進されました(Wound Repair Regen., 2003; 11(3): 198-203)。 ●アルギニンは糖尿病患者の足の血流を増やします。 Fosselらはアルギニンを含むクリームが2型糖尿病患者の足の血流を増やすことから糖尿病性壊疽に効果がある可能性を示しました(Diabetes Care, 2004; 27(1): 284-285)。血管拡張作用を有する一酸化窒素の前駆物質でアミノ酸の一つ「アルギニン」を含むクリームを13人の2型糖尿病患者に投与しました。アルギニンは糖尿病患者の足の血流を35%増やし、親指の温度を8℃高めました。このことから、アルギニンは糖尿病患者における神経症や動脈硬化症による足の潰瘍(壊疽)を治療できる可能性が示されました。 ●アルギニンは糖尿病による足の潰瘍を治します! (文献:Arana V, Paz Y, Gonzalez A, Mendez V, Mendez JD. Healing of diabetic foot ulcers in L-arginine-treated patients. Biomed
Pharmacother. 2004 Dec; 58(10) :588-97.)
Aranaらは、アルギニンが糖尿病による足の潰瘍をほとんど治すことを報告しました。アルギニンは、血糖をコントロールし、合併症を抑えることが動物や糖尿病患者で明らかにされています。また、動物や人でアルギニンが血を固まりにくくし、血液の流れを良くすることも示されています。そこで糖尿病患者でアルギニンが足の潰瘍を改善するかどうかが調べられました。
糖尿病患者が3つのグループに分けられました。Aグループ(11人)は潰瘍の無い患者で対照として用いられました(アルギニンは投与されない)。Bグループ(11人)は足に潰瘍ができていましたがアルギニンは投与されませんでした。Cグループ(11人)は足に潰瘍がある患者で、アルギニンが潰瘍を起こしている足の皮下に投与されました。アルギニンを投与されたCグループの8人の潰瘍はほとんど治りました。残りの3人は住所の変更のために試験を終了することができなかったが途中経過では潰瘍の改善が見られました。これらの結果からアルギニンは糖尿病による潰瘍の優れた治療法になることが明らかとなりました。
(古賀のコメント)
アルギニンは適切に飲めば、糖尿病の血糖値をコントロールし、また、合併症の原因である糖化そのものを抑えて合併症も抑えることが期待できる、現在使用できるほぼ唯一の成分です(アルギニン以外では、医薬品も含めこのような働きを持つものは現在ほとんどありません)。
糖尿病による足の潰瘍は、糖尿病によって神経症と動脈硬化と免疫低下が進んだ結果表れてくるもので、神経症によって神経が麻痺し、けがをしても分からなくなります。また、免疫力が低下しけがをした部位が治りにくくなってきます。そして、動脈硬化が進んで血液が流れにくくなり、また、糖尿病患者の血液は固まりやすくなってさらに血液が流れにくくなり、末端が栄養不足や酸素不足になって潰瘍がさらに治りにくくなり、これが進行して壊疽になってしまい、最後には足を切断しなければならなくなってしまいます。ところが足の潰瘍や壊疽に良く効く薬は残念ながらありません。また、薬では副作用も心配です。
アルギニンは、動脈硬化を改善し、血液が固まりやすくなるのを防ぎ、免疫力を高めますので潰瘍を改善する可能性があります。また、神経症も改善することが期待できます。また、生体成分のため副作用の心配もありません。この文献は、糖尿病による足の潰瘍をアルギニンがほぼ完治させたことを示しています。アルギニンは皮下に投与されましたが、アルギニンは経口投与でも速やかに吸収され注射と同じくらいに働くことが別の目的での試験から示されていますので、アルギニンは飲んでも潰瘍に十分効果を示すことが期待できます。
●アルギニンの動脈硬化、動脈硬化性疾患、ED、認知症の予防改善作用については該当する他のサブページをご覧下さい。 ◆◆図.アルギニンは糖尿病合併症を強力に予防・改善します◆◆ ●私たちが毎日食べる炭水化物(ご飯、麺類、糖分など)は消化されてブドウ糖などの糖になり体に吸収されます。ブドウ糖は吸収されて血液中に移行すると膵臓からインシュリンが分泌され、インシュリンの働きで体の各組織(筋肉、脂肪組織、肝臓など)に取り込まれ、エネルギーとなって消費されます。エネルギーに使われなかったブドウ糖はグリコーゲンや脂肪になって蓄えられます。 ところが膵臓からのインシュリンの出が悪かったり、インシュリンの働きが悪いと、ブドウ糖は体の各組織に取り込まれにくくなり、ブドウ糖は血液中に残り血液中のブドウ糖の量が異常に多くなります(つまり血糖値が高くなります)。これが糖尿病です。 ●ブドウ糖には、エネルギーに使われる体に良い善玉糖*と、悪さをする少量の悪玉糖*があります。悪玉糖はタンパク質や脂質や遺伝子(DNA、RNA)に化学的に容易に結合して、これらの働きを阻害したり消失させたりします。またこの結合は糖化(グリケーション)と呼ばれていますが、糖化したもの(糖化物)は活性酸素を生成したり体を障害する物質(炎症物質など)を出したりします。これによって、体の細胞や組織や臓器が異常を起こします。 糖尿病で血糖値が高くなると、悪玉糖も増えて糖化がどんどん進行していき、体のあちこちが異常を起こします。これが合併症です。 *:『善玉糖』および『悪玉糖』という名称は、本ホームページ責任者古賀によって名付けられたものです。 ●『アルギニン』は、悪玉糖をやっつけて糖化を強力に防ぎ、合併症になるのを防いだり、合併症を改善したりします。また、その一酸化窒素作用、抗酸化作用などによって、合併症の進行を強力に抑えます。 アルギニンは生体成分のため副作用の心配はほとんどないと考えられます(文献的に、通常の使用において特に問題となる副作用はほとんど報告されていません)。 |
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【ホームページ責任者】 古賀 弘 Eメール:kogahrs555@nifty.com 健康コンサルタント 薬学博士 日本抗加齢医学会正会員 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 【参考図書】 「アルギニン」についてもっとお知りになりたい方には次の本(拙著)をお薦めします。本書は本邦最初で唯一の一般向けアルギニン参考書です。 本書のご購入ご希望の方はインターネット書店(Amazon.co.jpまたは紀伊国屋書店)または全国の書店でお買い求め下さい。 『超アミノ酸健康革命-21世紀のサプリメント「アルギニン」のすべて』(古賀 弘著、今日の話題社、1,575円(税込)) |
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