アルギニンは肥満した人の体脂肪および腹部肥満を減らし肥満を改善します!

Beneficial effects of a long-term oral L-arginine treatment added to a hypocaloric diet and exercise training program in obese, insulin-resistant type 2 diabetic patients
Pietro Lucotti, Emanuela Setola, Lucilla D. Monti, Elena Galluccio, Sabrina Costa, Emilia P. Sandoli, Isabella Fermo, Giovanni Rabaiotti, Roberto Gatti, and PierMarco Piatti
Am J Physiol Endocrinol Metab, Nov 2006; 291: E906 - E912.

 
Lucottiらは、アルギニンが肥満した人の体脂肪と腹部肥満を減らし肥満を改善することを示しました Am J Physiol Endocrinol Metab, Nov 2006; 291: E906 - E912

  すでにFuらは、アルギニンが肥満ラット(Zucker diabetic fatty rat※)の体脂肪と体重を減少させることを示しました(J. Nutr. 2005; 135: 714-721)。(『アルギニンは体重と体脂肪を減らします!』を参照下さい)。
(※Zucker diabetic fatty rat:遺伝的に食欲を抑制するホルモン(レプチン)の働きが悪く、過食(食べ過ぎ)によって肥満し2型糖尿病にもなります。ヒトの肥満、肥満2型糖尿病、メタボリックシンドロームなどのモデルとして使われ、医薬品やサプリメントなどが肥満、肥満2型糖尿病、メタボリックシンドロームなどに効果があるかどうかの試験などに使われます)。

  本文献では、Lucottiらは、アルギニンが肥満した人で体脂肪とウェスト周囲径(腹部肥満)を減らし肥満を改善することを示しました。すなわち、アルギニンは複数の種類の動物で肥満を改善することが明らかとなりました。

  肥満した患者(33人、2型糖尿病を併発)を21日間の低カロリー食(1日1,000kcal)と運動療法(1日1時間半の運動を週に5日)の試験に参加させました。これらの患者は2つのグループに分けられ、一方には1日8.3gのアルギニンを摂取させました(16人:女性12人、男性4人)(アルギニングループ)。また、他方にはプラセボ(アルギニンが入ってない偽薬)を摂取させました(17人:女性13人、男性4人)(プラセボグループ)。試験は二重盲検法※1によって行われました。試験期間中これらの患者には副作用はありませんでした。
  その結果、低カロリー食と運動療法(プラセボグループ)によって体重(3.7kg減少)および体脂肪量(2.1kg減少)は明らかに(統計的に有意に)低下し肥満が改善されました。
  一方、低カロリー食と運動療法に加え、アルギニンを1日8.3g毎日摂取させると(アルギニングループ)、低カロリー食と運動療法(プラセボグループ)の場合に比べ体重の減少量はほぼ同等(3kg減少)でしたが、体脂肪量(3kg減少)やウエスト周囲径(8.3cm減少)〔プラセボグループの場合のウエスト周囲径の減少量は3.2cm〕はさらに大きく減少し(統計的に有意に)肥満はさらに改善されました。
  プラセボグループの場合、体重の減少量(3.7kg減少)のうち体脂肪の減少分は57%(2.1kg減少)でしたが、アルギニングループでは体重減少(3kg減少)のほぼ全量(3kg減少)が体脂肪の減少によるものでした。このことは低カロリー食と運動療法だけの場合(プラセボグループ)脂肪だけでなく脂肪以外(主に筋肉)の部分も減少しますが、低カロリー食と運動療法に加えアルギニンを摂取すると(アルギニングループ)脂肪だけがほぼ特異的に減少することを示しています。
  また、アルギニングループではアディポネクチン※2が40%増加(統計的に有意)していましたが、プラセボグループではほとんど変化はありませんでした。
  このように、アルギニンは肥満した人で体脂肪やウエスト周囲径(腹部肥満)を減少させて肥満を改善しました。また、肥満を防ぐ働きがあるアディポネクチンを増やしました。

※1 二重盲検法:医薬品やある成分の効果を正しく判定するための統計的手法です。医薬品やある成分をプラセボ(効果が無い偽薬)と同時に投与してその効果を判定します。医薬品やある成分の効果が、プラセボの効果よりも統計的に明らかに(有意に)高ければ医薬品やある成分は正しく効果があるということになります。

※2 アディポネクチン:アディポネクチンは脂肪細胞から分泌されるホルモン(善玉ホルモン)で、筋肉や肝臓の細胞が脂肪を燃焼するのを助け、肥満、糖尿病、動脈硬化などを防ぎ、メタボリックシンドロームを抑える働きがあるといわれています。ところが肥満、特に腹部肥満の人でアディポネクチンが減少し、これが肥満(腹部肥満)によるメタボリックシンドロームの大きな原因の一つであることが示されてきています。そのためこれを増やすことで肥満やメタボリックシンドロームの改善が期待できます。(参考文献:
Adiponectin and adiponectin receptors in insulin resistance, diabetes, and the metabolic syndrome. Takashi Kadowaki, Toshimasa Yamauchi, Naoto Kubota, Kazuo Hara, Kohjiro Ueki, and Kazuyuki Tobe,J. Clin. Invest., Jul 2006; 116: 1784 - 1792など)

(解説)
  肥満はスタイル上の問題だけでなく、糖尿病、高血圧、高尿酸血症、動脈硬化症、脂肪肝、変形性膝関節症、睡眠時無呼吸症候群、がんなどになる危険性が大きく高まります。また、腹部脂肪の増加はメタボリックシンドローム(高脂血症や高血圧、高血糖など動脈硬化性疾患の発症リスクを高める疾患)のリスクを高めます。このように、肥満、特に腹部肥満はスタイル面だけでなく、動脈硬化性疾患(心筋梗塞、脳梗塞など致死性の病気を引き起こします)の大きな原因となることから、早急に改善する必要があります。
  肥満の改善(体脂肪の減少)を行うための最も確実な方法は、摂取カロリーを抑え〔低カロリー食(ダイエット)〕、運動によって余分なカロリーを消費することですが、現実にはなかなか体重は減らないのが実情です。そこでサプリメントなどでダイエットと運動の効果を高めて肥満を改善しようといろいろ試みられていますが、本当に効果があるのかどうかを示すエビデンス(医学的な証拠)が示されているものはほとんどないのが現状です(動物では効果があっても人での効果が示されたものはほとんどありません)。

  アルギニンは、すでにFuらによって、肥満ラット(Zucker diabetic fatty rat:遺伝的に肥満し2型糖尿病にもなります)の体脂肪と体重を減少させることが示されていました(J. Nutr. 2005; 135: 714-721)。
  本文献では、Lucottiらは、アルギニンが肥満した人で体脂肪とウエスト周囲径(腹部肥満)を減らし肥満を改善することを示しました。またその働きの一部にはアルギニンのアディポネクチン(善玉ホルモン)増加作用が関係している可能性が示されました。
  アルギニンによる肥満改善作用の特徴は、ダイエットだけ、あるいはダイエットと運動を組み合わせた場合にも体重減少の半分近くは筋肉などの脂肪以外の部分の減少ですが、アルギニンの場合体重減少のほぼ全てが脂肪の減少によるものであるということです。これは、減量において筋肉や骨など脂肪以外の部分の減少が体力の低下、リバウンド、スタイルの悪化、骨粗しょう症のリスクなどの大きな原因になるといわれていることから、アルギニンはダイエットにおけるこれらの問題点を解決する有効な手段となる可能性があるということです。
  このように、アルギニンは、肥満によってスタイルに自信がもてなくなった人が肥満を改善するためだけでなく、腹部肥満で健康に黄信号や赤信号がともっている人(メタボリックシンドロームと診断された人)でも肥満の改善に是非お勧めしたいサプリメントです。アルギニンは生体成分(体に必要なアミノ酸)であり、安全性が高く副作用の心配がほとんどないため安心して摂取できます。なお、アルギニンは、ダイエットや運動と共に使用することによってより大きな効果が期待されるため、これらと一緒に使用されることをお勧めします。
 

●アルギニンを摂取する場合の注意点
  これについては『アルギニンの安全で効果的な飲み方』、および『アルギニンサプリメントの正しい選び方』をご覧ください。

アルギニンについてもっと詳しく知りたい方は『アルギニンで若返る!』をご覧ください。