●Fuらは、アルギニンが肥満ラットの体脂肪と体重を減少させ肥満を改善することを示しました(J. Nutr. 2005; 135: 714-721)。
肥満ラット(Zucker diabetic fatty rat※)に10週間アルギニンを水に溶かして飲ませました。ラットの体重は、アルギニンを飲ませ続けたとき、4、7、10週目に、アルギニンを飲ませなかった場合に比べ、それぞれ6、10、16%減少しました。アルギニン摂取(10週間)によって腹部脂肪重量は45%減少し、血液中のブドウ糖(血糖値)、中性脂肪、および脂肪酸(FFA)はそれぞれ25%、23%、および27%低下しました。アルギニンの摂取(10週間)によって、脂肪組織の脂肪分解が22〜24%増加し、ブドウ糖と脂肪酸(オクタノエート)の酸化(燃焼)がそれぞれ34〜36%および40〜43%増加しました。
アルギニンの摂取(10週間)によって、脂肪組織での脂肪やブドウ糖の酸化(燃焼)に関係するさまざまな遺伝子(NOS-1、HO-3、AMPKK、PGC-1α)の発現が上昇しました。
これらの結果から、アルギニンは脂肪組織での脂肪分解や脂肪やブドウ糖の酸化(燃焼)を促進することで、脂肪(特に腹部脂肪)を減少させ、肥満(特に腹部肥満)を改善することが明らかにされました。
※Zucker diabetic fatty rat:遺伝的に食欲を抑制するホルモン(レプチン)の働きが悪く、過食(食べ過ぎ)によって肥満し2型糖尿病にもなります。ヒトの肥満、肥満2型糖尿病、メタボリックシンドロームなどのモデルとして使われ、医薬品やサプリメントなどが肥満、肥満2型糖尿病、メタボリックシンドロームなどに効果があるかどうかの試験などに使われます。
(解説)
アルギニンは、成長ホルモンの分泌促進や一酸化窒素(NO)などの働きを介して、脂肪の分解、筋肉の増加、代謝の促進などにより、体脂肪や体重を減少させ、望ましいプロポーションをつくることが期待されています。そのため、アルギニンはダイエット時における強力なサポート役として期待されます。
本文献は、肥満ラットで、アルギニンは、脂肪組織での脂肪分解や脂肪やブドウ糖の酸化(燃焼)を促進することで、体脂肪(特に腹部脂肪)や体重を大幅に減らすことを示しました。このことは、アルギニンが人においても体脂肪(特に腹部脂肪)や体重を減らすことが期待できることを示しています。アルギニンは、さらに、血糖値や血中の中性脂肪も減少させたことから、高血糖や高脂血症も改善することが期待されます。これらのことからアルギニンは肥満の改善だけでなくメタボリックシンドロームの改善にも大変有用であることが期待されます。アルギニンは生体成分(体に必要なアミノ酸)であり、また、安全性が高く副作用の心配がほとんど無いため安心して摂取できます。