アルギニンは、脂肪だけを減らして肥満を改善する驚異の抗肥満アミノ酸です。
  
  以下、J. R. McKnightらによって、アルギニンの抗肥満効果およびそのメカニズムが詳しくまとめられましたので、それについて解説します(文献:McKnight JR, Satterfield MC, Jobgen WS, Smith SB, Spencer TE, Meininger CJ, McNeal CJ, Wu G. Beneficial effects of L-arginine on reducing obesity: potential mechanisms and important implications for human health. Amino Acids, 2010 Jul; 39(2): 349-57)。


  肥満は、女性にとって美容の大敵となりますが、健康上からも大きな問題となります。肥満は欧米先進国では昔から問題となっていましたが、近年の食生活の飛躍的な向上によって、日本でも大きな問題となってきました。アメリカでは国民の35%が肥満で、約3分の2が肥満傾向にあります。一方、日本では、男性では30代から60代、女性では60代以上の人の約3割が肥満となっています。
  肥満は女性にとって美容の大敵であることは言うまでもないことですが、種々の病気を引き起こす危険因子ともなります。例えば、肥満は糖尿病(2型)、動脈硬化、脳梗塞、心筋梗塞、高血圧、ある種のがん(結腸がん、肺がんなど)などの病気を引き起こす大きな原因となります。
  
このように肥満は多くの人が抱える重要な問題であるにも拘らず、それを効果的に、そして副作用の心配がなく改善する成分(あるいは薬)は現在のところほとんどありません。

  これまで発表された多くの文献によって、アルギニン(アミノ酸の一種)が、脂肪を燃焼・分解し、また脂肪の生成を抑えて、強力な抗肥満効果を示すことが明らかとなってきました。
  以下、アルギニンの抗肥満効果とそのメカニズムについて解説します(メカニズムとはしくみのことをいいます。つまり、アルギニンの抗肥満効果のメカニズムとは、アルギニンが脂肪を減少させ肥満を改善するしくみのことです。メカニズムを解明することは、その働きを科学的に証明するために大変重要なことです)。


1.アルギニンの抗肥満効果

1−1.ラットでの効果
  ある成分の効果をみるには、先ず動物での効果を調べますが、最初は通常ラットを用います。ラットでの抗肥満効果を調べるには、肥満ラットを使います。肥満ラットには、遺伝的に肥満し易いラット(Zucker diabetic fatty ratなど)を用いる場合と、普通のラット(SD ratなど)に高カロリー食を食べさせ肥満させたラットを使う場合があります。

●遺伝的に肥満し易いラット(Zucker diabetic fatty ratなど)を用いる場合
  肥満ラット(Zucker diabetic fatty rat)に10週間アルギニンを水に溶かして飲ませたところ、ラットの体重は、アルギニンを飲ませ続けたとき、4、7、10週目に、アルギニンを飲ませなかった場合に比べ、それぞれ6、10、16%減少しました。アルギニン摂取(10週間)によって腹部脂肪重量は45%減少し、血液中のブドウ糖(血糖値)、中性脂肪、および脂肪酸(FFA)はそれぞれ25%、23%、および27%低下しました。アルギニンの摂取(10週間)によって、脂肪組織の脂肪分解が22〜24%増加し、ブドウ糖と脂肪酸(オクタノエート)の酸化(燃焼)がそれぞれ34〜36%および40〜43%増加しました。
  アルギニンの摂取(10週間)によって、脂肪組織での脂肪やブドウ糖の酸化(燃焼)に関係するさまざまな遺伝子(NOS-1、HO-3、AMPK、PGC-1α)の発現が上昇しました。
  
これらの結果から、アルギニンは脂肪組織での脂肪分解、および脂肪やブドウ糖の酸化(燃焼)を促進することで、脂肪(特に腹部脂肪)を減少させ、肥満(特に腹部肥満)を改善することが明らかにされました。

Zucker diabetic fatty rat:遺伝的に食欲を抑制するホルモン(レプチン)の働きが悪く、過食(食べ過ぎ)によって肥満し2型糖尿病にもなります。ヒトの肥満、肥満2型糖尿病、メタボリックシンドロームなどのモデルとして使われ、医薬品やサプリメントなどが肥満、肥満2型糖尿病、メタボリックシンドロームなどに効果があるかどうかの試験などに使われます。

●高カロリー食を食べさせ肥満させたラットを使う場合
  ラット(SD rat)に15週間高脂肪食を食べさせたところ、低脂肪食を食べさせたラットに比べて体重は18%増加し、脂肪(白色脂肪※※)は74%増加しました。次いで、このラットに12週間アルギニンを飲ませたところ、アルギニンを飲ませなかったラットでは12週間でさらに脂肪(白色脂肪)が98%増加しましたが、アルギニンを飲ませたラットでは脂肪(白色脂肪)は35%しか増えませんでした。また、アルギニンを飲ませたラットでは血液中のブドウ糖(血糖値)および中性脂肪が低下しました。
  
これらの結果から、アルギニンはカロリーのとりすぎで肥満になることを防ぐことが明らかになりました。

SD rat:普通のラットです。通常の人と同じように、普通の食事では肥満になりませんが、高カロリーの食事を食べ続けると肥満になります。

白色脂肪※※:脂肪には白色脂肪と褐色脂肪がありますが、白色脂肪が脂肪の大部分を占めます。

●以上のラットでの結果から、アルギニンが人でも強力に肥満を改善することが期待されました。


1−2.ブタでの効果

  豚は肥満し易いので、成分(や薬)の抗肥満効果を見るのに適した動物と考えられます。
  豚にアルギニンを60日間(約2ヶ月間)摂取させたところ、血液中の中性脂肪が20%減少し、全身の脂肪量が11%減少しました。
 

1−3.ヒトでの効果
  アルギニンは肥満した人で、脂肪のみを減少させ肥満を改善しました。

  肥満した人33人を3週間(21日間)、低カロリー食と運動療法の試験に参加させました。これらの人は2つのグループに分けられ、一方には1日8.3gのアルギニンを摂取させました(16人:女性12人、男性4人)(アルギニングループ)。また、他方にはプラセボ(アルギニンが入ってない偽薬)を摂取させました(17人:女性13人、男性4人)(プラセボグループ)。試験は二重盲検法によって行われました。試験期間中これらの人には副作用はありませんでした。
  その結果、低カロリー食と運動療法のみ(プラセボグループ)によって体重は3.7kg、体脂肪量は2.1kgそれぞれ減少し、明らかに(統計的に有意に)肥満が改善されました。しかし、このグループでは、体脂肪の減少に加え、脂肪以外(主に筋肉)の成分も減少しました(1.7kg減少)。
  一方、低カロリー食と運動療法に加え、アルギニンを1日8.3g毎日摂取させたグループ(アルギニングループ)では、低カロリー食と運動療法のみのグループ(プラセボグループ)に比べ、体重の減少量はほぼ同等(3kg減少)でしたが、体脂肪量は3kg減少し、減少分のほぼ全量が脂肪成分でした。また、アルギニングループではウエスト周囲径の減少量は8.3cmと大きかったですが、プラセボグループの場合その減少量は3.2cmと少ないものでした。

  
このように、ヒトでの試験(3週間)において、肥満改善度(脂肪減少量)は、低カロリー食と運動療法のみの場合−2.1kgでしたが、カロリー制限と食事療法に加えアルギニンを摂取させた場合−3kgとなり、低カロリー食と運動療法のみの場合に比べ、アルギニンを一緒に摂取することでより多くの脂肪が減少しました。特に注目すべきは、アルギニングループでは腹部の脂肪減少が大きく、−8.3cmもウエスト周囲径が減少しました(アルギニンによる腹部の激痩せ効果が示唆されました)。

  通常、痩せるために、カロリー制限と運動療法だけを行った場合、痩せるには痩せますが、脂肪だけでなく脂肪以外(主に筋肉)の部分も減少してしまいます。しかし、筋肉の減少は体型(プロポーション)の崩れ(メリハリの無い体型)を引き起こすだけでなく、筋肉でのカロリー消費の低下を引き起こし(筋肉はカロリー消費において最も大きい部分を占めますので、その減少はカロリー消費の大きな低下となります)、リバウンドの大きな原因となります。つまり、さらに太りやすい体質と悪いプロポーションが結果として生じることになります。一方、カロリー制限と運動療法に加えアルギニンを摂取すると脂肪だけがほぼ特異的に減少し、腹部の脂肪も劇的に減少しますので、リバウンドの心配が少なくなり、また、プロポーションがさらに良くなることが期待できます。
 

※ 二重盲検法:医薬品やある成分の効果を正しく判定するための統計的手法です。プラセボ(効果が無い偽薬)によるプラセボ効果(思い込み効果)を除くために、医者にも患者にもどちらが効果のある「披検薬」で、どちらが効果の無い「プラセボ」であるか、分からないようにして、治験(臨床試験)を進める方法です。医薬品やある成分をプラセボ(効果が無い偽薬)と同時に投与してその効果を判定します。医薬品やある成分の効果が、プラセボの効果よりも統計的に明らかに(有意に)高ければ医薬品やある成分は正しく効果があるということになります。


1−4.アルギニンの抗肥満効果のまとめ
  
以上の動物およびヒトでのアルギニンの抗肥満効果をまとめてみますと、
@アルギニンは、連続的に体重を強力に減少させ続け、抗肥満効果を示しました。
Aアルギニンによる体重の減少分は大部分が脂肪成分で、他の成分(筋肉など)の減少はほとんどありませんでした。このことから、アルギニンによって痩せても、その後のリバウンドやプロポーションの崩れの心配は少ないと考えられました。
Bアルギニンは、他の成分(タンパク質など)より、脂肪を優先的に消費するようにする働きがあるものと考えられました。
Cアルギニンはアミノ酸で、体に必要な体の成分のため、安全性に問題はないと考えられ、安心して摂取できます。


  このように、アルギニンは抗肥満成分として大変優れていると考えられます。


2.アルギニンの抗肥満効果のメカニズム
  肥満は、エネルギーの摂取量が消費量を上回り、体脂肪として蓄積され続けることで生じます。そのため、肥満の改善には、エネルギーの摂取量より消費量を大きくし、体脂肪を減少させなければなりません。
  アルギニンは、エネルギーの摂取と消費のバランスを消費が上回るように変え、脂肪を減らします。また、脂肪組織の成長も抑制します。その結果、アルギニンは肥満を改善します。

  脂肪組織は、細胞内に脂肪を貯蔵します。エネルギーの摂取量が消費量を上回ったとき、余ったエネルギーの大部分は脂肪としてここに貯蔵されます。脂肪組織は、白色脂肪組織と褐色脂肪組織に分けられます。白色脂肪組織は、体内脂肪の大部分を貯蔵します。一方、褐色脂肪組織は、発熱組織と言われ、エネルギーを消費して熱を産生する機能が発達しており、その機能の低下は肥満をもたらします。実際、肥満者では褐色脂肪組織の活性が低下していることが知られています。また、褐色脂肪組織の活性が低下すると基礎代謝も低下することが明らかにされています。褐色脂肪組織の働きとして良く知られているものに、体が寒さを感じるとここで熱が産生され体温が上がります。そのため、この組織の働きが悪いと寒さに対する体温の上昇がうまく行かず、寒さに対する抵抗性が弱まります。一方、これを活性化すると、熱産生が増え、寒さに対する抵抗性が高まり、基礎代謝が上昇し、エネルギーの消費が増加することになります。現在、褐色脂肪組織は、抗肥満対策のターゲットとして大変注目されています。
  褐色脂肪組織によるエネルギー消費を増加させるには、褐色脂肪組織を活性化させる方法と、褐色脂肪組織を増やす方法とが考えられます。褐色脂肪組織を活性化し、エネルギー消費を高め、肥満の改善作用を示すものとして、唐辛子の辛味成分カプサイシンや辛くない唐辛子成分カプシエイトなどが知られています。

  アルギニンは、褐色脂肪組織を増やします。アルギニンは、体内で一酸化窒素になり、白色脂肪細胞を褐色脂肪細胞に変化させる可能性が示されています。また、アルギニンは、脂肪組織での脂肪やブドウ糖の酸化(燃焼)に関係するさまざまな遺伝子の発現を高めます。これらの結果、アルギニンはエネルギーの消費を促進し、脂肪蓄積を減らし肥満を改善するものと考えられます。
  このように、アルギニンは褐色脂肪組織を増やすという新しいメカニズムで抗肥満効果を示す大変注目すべき成分です。

  なお、褐色脂肪組織を活性化する方法では、エネルギー消費の増加には限度が考えられますが、一方、褐色脂肪組織を増やす方法でのエネルギー消費の増加は、理論上限度はなく、より高いエネルギー消費増加効果が期待できます。また、両方法を併用することでさらに高いエネルギー消費効果が期待できます。


3.まとめ

@アルギニンは脂肪を減少させ、抗肥満効果を示しました。
Aアルギニンによる体重の減少分はほとんどが脂肪成分で、他の成分(筋肉など)の減少分はほとんどありませんでした。このことから、アルギニンによって痩せても、その後のリバウンドやプロポーションの崩れの心配は少ないと考えられました。
Bアルギニンは、摂取し続けることで、体重を強力に減少させ続けることが期待されます。
Cアルギニンは褐色脂肪組織を増やし(新しいメカニズム)、エネルギー消費のプロセスを促進することで、エネルギーの消費を増やし、脂肪を減少させて抗肥満効果を示すと考えられます。
Dアルギニンはアミノ酸で、体に必要な体の成分のため、安全性に問題はなく、安心して摂取できます。


  なお、アルギニンをカプサイシンやカプシエイトと併用することで、さらに高い抗肥満効果が期待できます。


【お勧め】肥満の改善にアルギニンを摂取される場合、できるだけダイエットと運動を併用されることをお勧めします。


※ダイエットについて詳しくお知りになりたい方は『絶対やせる!ダイエットの決め手はこれだ!』をご覧下さい。



●アルギニンを摂取する場合の注意点
  これについてはアルギニンサプリメントの正しい選び方』をご覧ください。






【お問合せ先】
本ページおよびアルギニンに関するお問い合わせは本ページ責任者古賀までお願いします(Eメール:kogahrs555@nifty.com


上記以外のアルギニンの働きについてお知りになりたい方は
アルギニンで若返る!』をご覧ください。