アルギニン(食物中の)は子供の成長を促進します


A. J. van Vughtらは、アルギニン(タンパク質中の)が子供の成長(身長の伸び)を促進することを示しましたAnneke Jah van Vught, Berit L Heitmann, Arie G Nieuwenhuizen, Margriet Ab Veldhorst, Lars Bo Andersen, Henriette Hasselstrom, Robert-Jan M Brummer, and Margriet S Westerterp-Plantenga. Association between intake of dietary protein and 3-year-change in body growth among normal and overweight 6-year-old boys and girls (CoSCIS). Public Health Nutr, 2009, Sep 17; 1-7)。


  タンパク質の摂取が子供の成長促進(身長の伸び)と関係していることが知られています。タンパク質の摂取量が少ないと成長の程度は低くなります。一方、タンパク質の量だけでなく質も成長に関係があることが示されています。タンパク質の質の違いはタンパク質を構成しているアミノ酸の構成比の違いに因ります。つまりタンパク質のアミノ酸の中で特定のアミノ酸が成長に関係している可能性があります。では、タンパク質のどのアミノ酸が子供の成長(身長)に関係しているでしょうか。

  A. J. van Vughtらは、タンパク質のどのアミノ酸が子供の成長(身長の伸び)に関係しているかを調べるために研究を行いました(本研究は、コペンハーゲン大学病院など5つのデンマークやスウェーデンの大学や研究機関の共同研究によって実施されました)。

  コペンハーゲンの18の学校の6歳の子供がこの研究に協力しました。全部で203人の子供(男児94人、女児109人)のデータが集められました。試験期間は3年間でその間の身長の伸びとアルギニン(食物中の)の摂取量との関係が解析されました。

  その結果、アルギニンの摂取量が高い子供の身長は、低い摂取量の子供より身長の伸びが大きいことが明らかになりました。特に女児ではその結果は明らかでした。一方、男児の場合はその傾向が見られました。加えて、肥満女児ではアルギニンの摂取量が高いとき体脂肪量の減少が見られました。一方、タンパク質の摂取量と身長の伸びとの間には関係が見られませんでした。


【考察】
  子供の成長促進は主にタンパク質が関係しています。タンパク質の摂取量が少ないと成長の速度が遅くなります。しかし、タンパク質なら何でも良いのではなく、タンパク質の量とともにタンパク質の質が成長に影響を与えます(C. Hoppeら、 Am J Clin Nutr, 80, 447(2004)など)。タンパク質の質の違いは主にタンパク質を構成しているアミノ酸の構成比の違いにあります。

  タンパク質は、食物として摂取されたとき、消化管でほぼアミノ酸にまで分解された後体の中に吸収され、一部は再びタンパク質に再合成され、筋肉、皮膚、毛髪などのタンパク質となります。また、他の一部はアミノ酸として種々の生理作用に関係してきます。いくつかのアミノ酸の生理作用の一つに成長ホルモンの分泌促進作用があります。

  成長ホルモン(GH)は子供の成長(身長の伸び)を促進します。いくつかのアミノ酸は成長ホルモンの分泌促進作用を示しますが、そのうちアルギニンは最も強い作用を示すものの一つであることが知られています(Belloneら、J Pediatr Endocrinol Metab, 9, 523(1996); Bratusch-Marrainら、Acta Endocrinol, 90, 403(1979)など)。実際、アルギニンは成長ホルモンの分泌作用を試験するために医療用として使われています(アルギニンの成長ホルモン分泌促進作用については『アルギニンは成長ホルモンを強力に増やします!』をご覧下さい)。

  これらのことから、アルギニン(タンパク質として、あるいはアミノ酸として)の摂取量が多いほど成長(身長の伸び)を促進することが期待されます。しかし、これまでアルギニンの摂取量と成長促進(身長の伸び)との関係を明らかにした研究はありませんでした。

  本文献はアルギニン(タンパク質中の)の摂取量が子供の成長(身長の伸び)に大きく影響していることを示しました。すなわち、(タンパク質中の)アルギニンの摂取量が多いほど子供の成長(身長の伸び)がより促進されることが示されました。一方、タンパク質の摂取量は子供の成長(身長の伸び)に関係していませんでしたので、本研究からは子供の成長(身長の伸び)に関係があるのはタンパク質の摂取量ではなく、アルギニンの摂取量であることが示されました。

  以上、まとめてみますと、タンパク質による子供の成長(身長の伸び)促進作用は主にアルギニンによると考えられました。アルギニンはその強力な成長ホルモン分泌促進作用により子供の成長(身長の伸び)を促進するものと考えられました

注:アルギニン(アミノ酸として)を子供の成長促進に使用することについて、以下のようなコメントを著者の一人Dr. van Vughtから頂きました。『
We believe that arginine is a strong GH stimulator which could influence linear growth and body composition. Maybe it could be helpful to add arginine as a foodsupplement』(日本語訳:私たちは、アルギニンが強力な成長ホルモン分泌促進作用を持ち、成長促進(身長を伸ばす)や体組成(脂肪など)に影響をおよぼすと考えています。アルギニンは栄養補助に有用であると考えます)。







【お問合せ先】
本ページおよびアルギニンに関するお問い合わせは本ページ責任者古賀までお願いします(Eメール:kogahrs555@nifty.com


上記以外のアルギニンの働きについてお知りになりたい方は
アルギニンで若返る!』をご覧ください。