腎障害(腎臓病)になると、赤血球の生成を調節するホルモンであるエリスロポエチンの産生が障害され、赤血球の生成が低下し貧血になることが知られています。そのため、腎障害における貧血にはエリスロポエチンが投与されます。しかし、エリスロポエチンは高価で、頻回の注射が必要で、また、効果を示さない患者も見られることから、安価で、経口投与が出来て、より効果の高い成分が探索されてきました。
Imagawaたちは、種々検討した結果、アミノ酸の一つのアルギニンが、貧血を示す腎障害の患者(8名)で、経口投与(アルギニンを1日1.3gを8−22週経口投与)によって、エリスロポエチンとヘモグロビンを増やし(8名中6名に効果)、貧血を改善することを示しました。また、腎機能も改善する(3名)ことを示しました。アルギニンはほとんど副作用を示しませんでした。
(S. Imagawa, et.al.,
L-arginine Administration Reverses Anemia of Renal Disease. Blood 2004 104: Abstract 1631)
Tarumotoたちは、貧血を示す腎障害の患者(高年の患者8名)にアルギニンを経口投与(アルギニンを1日1.3g経口投与)したところ、全員のヘモグロビンが増加しました。また、6名の腎機能が改善しました。副作用はありませんでした。
(T. Tarumoto, et.al., L-arginine administration reverses anemia associated with renal disease.
Int J Hematol. 2007 Aug; 86(2): 126-9)
(これらの研究は、自治医大、筑波大学医学部等で行われた結果です)
(コメント)
これらの文献などから、アルギニンは、貧血を示す腎障害の患者で、エリスロポエチン(赤血球生成ホルモン)およびヘモグロビンを増やし、貧血および腎機能を改善することが明らかとなりました。このことから、アルギニンは、エリスロポエチン(注射薬)に比べ、安価で経口投与できる貧血の改善薬として有望と考えられます。また、アルギニンはアミノ酸で副作用の心配もほとんどないと考えられることから、腎臓病の人の貧血の予防に、あるいは貧血が軽い状態の人の症状の改善などにも安全に使用できると考えられます。