アルギニンは床ずれを改善します!


 
@Desnevesらは、アルギニン(+ビタミンC+亜鉛)が床ずれを明らかに改善することを示しましたClin Nutr. 2005 Dec; 24(6): 979-87)。

  16人の床ずれ(ステージ2、3、または4)(注)の入院患者(年齢37〜92歳)に、通常の病院食、通常の病院食+高たんぱくエネルギーサプリメント、または通常の病院食+高たんぱくエネルギーサプリメント(アルギニン9g、ビタミンC500mg、および亜鉛30mgを含む)を毎日摂らせました。そして、3週間の間毎週食事の状況、身体計測、生化学検査、および床ずれの状態(床ずれの潰瘍の大きさと重症度:PUSH (Pressure Ulcer Scale for Healing) tool;0は完全に治癒、17は最も重症)を測定しました。
  その結果、アルギニン(+ビタミンC+亜鉛)を摂取した患者だけが明らかに床ずれが改善しました。そして、PUSH値は治療前の9.4±1.2から治療後(3週間後)の2.6±0.6へ顕著に改善しました(P<0.01で統計的に有意)。その他の検査値には異常は見られませんでした。
  このように、アルギニン(+ビタミンC+亜鉛)を摂取することで明らかに床ずれが改善することが示されました。

(注)床ずれのステージ
ステージ1:皮膚が赤くただれたようになる。
ステージ2:皮膚の表面に傷や潰瘍ができる。水疱や浅いくぼみができる。
ステージ3:筋肉にまで達する深い傷やくぼみができる。
ステージ4:骨にまで達する深い傷やくぼみができる。骨髄炎や敗血症性関節炎が起こることがある。
 


ABrewerらは、アルギニンが床ずれの治癒期間を短縮することを明らかにしました(J Wound Care. 2010 Jul; 19(7):311-6)

  18人の床ずれの患者(基礎疾患は脊髄損傷)にアルギニンを摂取させ(1日9gのアルギニンを摂取)(アルギニングループ)、床ずれが完全に治癒する(治る)までの期間をアルギニンを摂取していない患者(17人)(コントロールグループ)と比較しました。治療に入る前のアルギニングループとコントロールグループの間には基礎値(年齢、男性と女性の比率、障害レベルと期間など)に差はありませんでした。平均の床ずれ治癒期間はアルギニングループでは10.5週とコントロールグループ(平均床ずれ治癒期間は21週)のほぼ半分に短くなりました。医学文献から導かれた予想治癒期間と比較しますと、アルギニンの摂取によって床ずれの治癒期間は明らかに短縮されることが示されました(カテゴリー2の患者ではアルギニングループの平均治癒期間は5.5週で、医学文献から導かれた予想治癒期間は13.4週。カテゴリー3の患者ではアルギニングループの平均治癒期間は12.5週で、医学文献から導かれた予想治癒期間は18.2週。カテゴリー4の患者ではアルギニングループの平均治癒期間は14.4週で医学文献から導かれた予想治癒期間は22.1週)。これらの結果から、床ずれの治療にアルギニンは優れた効果を示すことが明らかとなりました。


BDesnevesらは、床ずれの治療に、より低用量のアルギニンでも高用量のアルギニンと同等の効果があることを示しました(J Wound Care. 2012 Mar; 21(3):150-6)

  現在、アルギニンの摂取量が1日9gの場合床ずれに効果を示すことが文献で報告されていますが、より少ない摂取量で効果を示すかどうか検討されました。床ずれのカテゴリー2〜4の入院患者23人を、アルギニンの1日摂取量4.5gのグループと9gのグループに分け、それぞれのアルギニンの量を3週間摂取させました。床ずれの状態(床ずれの潰瘍の大きさと重症度:PUSH (Pressure Ulcer Scale for Healing) tool;0は完全に治癒、17は最も重症)は毎週測定されました。患者の基礎値については、グループ間で、年齢、性、BMI、ヘモグロビンレベル、アルブミンレベル、糖尿病歴などに有意な違いはありませんでした。アルギニンの摂取によって明らかに床ずれが改善しましたが、摂取量が4.5gのグループと9gのグループの間に治療効果に差は認められませんでした。栄養良好の患者よりも栄養不良の患者の方がアルギニンの治療効果が高いことが示されました。このようにアルギニンの1日摂取量が4.5gでも9g摂取と同等の効果が見られることが示されました。


(解説)
  床ずれは、皮膚が圧迫されて血液が流れにくくなり、皮膚、その下の組織(皮下組織)、ときには筋肉までもが壊死(体の細胞や組織が死んだ状態)してしまう病気で、褥瘡(じゅくそう)ともいいます。長期間寝たきりになったときなど、皮膚の一定の個所が圧迫され続けると起こります。特に高齢者では動脈硬化などで血液の流れが悪くなっていることが多いので起きやすくなります。特に起きやすい場所は、後頭部、肩、肩甲骨部、ひじ、尾てい骨上部、大腿部、かかとなどです。最初、赤くただれたようになり、ついで傷や潰瘍ができます。さらに進行すると筋肉や骨にまで達します。床ずれを防ぐには少なくとも2時間おきに体の位置を変える必要があります。また、マッサージは血液の流れを良くするために効果的です。進行した潰瘍の治療は、壊死部の外科手術などによる除去が行われます。薬物による治療には、血液の流れを促進する薬剤(血行促進剤、血管拡張剤)や抗菌剤(細菌感染を治療するため)が使われます。
  アルギニンは、皮膚や筋肉など組織の血流増加、免疫強化、成長ホルモンの分泌促進などの働きを介して、傷や潰瘍の治癒促進、感染症の予防改善などにより、床ずれを強力に予防改善することが期待できます。上記の文献@〜Bはそのことを臨床試験で明らかにしました。
  文献@ではビタミンCと亜鉛をアルギニンと一緒に摂取していますが、ビタミンCはコラーゲンの生成促進や抗酸化作用で、亜鉛は皮膚の再生促進、菌の侵入阻止作用などでアルギニンの働きを助けているものと考えられます。しかし、文献AおよびBからは、床ずれの治療に必ずしもビタミンCや亜鉛は必要ではないことを示しています。
 
 

●アルギニンを摂取する場合の注意点
  これについては『アルギニンの安全で効果的な飲み方』、および『アルギニンサプリメントの正しい選び方』をご覧ください。


アルギニンについてもっと詳しく知りたい方は『アルギニンで若返る!』をご覧ください。