アルギニンの欠点を克服し、超強力・超持続を目指した、進化型「スーパーアルギニンサプリメント」の開発の試み
=長寿、健康長寿、若返り、老化・老化病抑制も夢ではない、究極のスーパーアンチエイジングサプリの創製を目指して=

〚詳細編〛




 《まとめ》

アルギニンは、アンチエイジング効果(寿命延長美肌効果など)を示し、老化や老化病や体の異常〔肥満メタボリックシンドローム糖尿病糖尿病合併症動脈硬化心血管病ED高血圧症心不全認知症感染症骨粗鬆症がん不妊症妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)消化性潰瘍肝障害ひどい慢性の痛み貧血床ずれ子供の低身長など〕を強力に予防・改善する画期的成分です。しかも、体に必要なアミノ酸で生体成分ですので、安全性の問題はほとんどありません。(経口の医薬品はほとんどが化学合成物質で、体にとっては異物ですので、重篤な場合死に至る副作用が避けられませんが、アルギニンは私たちの体に欠かすことのできないアミノ酸で生体成分ですので副作用の心配はほとんどありません。安心してお飲みいただけます)。


◎これらのアルギニンの超健康効果は、そのアミノ酸効果、成長ホルモン効果、一酸化窒素(NO)効果、糖化抑制効果(抗AGE)、抗酸化効果、免疫増強効果などによって行われると考えられます。

◎例えば、「アルギニン」は、一酸化窒素(NO)を介して、老化や若返りの二大説である、遺伝子説と摩耗説の両方にアタックし、長寿や老化および老化病の抑制が期待できます。すなわち、アルギニンはNOを介して、テロメラーゼを活性化してテロメアを伸ばし、
長寿遺伝子のサーチュイン遺伝子を活性化し、これらの働きによって、老化や老化病を抑制して、長寿や若返りが期待できます(詳しくはアルギニン(NO)は、テロメラーゼおよび長寿遺伝子(サーチュイン)を活性化し、寿命を延ばし、
老化および老化病を抑制し、若返りが期待できる超画期的成分です!!」をご参照ください)。

◎このようなアルギニンのスーパーメディシン的な素晴らしい働きと安全性の高さは、体を健康に保つために無くてはならない生体成分のアルギニンだからこそ可能であり、現在までの(そして恐らくはこれからも)医薬品ではとても望むことはできません(医薬品は特定の病気に対する治療効果を目的として開発されるため、一つあるいは多くても数種の病気にしか治療効果は期待できません。また、特に経口剤はほとんどが化学合成物質ですので、副作用は避けることはできず、死に至るような重篤な副作用を含め、安全性面で多くの問題があります)。また、アルギニンは、サプリメントとしても、その効果を示す人や動物等でのデータの豊富さや効果の強力さなどの点から、これまで見出されてきたサプリメント成分の中で最高の成分と考えられます。

◎そこで、私たちは、長寿や若返り、老化や老化病の予防・改善を目的として、健康な人から病気で悩む人まで安心して摂取できる、本格的アルギニンサプリメントの開発を企図してきました。しかし、その際いくつかの問題点として、アルギニンのアルカリ性による消化管障害、あるいは味のまずさによる飲みにくさなどがあげられました。そして、それらを解決したサプリメントの開発に2003年初めて成功し、本邦初の本格的アルギニンサプリメントとして販売してきました(詳しくは「副作用がなく大変飲みやすい『アルギニンサプリメント』の開発」をご参照ください)。

◎しかしながら、その後のアルギニンに関する多くの研究によって、アルギニンにはさらにいくつかの大きな問題点があることが分かってきました。
第一の問題点は、アルギニンは、経口摂取時の生物学的利用率(体に利用される割合)が悪く〔摂取したアルギニンの2~5割しか体に利用されません。つまり5~8割は代謝(分解)されます〕、持続性が短い(4時間程度。つまり1日6回程度は摂取する必要があると考えられます)ということです。
第二の問題点は、アルギニンは、アルギナーゼによって分解されるため、アルギナーゼ活性が高い場合〔老化、メタボリックシンドローム、糖尿病、高血圧、循環器病(動脈硬化、心筋梗塞、脳卒中、糖尿病性血管障害、心不全、肺動脈高血圧症、末梢血管障害、EDなど)、喘息、肝障害、妊娠高血圧症候群、感染症、がんなどにおいて、あるいは長期間の摂取(例えば3ヶ月程度以上など)や大量摂取(例えば1日3g程度以上など)などにおいて〕、アルギニンの体内濃度が低下し、アルギニンの働きが低下したり、消失したり、場合によってはかえって健康障害を起こしたり、病状を悪化させたりします。
第三の問題点は、アルギニンの最も重要な作用として、アルギニンがNOS(一酸化窒素合成酵素)の働きによって変化を受け生成するNO(一酸化窒素)による働きがありますが、NOSは活性酸素の影響を受けやすく、酸化ストレス(活性酸素)が亢進しているとき〔食べ過ぎ、運動不足、ストレス、喫煙などのライフスタイルの乱れ、あるいは老化や老化病(例えば、肥満、メタボリックシンドローム、高血糖、高血圧、脂質代謝異常、糖尿病、加齢黄斑変性症、動脈硬化、心筋梗塞、免疫異常、アルツハイマー病、がんなど)、パーキンソン病、喘息、関節リウマチ、腎炎など〕、NOSの活性が低下するために、NOの生成が減少したり、NOの代わりに活性酸素(スーパーオキシド)を生成したりしますので、アルギニン(NO)の働きが減少したり、消失したり、生成した活性酸素によってかえって健康が損なわれたり、病状が悪化したりする可能性があります。

第一の問題点は、アルギニンと共にシトルリン(1:1の比率で)を一緒に摂取することでこれを克服することが可能と考えられます。アルギニン単独で摂取した場合に比べ、アルギニンと共にシトルリン(1:1の比率で。シトルリンの摂取量が1000mgの場合)を一緒に摂取することで、アルギニンの血中濃度はより高く(3倍程度以上)、そして血中濃度持続時間はより長く(3倍程度)なることが分かりました。つまり、アルギニンは、生物学的利用率が悪くて持続が短いために、大量にそして頻回に(1日に6回程度以上)摂取しなければなりませんでしたが、アルギニンと共にシトルリン(1:1の比率で)を一緒に摂取することで、より少量で(3分の1程度以下)、より持続が長くなる(1日に2回程度ですむ)ことが期待できます。

◎第二の問題点は、アルギナーゼ阻害剤のシトルリンを用いることでこれを克服することが可能と考えられます。人に実際に用いる場合、シトルリンの摂取量は1日1000mg程度あるいはそれ以上が望ましいと考えられます。アルギニンとシトルリンの比率は1:1が望ましいと考えられます。すなわち、アルギニン+シトルリン(1000mg+1000mg)あるいはそれ以上を毎日摂取することによって、アルギニン単独摂取に比べ、長期間にわたって効果が減弱することなく〔アルギニン単独では長期間(例えば3ヶ月程度以上)の摂取によって効果が減弱したり消失する可能性が高い〕、より強力に(アルギニン単独ではアルギナーゼによって分解されるため、効果が弱くなったり、消失したり、かえって悪化する可能性があります)、寿命延長や老化および老化病の抑制が可能になることが期待できます。

◎第三の問題点は、
抗酸化剤のビタミンCを用いることでこれを克服することが可能と考えられます。人に実際に用いる場合、ビタミンCの摂取量は1日100mg程度が望ましいと考えられます。ビタミンCをアルギニンと一緒に摂取することで、アルギニン単独に比べて、NOを介する働きは相乗的に活性化されることが期待できます(例えば約2倍の活性増強効果)。老化や老化病のほとんどは、アルギニンによって予防や改善が期待できますが、その作用の大部分はNOを介していること、老化や老化病では酸化ストレスが亢進していることなどから、寿命延長や老化および老化病の抑制を期待してアルギニンを用いる場合、アルギニン単独ではなくビタミンCを一緒に摂取することが、その効果を高めるために必須のことと考えられます。


◎以上の検討結果を基に、「アルギニンの欠点を克服し、超強力・超持続を目指した、進化型『スーパーアルギニンサプリメント』」の開発を試みました。その結果、アルギニン(1000mg)、シトルリン(1000mg)、アスコルビン酸2-グルコシド(安定・持続型ビタミンC誘導体)(200mg)(ビタミンC100mgに相当)、ビタミンE(50mg)、コエンザイムQ10(30mg)を基本配合とし、これにアルギニンのアルカリ性の中和剤としてクエン酸を加え、さらにダイエットや食生活の乱れた方への対策としてビタミンB類(ビタミンB
、B、B、B12
、ナイアシン、葉酸、パントテン酸を加え、また、寝たきりを防ぐための骨対策としてビタミンDとカルシウムを、男性のために亜鉛を加え、最後に味を調え飲みやすくするため天然甘味料のエリスリトールを加え、顆粒状のサプリメントとしました(特許出願中)。そして、この配合量を1日の基本量としました。なお、体調などに合わせて摂取量は増減します。

◎ここで開発した進化型『スーパーアルギニンサプリメント』は(開発におよそ1年8ヶ月程度かかりました)、アルギニンの大きな問題点を克服し、超強力・超持続で、長期間効果が期待できる、従来のアルギニンサプリメントを大きく進化させた、寿命延長や若返り、および老化・老化病抑制のための画期的スーパーアンチエイジングサプリメントであると考えられます。





 【目次】


アルギニンの欠点を克服し、超強力・超持続を目指した
進化型「スーパーアルギニンサプリメント」の開発の試み



1.アルギニンの問題点

①第一の問題点:アルギニンは経口投与(摂取)時の生物学的利用率が悪く、持続性が短い


②第二の問題点:アルギニンは、アルギナーゼによって分解されるため、アルギナーゼ活性が高い場合はアルギニンの体内濃度が低下します

③第三の問題点:アルギニンの最も重要な作用として、アルギニンがNOS(一酸化窒素合成酵素)によって変化を受け生成するNO(一酸化窒素)による働きがありますが、NOSは活性酸素の影響を受けやすく、活性酸素によってその活性が低下します


2.アルギニンの問題点の克服

①第一の問題点の克服によって⇒アルギニンは生体での利用率が高まり、持続性が長くなることで、より少ない量でより長く効果が持続することになります

②第二の問題点の克服によって⇒アルギニンの分解が抑えられ、アルギニンの効果が十分に発揮できます

第三の問題点の克服によって⇒NOの生成が促進され、より高い効果が期待できるようになります

3.アルギニンの欠点を克服し、超強力・超持続を目指した、進化型「スーパーアルギニンサプリメント」の開発の試み


4.お知らせ(ホーページ責任者、参考図書)



  【お問合せ先】
本ページおよびアルギニンに関するお問い合わせは本ページ責任者古賀までお願いします(Eメール:kogahrs555@nifty.com



上記以外のアルギニンの働きについてお知りになりたい方は
アルギニンで若返る!』をご覧ください。

 








アルギニンの欠点を克服し、超強力・超持続を目指した、進化型「スーパーアルギニンサプリメント」の開発の試み

  
アルギニン(NO)」は、老化や若返りの二大説である遺伝子説と摩耗説の両方にアタックし、長寿や若返り、老化・老化病の抑制が期待できる超画期的成分です。すなわち、アルギニン(NO)は、遺伝子説の面からはテロメラーゼを活性化してテロメアを伸ばし、長寿遺伝子のサーチュイン遺伝子を活性化します。また、摩耗説の面からは活性酸素や糖化を抑制します。このようにして、アルギニン(NO)は、老化や老化病を抑制して、長寿や若返りが期待できる、画期的アンチエイジング成分です。加えて、アルギニンは生体成分(体に必要なアミノ酸)ですので、安全性は高く副作用の心配はほとんどないと考えられます。アルギニンは、また、様々な老化や老化病や体の異常(肥満メタボリックシンドローム糖尿病糖尿病合併症動脈硬化心血管病ED高血圧症心不全認知症感染症骨粗鬆症がん不妊症消化性潰瘍肝障害子供の低身長など)を予防・改善します()。(詳しくは「アルギニン(NO)は、テロメラーゼおよび長寿遺伝子(サーチュイン)を活性化し、寿命を延ばし、老化および老化病を抑制し、若返りが期待できる超画期的成分です!!(レスベラトロールやTA-65よりすごい!?アルギニン)をご参照ください
  このようなアルギニンのスーパーメディシン的な素晴らしい働きと安全性の高さは、体が正常に機能するために、そして健康を保つために無くてはならない生体成分のアルギニンだからこそ可能であり、現在までの(そして恐らくはこれからも)医薬品ではとても望むことはできません(医薬品は特定の病気に対する治療効果を目的として開発されるため、一つあるいは多くても数種の病気にしか治療効果は期待できません。また、特に経口剤はほとんどが化学合成品ですので、副作用は避けることはできず安全性面で問題があります)。また、アルギニンは、サプリメントとしても、その効果を示す人や動物等でのデータの豊富さや効果の強力さなどの点から、これまで見出されてきたサプリメント成分の中で最高の成分と考えられます。

  そこで、私たちは、長寿や若返り、老化や老化病の予防・改善を目的として、健康な人から病気で悩む人まで安心して摂取できる、本格的アルギニンサプリメントの開発を企図しました。しかし、その際、最初に出てきたいくつかの問題点として、アルギニンのアルカリ性による消化管障害、あるいは味のまずさによる飲みにくさなどがあげられました。そして、それらを解決したサプリメントの開発に2003年初めて成功し、本邦初の本格的アルギニンサプリメントとして発売することができました(詳しくは「副作用がなく大変飲みやすい『アルギニンサプリメント』の開発」をご参照ください)。


  しかしながら、その後のアルギニンに関する多くの研究の進展に伴って、アルギニンにはさらにいくつかの大きな問題点があることが分かってきました。以下、アルギニンの問題点を列挙し、その解決法について示します。そして、それをもとにして、「
アルギニンの欠点を克服し、超強力・超持続を目指した、スーパーアルギニンサプリメントの開発の試み」について述べたいと思います。



1.アルギニンの問題点


  近年のアルギニンに関する多くの研究によって、アルギニンを寿命延長、若返り、老化・老化病抑制のため、長期間(あるいは半生や一生)摂取し続けていくためには、いくつかの重要な問題点があることが明らかになってきました。そのため「アルギニンの問題点を克服し、超強力・長持続を目指したスーパーアルギニンサプリメント」を開発するには、アルギニンの何が問題で、どこをどうすれば超強力で長持続なスーパーアルギニンサプリメントに近づくことができるかを解明しなければなりません。では、アルギニンをサプリメントとして摂取する際に何が問題なのでしょうか。現在特に問題となっているアルギニンの問題点として以下の3点があげられます。

①アルギニンは、経口投与(摂取)時の生物学的利用率1)が悪く、持続性が短い、
②アルギニンは、アルギナーゼによって分解されるため、アルギナーゼ活性が高い場合はアルギニンの体内濃度が低下し、そのため、アルギニンの働きも低下したり、消失します、
③アルギニンの最も重要な作用として、アルギニンがNOS(一酸化窒素合成酵素)によって変化を受け生成するNO(一酸化窒素)による働きがありますが、NOSは活性酸素の影響を受けやすく、活性酸素によってその活性が低下します、


などがあります。
  そのため、これら3つの問題点を解決することによって、

①アルギニンは生体での利用率が高まり、持続性が長くなることで、より少ない量でより長く効果が持続することになります。
②アルギニンの分解が抑えられ、アルギニンの効果が十分に発揮できます。
③また、NOの生成が促進され、より高い効果が期待できるようになります。


すなわち、
より少ないアルギニンでより高い効果が長期間続くことが期待できることになります。
  では、これらの問題点についてより詳しく述べたいと思います。

①第一の問題点:アルギニンは経口投与(摂取)時の生物学的利用率が悪く、持続性が短い

  先ず、第一の問題点「アルギニンは経口投与(摂取)時の生物学的利用率1)が悪く、持続性が短い」について考えてみましょう。

  アルギニンは、動物(豚、ラットなど)において経口投与時の生物学的利用率1)は60%前後と報告されています2)。また、人においてはそれは20~50%と報告されています4)。つまり、経口的に投与されたアルギニンの4~8割(動物では4割、人では5~8割)は腸や肝臓で代謝(分解)され、実際体で利用されるのは2~6割(動物では6割、人では2~5割)に過ぎないことになります。ではこの代謝(分解)はどうして起こるのでしょうか。この主な理由は腸におけるアルギナーゼと考えられています。すなわち、腸に存在するアルギナーゼが、吸収の過程においてアルギニンを代謝(分解)するために生物学的利用率が低下します図1)。一方、新生児期の豚におけるアルギニンの生物学的利用率は92%と高率でした。この理由として、新生児期の豚の小腸ではアルギナーゼの活性がないため、腸で吸収されたアルギニンはほとんど代謝(分解)されることなく全身の循環血液中に移行し体に利用されることになります。なお、アルギナーゼは、アルギニンをオルニチンと尿素に代謝(分解)します。オルニチンはさらにポリアミン、プロリンやグルタミン酸に代謝されます8)

  では次に、アルギニンの経口投与(摂取)時持続性が短い点について見てみましょう。アルギニンは、動物(豚、ラット)において、経口投与した時、血中濃度はほぼ5時間以内に投与前値に戻りました2)。また、人においても、経口投与時の血中濃度はほぼ4~6時間程度で投与前値に戻りました(Biosci Biotechnol Biochem, 2016 Sep 26; 1-4、 および文献)。このことは、アルギニンを経口投与した場合、血中濃度を高く維持するためには(一般に薬物等において、血中濃度の高さとその効果は相関すると考えられています)、少なくとも、4~6時間ごとに摂取する必要がある(すなわち1日に4~6回)と考えられます。1日4~6回摂取といいますと、これを守るということは現実的に困難です。薬を1日3回飲むということさえ、飲み忘れが多いということを経験されている方は多いと思います。なお、持続性が短いということは、アルギニンは体による代謝・排泄などによる処理速度(クリアランス)が速いということを意味します。

  では、何らかの方法(例えばアルギナーゼを抑制すること)でアルギニンの生物学的利用率を上げたり、何らかの方法でアルギニンの持続性を長くすることができたら、人においてはアルギニンの生物学的利用率は2~5倍高くなり、摂取回数も1日1~2回で済むようになるかもしれません。すなわち、例えば、1日2~10g程度のアルギニンを4~6回程度に分けて飲まなければならなかったのが、1日1~5g程度(生物学的利用率が2倍になった時)ないし0.4~2g程度(生物学的利用率が5倍になった時)のアルギニンを1~2回程度に分けて飲めばよくなるかもしれません。そうなればこれは画期的な改良であり、革新的なアルギニンサプリメントになるでしょう。

図1.アルギニンの腸アルギナーゼによる代謝(分解)(人の場合)(イメージ図)

              

口から摂取されたアルギニンは、腸から吸収され、全身の循環血液中に移行する過程において、主に腸のアルギナーゼによって分解され、全身の循環血液中に移行するのは、摂取した量の20~50%に過ぎません。



②第二の問題点:アルギニンは、アルギナーゼによって分解されるため、アルギナーゼ活性が高い場合はアルギニンの体内濃度が低下します

  上に述べましたように、アルギナーゼは、腸においてアルギニンを分解し、アルギニンの生物学的利用率を下げ、利用できるアルギニンの量を減少させますが、アルギナーゼは、腸細胞以外にも至る所に存在することが知られています。アルギナーゼは、アルギニンの体内濃度を下げ、組織や細胞で利用できるアルギニンの量を低下させるため、アルギニンの働きに大きな影響を与えます(図2)。そのため、アルギナーゼ活性の上昇が種々の病気と関連性があることが明らかにされてきています101112

  アルギニンは、タンパク質の原料になるだけでなく、体の健康を保つため、あるいは病気にならないため、体内で様々な生理機能に関わっていますので1314、アルギナーゼによりアルギニンが分解され、体内濃度が低下したり枯渇することになれば、健康が保たれなくなり、様々な病気の原因になったり、ついには体が破壊されたり、死に至る可能性があります。現在までにアルギナーゼ活性上昇が深く関わっていると考えられる病気として、例えば、メタボリックシンドローム、糖尿病、高血圧、循環器病(動脈硬化、心筋梗塞、脳卒中、糖尿病性血管障害、心不全、肺動脈高血圧症、末梢血管障害、EDなど)、喘息、肝障害、妊娠高血圧症候群、感染症、がん、老化などがありますが、今後さらに多くの病気でアルギナーゼとの関係が明らかにされていくでしょう101112

  これらの病気は、これまでアルギニンの不足が主な原因の一つと考えられてきました。実際、アルギニンの投与によってこれらの病気の予防・改善に効果を示すことが知られています1314。一方、近年、これらの病気のアルギニン不足の主な原因の一つとして、アルギナーゼ活性の上昇があることが明らかにされてきました101112。そのため、病気の状態によっては(アルギナーゼ活性が高い時など)、アルギニンの投与によっても十分な効果が示されなかったり、効果が消失したり、逆に有害作用が出現したりすることも報告されています。それに対して、アルギナーゼを阻害することで、アルギニンの効果がより強くなったり、効果の減弱や消失が抑制されることが期待できます101112。また、上に述べましたように、腸のアルギナーゼを阻害することで、アルギニンの血中濃度(生物学的利用率)の上昇と共に効果の増強も期待できます。

  例えば、循環器系の病気において、アルギニンの投与が試みられ、動脈硬化や心血管病(狭心症、閉塞性動脈硬化症など)の予防・改善に強力な効果が得られることが示されています1314(例えば「アルギニンは動脈硬化および心血管病を予防・改善します!」をご参照ください)が、その多くは急性投与(短期投与~3ヶ月程度)の結果であり、長期投与(例えば3ヶ月程度以上)においては、効果が見られないか、逆に有害作用が現れる例も報告されてきています151617

  いくつかの例をあげますと、Cookeらは、間欠性跛行(閉塞性動脈硬化症)の患者に2週間アルギニン(1日6.6gと3.3g)を経口摂取させ(二重盲検試験)、その後さらに8週間摂取させた(オープン試験)ところ、歩行距離とQOL(生活の質)が改善することを見出しましたVasc. Med, 5, 11(2000))(「アルギニンは動脈硬化および心血管病を予防・改善します!」をご参照ください)その結果を受けて、Cookeらは、間欠性跛行(閉塞性動脈硬化症)の患者において、アルギニンの摂取量と効果の関係、およびより長期間の摂取の効果を調べるために、アルギニンの少量から高用量を12週間にわたって摂取させ、効果を検討しました(無作為化二重盲検プラセボ対照試験)。患者(72人)を4グループに分け、1日に3g、6g、または9gのアルギニン(1日3回に分け摂取)、またはプラセボを摂取させました。摂取期間は12週間でした。試験はトレッドミル法で行い、試験前と試験後の歩行距離を測定しました。その結果、アルギニンの摂取による歩行距離の有意な改善は認められませんでしたが、最大歩行距離において、3g摂取群で改善傾向が見られました。この改善傾向は摂取量が多くなるほど低下しました。アルギニンの摂取によって効果が見られない原因を調べるために、アルギニンの血中(血漿中)濃度と尿中ナイトレート(硝酸塩)(アルギニンからNOSの作用によって生成するNOの生成量を測定する指標の一つ)を測定しました。その結果、アルギニンの摂取前と後(12週後)でアルギニンの血中濃度と尿中ナイトレートに有意な変化はありませんでした(全ての摂取群において)(このことはアルギニンを摂取しているにもかかわらず、血液中にアルギニンがほとんど増加せず、また、NOの生成も増加しなかったことを示しています)。アルギニンによる副作用は特にありませんでした。(Vasc Med, 10, 265(2005))。さらに、Cookeらは17、上記試験で、最も効果がありそうに見えたアルギニン1日3g摂取のより長期間の効果を調べるために、間欠性跛行(閉塞性動脈硬化症)の患者(133人)を二つに分け、一方のグループにアルギニン(1日3g)(アルギニン群)を、他方のグループにプラセボ(プラセボ群)を6ヶ月間摂取させ、歩行距離の改善程度を検討しました(無作為化二重盲検プラセボ対照試験)。その結果、アルギニンの6ヶ月の摂取によって、アルギニン群ではプラセボ群より優れた効果は認められず、かえって低い効果しか認められませんでした。この理由を明らかにするため、NOの生成量を見てみますと、アルギニン群のNOの生成量はプラセボ群より明らかに低下していました。副作用については、アルギニン群とプラセボ群の間に差はありませんでした。

  一方、急性心筋梗塞の患者の経過観察時における、標準治療へのアルギニン付加が、病状を改善するかどうかの検討がなされました16)。急性心筋梗塞の患者(153人)を二つに分け、一方のグループにアルギニン(1日9g)を、他方のグループにプラセボを6ヶ月間摂取させました無作為化二重盲検プラセボ対照試験)。その結果、プラセボに比べ、アルギニンの摂取によって血管や心機能に対し改善効果は見られませんでした。その原因を調べるために、アルギニンの血漿中(血中)濃度を調べたところ、アルギニンの高用量(1日9g)摂取にもかかわらず、アルギニングループの6ヶ月後のアルギニンの血漿中濃度は、プラセボとほとんど変わりませんでした(つまり摂取したアルギニンはほとんど分解されていました)。

  これらの長期投与例(臨床試験)では投与期間は3~6ヶ月で、アルギニンの血中濃度(3~6ヶ月後)は、アルギニンを十分量(1日3~9g)投与しているにもかかわらず、アルギニンを投与していないプラセボとほとんど変わらないとされています。また、アルギニンの働きの指標の一つであるNO生成の増加は見られませんでした。

  それでは、アルギニンの投与期間が、その血中濃度や効果にどういう影響を及ぼすかを、動物を用いて検討された結果をお示しします15)。ウサギ(ニュージーランドホワイト種。雄)に、標準食、標準食とアルギニン(飲水中に2.25%含有。以下同様)、高コレステロール食、または高コレステロール食とアルギニンをそれぞれ摂取させました。アルギニンの血漿中(血中)濃度は、正常対照動物の場合(116μmol/L)に比べ、試験開始後1週間の時点で、標準食とアルギニンの場合3.7倍(424μmol/L)に、高コレステロール食とアルギニンの場合4.5倍(519μmol/L)にそれぞれ増加しました。ところが、7週間後には、
標準食とアルギニンの場合アルギニンの血漿中(血中)濃度は211μmol/Lに、高コレステロール食とアルギニンの場合188μmol/Lと、短期投与の場合に比べ半分以下に減少しました。次に、より長期間の摂取について検討されました。ウサギ(雄、雌)に高コレステロール食とアルギニンを14週間摂取させたときアルギニンの血漿中(血中)濃度はさらに減少し、高コレステロール食のみを摂取させた場合とほぼ同じでした(高コレステロール食のみの雄と雌のアルギニン血漿中濃度はそれぞれ85μmol/Lと99μmol/L、高コレステロール食とアルギニンの場合の雄と雌のアルギニン血漿中濃度はそれぞれ100μmol/Lと112μmol/Lで両群間に統計的な有意差はありませんでした。また、性差も見られませんでした)。つまり、アルギニンを摂取させているにもかかわらず、摂取開始後14週目にはアルギニンの血中濃度の上昇は見られませんでした。
  次に、アルギニンの効果について検討されました。アルギニンの効果は、ウサギの後肢の血管を用いて検討されました。血管にアセチルコリンを注入すると血管は拡張しますが、これは内皮細胞においてNOSが活性化されNOが生成しそれによって血管が拡張するからです。従って、内皮細胞が障害を受けたり、アルギニンが不足しますと、アセチルコリンを注入しても血管は拡張し難くなったり、拡張しなくなります。ウサギ(雄)に高コレステロール食を7週間または14週間摂取させますと、アセチルコリン注入による後肢の血管拡張反応性は、標準食を摂取させた場合に比べ明らかに(統計的に有意に)低下しました(このことは、高コレステロール食の摂取によって内皮細胞が障害を受けていることを示しています)。一方、高コレステロール食とアルギニンを7週間摂取させた場合、アセチルコリン注入による血管拡張反応性は標準食を摂取させた場合とほとんど変わりませんでした(このことは、アルギニンの摂取によって内皮細胞の障害がほぼ完全に抑制されたことを示しています)。しかしながら、高コレステロール食とアルギニンを14週間摂取させた場合、アセチルコリン注入による後肢の血管拡張反応性は、標準食を摂取させた場合より明らかに(統計的に有意に)低下し、高コレステロール食のみを14週間摂取させた場合とほとんど同じでした(このことは、アルギニンの摂取開始後14週の時点で、アルギニンの内皮細胞保護作用はほぼ完全に消失したことを示しています)。雌においても結果は同様でした。
  次に、高コレステロール食による動脈硬化の進行に対するアルギニンの効果について検討されました。ウサギ(雄)に高コレステロール食とアルギニンを7週間摂取させた場合、下行大動脈の動脈硬化の程度(内膜表面積の12%)は、高コレステロール食のみを7週間摂取させた場合(28%)に比べ半分以下でした。また、14週間高コレステロール食のみを摂取させた場合、動脈硬化はさらに進行しました(42%)が、高コレステロール食とアルギニンを14週間摂取させた場合、動脈硬化の程度(16%)はわずかに進行しただけでした。
  これらの結果は、本試験条件下において、標準食の摂取(正常状態)か高コレステロール食の摂取(高コレステロール血症の状態)かにかかわらず、アルギニンの摂取によって増加したアルギニンの血中濃度は、摂取期間の長さととも徐々に低下すること、7週目にはアルギニンの血中濃度は摂取初期の半分程度まで低下するが、その濃度においてはまだアルギニンの効果(血管拡張性)を示すのに
十分な濃度であること、14週目には、アルギニンの血中濃度の増加も効果(血管拡張性)も消失することを示しています。また、アルギニンの抗動脈硬化作用(アルギニンから生成したNOが重要な働きを示します)に関しては、7週目のみならず、14週目も効果が見られることを示しています。14週目にはアルギニンの血中濃度の増加が見られないのに、抗動脈硬化作用が見られたということは、7週目あるいは恐らくそれより少し後までのアルギニンの効果が14週目まで持ち越された結果と考えられます。〔これは、男性に比べ女性は心血管病(主に動脈硬化が原因)の発症が10年以上遅れますが、それは女性ホルモンに抗動脈硬化作用(女性ホルモンの抗動脈硬化作用にはNOが重要な働きをします)があり、閉経で女性ホルモンの分泌量が大幅に減少しても、生殖期間中(女性ホルモンが大量に分泌されている期間)の効果が貯金として持ち越されたために生じたと考えられること(日産婦誌、2002年、54巻、N-246)と、同様に解釈できます。しかしながら、心血管病の発生率を見てみますと、女性ホルモンの影響がある(あるいは残っている)50歳代までは、女性の発生率は男性の半分以下ですが、女性ホルモンの影響が少なくなる(あるいはほぼなくなる)60歳代以降になると急速に男性の発生率に近づき、75歳を過ぎると心血管病の発生率に男女の差がほとんどなくなることから、持ち越し効果も一定期間後は徐々に消失するものと考えられます。一方、男女の平均寿命は、女性の方が5歳以上長いですが、心血管病の発症の遅れが寿命の差に大きく影響しているものと考えられます。つまり、心血管病(心疾患、脳血管疾患など)は、女性の死亡率の1/3近くを占めるため、その発症が遅れることは寿命の延長に大きく影響するものと考えられます。また、アルギニンの効果についても、長期間の摂取によって効果が示されることがいくつか報告されていますが13、これも持ち越し効果の可能性があります。しかしながら、この効果も一定期間後は徐々に消失する可能性があります〕。

  これらの結果はどういうことを示しているのでしょうか?アルギニンの短期投与(恐らく長くて3ヶ月程度まで)では、アルギニンの血中濃度の上昇は認められるのに対し(例えば、文献151819を参照ください)、長期投与(例えば3ヶ月程度以上)ではほとんど認められないということ、および投与期間が長くなるほどアルギニンの血中濃度が低下するということに関して、いくつかの原因が考えられますが、アルギニンの長期投与によってアルギニンの分解が促進されたと考えるのが最も可能性が高いと考えられます。

  アルギニンの短期投与では効果が示されるのに対して、長期投与では効果がほとんど示されないか、場合によっては有害作用が示されることに関して、そのメカニズムが検討されました。Xiongらは20)、人の若い血管内皮細胞(HUVEC)を用いて、アルギニンの濃度と作用時間が内皮細胞にどういう影響を及ぼすかを検討しました。若い内皮細胞に、短時間(30分間)、アルギニン0.1mmol/L(生理学的濃度。通常血液中に存在するアルギニン濃度。体内での合成や食物からの供給やタンパク質の分解によって維持されます)およびアルギニン0.5mmol/L(アルギニンの外部からの摂取によって達成される血中濃度)を作用させました。アルギニン0.1mmol/Lに比べ、アルギニン0.5mmol/Lを作用させた場合、NOの生成は約2.7倍に増加しました。一方、アルギニンを7日間作用させた場合(アルギニンの長期摂取に相当します)、アルギニン0.1mmol/Lに比べ、アルギニン0.5mmol/Lを作用させた場合、NOの生成は半分以下に低下し、eNOS(内皮細胞のNO合成酵素。内皮細胞にあってアルギニンからNOを合成します)も約1/3に低下しました。また、活性酸素(スーパーオキシド)は3倍以上に増加しました。加えて、動脈硬化発症・促進因子(ICAM-1、VCAM-1)が7倍以上に増加しました。さらに細胞の老化の状態を調べますと、アルギニン(0.1mmol/L)を7日間作用させた場合、老化した細胞は全体の約20%であったのに対し、アルギニン(0.5mmol/L)を7日間作用させた場合、老化した細胞はその2倍以上(全体の約50%近く)に増加しました。このことは、内皮細胞にアルギニンを長期間高濃度で作用させることで、内皮細胞障害と老化が促進されていることを示しています
内皮細胞障害や老化は、NO(抗動脈硬化因子)の生成を低下させ、動脈硬化を引き起こす炎症性因子(ICAM-1、VCAM-1など)の生成を増加させ、動脈硬化の発症や進展を促進しますが、実際、アルギニンの高濃度長期間作用によってそれが起こっていることをこの試験は示しています。これらの結果は、アルギニンの短期間の摂取によって、循環器系疾患に対しその有効性が示されていますが、長期摂取の場合は有効性を示さないか、かえって有害であるというこれまでのデータを裏付けるものです。では、このアルギニンの有害作用は何が原因なのでしょうか。
  若い血管内皮細胞(HUVEC)に、アルギニン(0.5mmol/L)を7日間作用させた場合、アルギニン(0.1mmol/L)を作用させた場合に比べ、アルギナーゼ(アルギナーゼII)の発現と活性は、それぞれ約1.9倍と約1.6倍に増加しました。一方、アルギニン(0.5mmol/L)を短時間(30分間)作用させた場合、アルギニン(0.1mmol/L)を短時間(30分間)作用させた場合に比べ、アルギナーゼ(アルギナーゼII)の発現と活性はほとんど変化はありませんでした。

  次に、内皮細胞に、アルギニン(0.5mmol/L)を長期間(7日間)作用させた場合におけるアルギナーゼの関与をさらに調べるために、遺伝子サイレンシングによってアルギナーゼを抑制しました(shRNAによるアルギナーゼIIのノックダウン)。その結果、アルギニンによって増加したアルギナーゼIIの発現は、遺伝子サイレンシングによる抑制によって約1/4に減少しました。それと共に、老化細胞の割合は減少し、eNOSは約2.5倍増加し、NOは約2倍に増加し、活性酸素(スーパーオキシド)は約半分に減少しました。また、ICAM-1とVCAM-1は大幅に減少しました。同様な結果が他の文献でも得られています(例えば文献21)。アルギナーゼは、アルギニンを分解するために、アルギニンの減少によって、eNOSがNOでなくスーパーオキシドを生成することで(eNOSアンカップリング)、細胞を老化させ、炎症性因子(ICAM-1、VCAM-1など)の生成を増加させ、結果的に内皮細胞障害を引き起こすものと考えられます。しかしながら、アルギナーゼIIが、その酵素活性(アルギニンを分解する活性)とは違った経路でeNOSアンカップリングを引き起こす可能性もあります22)

  これらのデータは、アルギニンを短期間摂取した場合には、アルギニンの効果が示されるが、長期間の摂取によってはアルギニンの効果は弱くなったり、消失したり、場合によっては有害作用が現れるという、動物や人でのデータをメカニズム面から支持するものです。また、この場合に、アルギナーゼを抑制することで、長期摂取によるアルギニンの効果が、短期摂取と同様に維持されるということを示唆しています。


  
このように、長寿、若返り、老化・老化病の抑制にアルギニンの効果を強力に、そして長期間発揮し続けるには、アルギナーゼに対する対策は必須のことになります。


図2.アルギニンとアルギナーゼの関係(イメージ図)



摂取したアルギニンは、消化管のアルギナーゼ等により代謝(分解)され、摂取した量の20~50%(人の場合)くらいしか全身の循環血液中に入りません。全身の循環血液中に入ったアルギニンは、全身の組織や細胞に輸送されます。組織や細胞に取り込まれたアルギニンは、アルギナーゼやNOS(一酸化窒素合成酵素)などによって分解されたり変化を受けます。アルギナーゼは、アルギニンをオルニチンと尿素に代謝(分解)します。オルニチンはさらにポリアミン、プロリンやグルタミン酸に代謝されます。一方、NOSは、アルギニンをNO(一酸化窒素)とシトルリンに変化させます。シトルリンはまたアルギニンに変換され再利用されます。NOは、長寿、若返り、老化・老化病抑制に様々な働きを示すため(表.アルギニン(NO)の寿命延長、若返り、抗老化、老化病抑制作用をご参照ください)
、NOが不足すると、寿命が短くなり、老化や老化病が促進されると考えられます。
  アルギナーゼは、体の様々な組織や細胞に存在するため、アルギナーゼ活性が高い場合、アルギニンがNOSに使われる分を少なくし、NOに変換されるのを邪魔すると考えられます。通常の正常な組織や細胞ではアルギナーゼ活性も弱いか中程度と考えられますので、邪魔の程度も大きくないと考えられますが、ある状態〔例えば、老化、糖尿病、高血圧、循環器病(動脈硬化、心筋梗塞、脳卒中、糖尿病性血管障害、心不全、肺動脈高血圧症、末梢血管障害、EDなど)、喘息、肝障害、妊娠高血圧症候群、感染症、がんなどの状態や、アルギニンの長期摂取(例えば3ヶ月程度以上)や大量摂取時(例えば1日3g程度以上)など〕ではアルギナーゼ活性が上昇することが知られており、このような状態では、NO生成のためのアルギニンが不足していると考えられ、それがこれらの病気を引き起こしたり、病気を悪化させたり、NO不足を生じたりしている可能性があります。また、外部からアルギニンを補給しても(たとえ大量摂取しても)、アルギナーゼによってアルギニンが分解されますので、アルギニンの働きが減弱したり消失するものと考えられます。
  
すなわち、寿命延長、若返り、老化・老化病抑制のため、アルギニンを摂取する場合、その働きを十分に発揮させるためには、アルギナーゼ対策は必須のこととなります。



③第三の問題点:アルギニンの最も重要な作用として、アルギニンがNOS(一酸化窒素合成酵素)によって変化を受け生成するNO(一酸化窒素)による働きがありますが、NOSは活性酸素の影響を受けやすく、活性酸素によってその活性が低下します

  アルギニンは、私たちの体にとって様々な重要な働きをしますが(「アルギニンで若返る!」をご参照ください)、中でも最も重要な働きとして、NO(一酸化窒素)を介する作用があります。NOには、それ自体による作用(血管拡張作用など)、テロメラーゼを活性化しテロメアを長くする作用、長寿遺伝子(サーチュイン遺伝子)の活性化作用などがあり、これらの作用によって、NOには、強力な寿命延長、若返り、老化・老化病抑制が期待できます(「アルギニン(NO)は、テロメラーゼおよび長寿遺伝子(サーチュイン)を活性化し、寿命を延ばし、老化および老化病を抑制し、若返りが期待できる超画期的成分です!!」をご参照ください)。

  NOは、NOS(一酸化窒素合成酵素)の働きによってアルギニンから作られるため、アルギニンが不足したり、NOSの活性が低下すると、作られ難くなったり、ほとんど作られなくなったりします。体内でアルギニンが不足する最も大きな原因の一つとして、特別な場合(体内でのアルギニンの合成が低下した場合や、栄養不足などによって食物からタンパク質すなわちアルギニンの摂取ができない場合など)を除いて、アルギナーゼによるアルギニンの分解が重要であることはすでに述べました(「②第二の問題点:アルギニンは、アルギナーゼによって分解されるため、アルギナーゼ活性が高い場合はアルギニンの体内濃度が低下します」をご参照ください)。そこで、ここではNOS活性が低下する場合について述べます。

  血管内皮細胞は、血管の一番内側にある細胞で、血管を正常に保つために非常に重要な働きをしています。その中で最も重要な働きの一つとしてNOの生成があります。血管において、NOは、血管拡張、血小板凝集抑制、動脈硬化の抑制など様々な重要な働きを示しますので、その不足は様々な心血管病(高血圧、メタボリックシンドローム、動脈硬化、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞、末梢血管障害、糖尿病性血管障害、EDなど)の原因になると考えられています(「表.アルギニン(NO)の寿命延長、若返り、老化・老化病抑制作用」をご参照ください)。

  血管でNOが欠乏するメカニズムとしては、eNOS(内皮型一酸化窒素合成酵素)活性の低下、スーパーオキシド(活性酸素の一種)によるNOの分解(この反応によってより強力な酸化力を持つパーオキシナイトライトが生成します)などが考えられます23)。 心血管病の病態においては酸化ストレスの増加が見られ、それがNOの欠乏に関係していると考えられるために、これらのメカニズムに共通の要因として酸化ストレス(活性酸素が増加した状態)が関係している可能性があります。eNOSによってアルギニンからNOが生成されるためには、補因子であるテトラヒドロビオプテリン(BH
)が必須ですが、BHは、酸化によって容易に分解されるという性質があります。BHが不足しますと、eNOSはアルギニンからNOを作ることができず、代わりに酸素から活性酸素のスーパーオキシドを生成します(eNOSアンカップリング)。これによって酸化ストレスはさらに悪化し、病気はさらに進行することになります。また、スーパーオキシドはNOと反応してNOを分解すると共に、さらに酸化力が強いパーオキシナイトライトになります。パーオキシナイトライトはBHを容易に酸化分解しますので、NOの生成はさらに減少し、活性酸素がさらに増加するという悪循環に陥り、病気はさらに進行するということになります23)

  
以上のことから、この悪循環を断ち、NOの生成を促進して、心血管病を抑制したり、強力な寿命延長、若返り、老化・老化病抑制を期待するには、アルギニンを十分に供給し(アルギニンの摂取とアルギナーゼの抑制)、BHの酸化分解を抑制してNOSを活性化する必要があります


図3.NO不足のメカニズムとその改善法


       

NO欠乏の主な原因として、アルギニン不足、NOSの機能障害、および生成したNOのスーパーオキシド(O)による分解があげられます。アルギニン不足にはアルギナーゼによるアルギニンの分解促進が、NOSの機能障害にはテトラヒドロビオプテリン(BH)不足があげられます。BHは、NOSがアルギニンからNOを作るために必須の補因子ですが、BHは酸化に弱く活性酸素によって容易に分解されるため、酸化ストレスが高くなった状態(活性酸素が過剰に増加した状態)では、BH不足が生じ、NOSによるNOの生成が低下します。そのような状態では、NOSはNOを生成せずにスーパーオキシドを生成します(NOSアンカップリング)。スーパーオキシドはNOと反応しパーオキシナイトライトを生成します。これによってNOはますます減少します。パーオキシナイトライトはまた、BHを酸化分解しますので、さらにNO不足の悪循環に陥ってしまいます。なお生成した活性酸素(スーパーオキシドやパーオキシナイトライトやそれから生成したより反応性の強い活性酸素)は、遺伝子やたんぱく質や脂質などを傷つけ組織や臓器を障害しますので、老化や老化病を促進します。NO不足はまた老化や老化病を促進します。この悪循環を断つには、アルギナーゼを阻害してアルギニンを増やし、BHの酸化を阻害してその不足を抑制することが効果的と考えられます。


 

表.アルギニン(NO)の寿命延長、若返り、老化・老化病抑制作用

老化および老化病の種類 アルギニンの効果 メカニズム 引用ページ
寿 命  ・生存数を増加させました(寿命を延長しました)。(動物) ・一酸化窒素(NO)を介した作用
・免疫増強作用
・抗酸化作用
・抗糖化作用
・長寿遺伝子(サーチュイン、SIRT1)の活性化作用
・テロメラーゼ活性化作用など
アルギニンは長期摂取によってがんの発生を少なくし生存数を増やします!
肥 満  ・脂肪を優先的に減少させます。筋肉の減少はほとんど見られませんでした。(人)
・腹部脂肪(ウェスト周囲径)を強力に減少させました。(人)
・血液中の中性脂肪および脂肪酸が減少。(動物)
・脂肪組織の脂肪分解が増加し、脂肪酸の酸化(燃焼)が増加。(動物)
・一酸化窒素(NO)を介した作用
・脂肪を燃焼し熱に変える褐色脂肪組織を増やします(新しいメカニズム)。
・脂肪組織での脂肪の酸化(燃焼) に関係する遺伝子(NOS-1、HO-3、AMPK、PGC-1α)の発現が上昇。
・アルギニンのこれらの働きには、一酸化窒素(NO)、成長ホルモン、アディポネクチン、GLP-1などのホルモンが関係していると考えられます。
絶対やせる!ダイエットの決め手はこれだ!(ダイエットの革命『アルギニンダイエット』について)
メタボリックシンドローム ・肥満(腹部肥満)、高血糖、高血圧などを改善し、メタボリックシンドロームを改善。(人) ・アルギニンのこれらの働きには、一酸化窒素(NO)、アディポネクチンなどが関係していると考えられます。 アルギニンはメタボリックシンドロームを強力に予防・改善します!
糖尿病  ・血糖値を正常化し、糖尿病に移行するのを防ぎました。(人)
・2型糖尿病患者の血糖値を低下させ、糖尿病を改善しました。(人)
・一酸化窒素(NO)を介した作用
・アルギニンによる血糖値正常化や血糖低下作用は、アルギニンのインシュリン分泌増加作用やインシュリン抵抗性改善作用が関係してるものと考えられます。
・アルギニンは血糖低下ホルモンのGLP-1の分泌を促進します。
アルギニンは糖尿病・糖尿病合併症を予防・改善します!
糖尿病合併症 ・糖尿病(高血糖)で障害を受けた血管や血行動態を改善しました。(人、動物)
・糖尿病で治りにくくなった傷の治りを促進しました。糖尿病による足の潰瘍を治しました。(人、動物)
・糖尿病性腎症を予防・改善しました。(動物)
・糖尿病合併症と関係がある疾患(動脈硬化、狭心症、閉塞性動脈硬化症、ED、認知症など)を予防・改善します。(人、動物)
・アルギニンのこれらの働きには、一酸化窒素(NO)を介した作用と、糖尿病合併症の主な原因である糖化を抑制する作用が関係しているものと考えられます。 アルギニンは糖尿病・糖尿病合併症を予防・改善します!
動脈硬化 ・効果的な薬がほとんどない動脈硬化を強力に予防、改善します(スタチン系の薬剤より強力です)。(人、動物)
・動脈硬化の原因である血管内皮細胞の異常を改善します。(動物)
・血管を拡張したり、血管を柔らかくしたり、血液が固まるのを抑えたりして動脈硬化ができるのを予防したり、動脈硬化を改善します。(人、動物)
・アルギニンの動脈硬化予防・改善作用は抗酸化剤(ビタミンC、ビタミンE)によって増強されます。(動物)
・アルギニンの抗動脈硬化作用には一酸化窒素(NO)の働きが関係します。 
・動脈硬化の主な原因の一つである糖化を抑制します。
・抗酸化作用を示します。
・動脈硬化を引き起こす主な原因である変性LDL(酸化LDL、糖化LDL)(超悪玉コレステロールともいわれます)の生成を抑えます。
・動脈硬化の大きな危険因子であるホモシステインの濃度を低下させます。
アルギニンは動脈硬化および心血管病を予防・改善します!
心血管病 ・狭心症を改善します。(人)
・閉塞性動脈硬化症(間欠性跛行)を改善します。(人)
・アルギニンによる心血管病の改善作用は、その強力な抗動脈硬化作用と、アルギニンから生成した一酸化窒素(NO)による血管保護作用、血管拡張作用、血流増加作用、血栓形成抑制作用などが関係しているものと考えられます。 アルギニンは動脈硬化および心血管病を予防・改善します!
E D ・勃起障害を改善しEDを改善します。(人、動物)
・アルギニンのED改善作用は抗酸化剤によって増強されます。(人)
・アルギニンはバイアグラのED改善作用を増強します。(人)
・陰茎血管での一酸化窒素(NO)の生成を増加させることで血管を拡張させ陰茎を勃起させます.

・動脈硬化を抑制します(老化によるEDは動脈硬化が主な原因です)。
アルギニンはED(勃起不全)を予防・改善します! 
高血圧症 ・食塩の摂りすぎで引き起こされた高血圧、本態性高血圧、糖尿病や肥満に合併した高血圧、ストレスによる高血圧、動脈硬化が原因と考えられる高血圧を改善します。(人、動物)
・高血圧に合併した腎症や心血管系の異常などの合併症を改善します。(動物)
・アルギニンの高血圧改善作用には一酸化窒素(NO)が関係していると考えられます。 アルギニンは高血圧症を予防・改善します!(血管を柔らかくして血圧を下げるため、動脈硬化が主な原因中高年の圧に特にお勧めです!) 
心不全 ・心不全患者(中等症~重症)の生活の質(QOL)、運動耐容性、心機能、全身循環動態などを改善します。(人) ・アルギニンの心不全改善作用には一酸化窒素(NO)が関係していると考えられます。 アルギニンは心不全を予防・改善します!
認知症 ・脳血管性認知症患者の知的機能、一般症状(患者の表情の豊かさや反応など)を改善します。(人)
・アルツハイマー病の発症や進行を抑制する ことが期待できます。
・アルギニンの認知症改善作用には一酸化窒素(NO)が関係していると考えられます。
・アルツハイマー病の直接原因と考えられる活性酸素や糖化を抑制します。
アルギニンは認知症を予防・改善します!
感染症 ・アルギニンは種々の感染症を予防・改善します(老化によって感染症に罹りやすくなります)。(人、動物) ・一酸化窒素(NO)を介した作用
・アルギニン(NO)は免疫細胞(T細胞、マクロファージ)を活性化し、免疫力を高めます。
アルギニンは感染症を予防・改善します! 
骨粗鬆症 ・閉経後骨粗鬆症患者、老人性骨粗鬆症患者の骨密度を増やし、痛みの症状を軽減します。(人)
・骨折の治癒を促進します。(動物)
・一酸化窒素(NO)が関係していると考えられます。 アルギニンは骨粗鬆症を予防・改善します!
痔  ・痔(切れ痔)を改善します。(人)  ・一酸化窒素(NO)の作用で肛門圧を下げ(排便を容易にする)、肛門の血流を高める(傷の治りを早める)。  アルギニンは痔を治します! 
が ん   ・進行性(ステージIII、IV、再発がん)のがん患者で、延命効果と再発抑制効果を示し、5年生存率を有意に向上させ、一部の患者で完全治癒も可能にしました。(人)  ・アルギニンによる抗がん作用には、免疫増強作用、腫瘍組織におけるサバイビン発現抑制作用、iNOS発現増加作用(NO生成増加)、ODC活性減少作用などが関係しているものと考えられます。     アルギニンはがんを予防・改善します!(アルギニンはがん患者でがんを抑制し、再発を抑制し、延命効果を示し、完全治癒も可能にしました)  



2.アルギニンの問題点の克服

  アルギニンの問題点(「1.アルギニンの問題点」をご参照ください)を克服することで、アルギニンはより少ない量でより高い効果が長期間続くことが期待できることになります。

①第一の問題点の克服によって⇒アルギニンは生体での利用率が高まり、持続性が長くなることで、より少ない量でより長く効果が持続することになります

  アルギニンの生体での利用率を高めるには、生物学的利用率1)を良くする必要があります。アルギニンの生物学的利用率を下げているのは、主に腸でのアルギナーゼによる分解と考えられています(「①第一の問題点:アルギニンは経口投与(摂取)時の生物学的利用率が悪く、持続性が短い」をご参照ください)。では、アルギナーゼを阻害する物質をアルギニンと一緒に投与したらどうなるでしょうか。アルギナーゼを阻害する物質(化合物)は色々報告されていますが、作用が強く、安全で、長期間の摂取に適した物質は少ないのが現状です8)

  その中で、現在最も注目されているものの一つとしてシトルリンがあります。シトルリンは体内で合成されている生体物質であるとともに、種々の食品中に普遍的に含まれていますが、スイカに特に多く含まれていることが知られています。また、ヨ-ロッパでは一般薬として30年以上も前から使用されています。日本では安全性が高いことから食品として使用が可能です242526

  シトルリンはアルギナーゼを抑制することが報告されていますので(例えば文献2728など)、アルギニンをシトルリンと共に投与すると、アルギニンの血中濃度や生物学的利用率が高くなる可能性があります。一方、シトルリンは、経口投与した場合、腸で吸収された後、肝臓には取り込まれず、その大部分は腎臓に取り込まれて代謝され、アルギニンに変換されます(取り込まれたシトルリンの~75%)29)。そのため、シトルリンはアルギニンのプロドラッグともいえます(プロドラッグについては注釈30を参照ください)。シトルリンは、アルギニンに変換されるまで時間がかかりますので、シトルリン経口投与後のアルギニンの血中濃度のピークは1~2時間(人の場合)と遅いです(Biosci Biotechnol Biochem, 2016 Sep 26; 1-4、および文献31)(ラットの場合2~4時間です2425))。また、持続性は長く、アルギニンの血中濃度が投与前値まで戻るのに12時間あるいはそれ以上かかります(人の場合)31)(ラットの場合は12時間程度です2425))。一方、アルギニンは、経口投与後、アルギニンの血中濃度のピークは速く0.5~1時間(人の場合)です(Biosci Biotechnol Biochem, 2016 Sep 26; 1-4、および文献31)(ラットの場合1~2時間です2425))。また、持続性は短く、アルギニンの血中濃度が投与前値まで戻るのに4~6時間くらいしかかりません(人の場合)(Biosci Biotechnol Biochem, 2016 Sep 26; 1-4、および文献31)(ラットの場合は5~8時間程度です2425))。
  つまり、アルギニンは血中濃度のピークが早く効果が速やかに表れるが血中濃度の消失も早く、効果の消失が速いため1日に4~6回以上の摂取が必要になるということです。一方、シトルリンは効果の発現は遅いが、持続性があるため1日2回程度の摂取で良いと考えられます。このことから、アルギニンとシトルリンを同時に摂取することで、効果の発現が早く、持続も長いアルギニンサプリメントが創製できると考えられます。
  ではアルギニンとシトルリンを同時投与することでどういうアルギニンの血中濃度パターンが得られると予想されるでしょうか。それを図でシミュレーションしてみました(人とアルギニンの吸収性が似ているラットを用いて検討しました)(図4)。



図4.アルギニンとシトルリンを同時投与した時のアルギニン血中濃度の推移(ラットのデータ)

 
線1と2は、文献2425のラットのデータを用いて作成しました(経口投与のデータ)(シトルリンの投与量1およびアルギニンの投与量1)(人でもこれと似たような血中濃度パターンが得られています31))。線3はシトルリンにアルギナーゼ抑制作用がないと考えた場合の、アルギニン(投与量1)とシトルリン(投与量1)を同時投与(経口投与)した時のシミュレーションです(線1と線2を加え合わせて作成しました)。線4はアルギニン(投与量0.5)とシトルリン(投与量0.5)を同時投与(ラットに経口投与)したときのデータ32)から作成しました(文献24および25におけるシトルリンとアルギニンの単独投与のラットのデータと、文献32におけるトルリンとアルギニンの単独投与のラットのデータはほぼ同じ血中濃度パターンを示しました)。線5は、アルギニン(投与量1)とシトルリン(投与量1)を同時投与(ラットに経口投与)したとした時のシミュレーションです(線4のデータを2倍して作成しました。4時間以降は線3のパターンに沿って作成しました)。


  図4から、アルギニンを経口投与した時、その血中濃度のピークは速いが速やかに血中から消失することが分かります。一方、シトルリンをアルギニンと同量経口投与した時、アルギニンの血中濃度のピークに達する時間は遅いが、血中濃度の持続は長いことが分かります。では次に、図4のデータを基に、アルギニンの血中濃度のピークが早くかつ持続性も長いアルギニンサプリメント(つまり、効果の発現が早く、1日2回摂取で十分な効果が期待できるアルギニンサプリメント)の創製を目指して、アルギニン+シトルリン(投与量1:1)のサプリメントを創製した場合、その製品はどのような血中濃度パターンを示すことが期待できるでしょうか。シトルリンのアルギナーゼ抑制作用がないとした場合、血中濃度パターンは線3に近いパターンを示すものと考えられます。しかし、実際はこれと異なっていました。線4は、アルギニン(投与量0.5)とシトルリン(投与量0.5)を同時投与したものですが32)、アルギニンの血中濃度のピークは投与後0.5時間付近にありました。また、その最高血中濃度はアルギニン(投与量1)またはシトルリン(投与量1)の最高血中濃度よりも高く、アルギニン(投与量1)とシトルリン(投与量1)による血中濃度を加え合わせたものに近い値でした。そのAUCについて見てみますと(AUCについては注釈33を参照ください)、アルギニン(投与量0.5)とシトルリン(投与量0.5)を同時投与したときのAUC(0~1時間)は、アルギニン(投与量1)のAUC(0~1時間)の1.8倍でした。また、アルギニン(投与量1)とシトルリン(投与量1)によるAUC(0~1時間)を加え合わせたものとほぼ同じくらい(1.16倍)であることが示されました34)線5は、分かりやすいように、アルギニン(投与量1)とシトルリン(投与量1)を同時投与したとしたときの、アルギニンの血中濃度推移をシミュレーションしたものです(線4を2倍して作成しました)。線3と線5を比べてみますと、投与後0~2時間において明らかに線3より線5の方が血中濃度が高いことが分かります。特に、投与後0.5時間では約3倍高い血中濃度です。このことは何を意味しているのでしょうか。これはアルギニンが吸収される過程において、腸に存在するアルギナーゼを、同時投与されたシトルリンが強力に阻害したために、アルギニンがほとんど代謝分解されずに、一気に循環血液中に移行したためと考えると、うまく説明できると考えられます〔ラットにおいては、経口投与時のアルギニンの消化器での代謝分解率は40%前後と報告されていますので(「①第一の問題点:アルギニンは経口投与(摂取)時の生物学的利用率が悪く、持続性が短い」をご参照ください)、もし、生物学的利用率を低下させている大きな原因と考えられている、腸のアルギナーゼをほぼ完全に抑制することができれば、アルギニンの血中濃度やAUCは2倍近くに増加すると考えられます〕。投与後2時間以降は、線3のラインに類似した血中濃度パターンを示していますので、シトルリンの多くは腎臓に移行しアルギニンに変換されていくものと考えられます。そのため、4時間以降は線3に類似したパターンを示すものと考えられます。では、アルギニンの血中濃度が速やかに増加することが、アルギニンの効果とどのような関係があるのでしょうか。これは、ウサギを用いて検討されました3234)。ウサギにアルギニン(500mg/kg)(アルギニングループ)またはシトルリン(500mg/kg)(シトルリングループ)をそれぞれ経口投与しました。また、アルギニン(250mg/kg)とシトルリン(250mg/kg)を一緒に経口投与しました(アルギニン半量+シトルリン半量グループ)。その結果、アルギニン半量+シトルリン半量グループのアルギニンの血中濃度(投与後0.5時間)は明らかにアルギニングループやシトルリングループより上昇が認められました。また、そのAUC(0~1時間)は、アルギニン半量+シトルリン半量グループでは、アルギニングループの1.68倍、アルギニングループとシトルリングループの総和の1.53倍でした。また、アルギニンからのNOの生成やcGMPのレベル(血中)もアルギニン半量+シトルリン半量グループで最も高く、そのピークは投与後1時間付近にありました。さて、アルギニンは種々の働きを示しますが、その内NOを介する働きは最も重要なものです。NOの働きの最も重要なものの一つとして、血管拡張作用による血流増加作用があります。アルギニンの血中濃度増加作用が血流増加作用にどのように影響するかが検討されました。投与後40分におけるウサギの耳動脈周囲の血流量は、アルギニン半量+シトルリン半量グループで最も高く、アルギニングループまたはシトルリングループのそれぞれ約2倍でした。すなわち、アルギニン半量+シトルリン半量グループがアルギニングループとシトルリングループの総和とほぼ同じ(1.02倍)血流量増加作用を示しました。このことは、つまり、アルギニンの血中濃度の増加が、アルギニンの働きに反映されていること、引いては、アルギニンの働きを高めるためには、アルギニンの生物学的利用率を上げ(代謝による分解を抑制し)、血中濃度を高めることが重要であることを示しています。
  これらの結果から、アルギニン単独に比べ、アルギニンに加えシトルリン(1:1で)を同時に摂取しますと、アルギニンの血中濃度や働きは、3~4倍に増強されることが示されました。

  以上のことをまとめてみますと、
アルギニンと共にシトルリン(1:1の比率で)を一緒に摂取することで、アルギニン単独で摂取した場合に比べ、アルギニンの血中濃度のピークはより早く(摂取後30分程度に)、そしてより高く(3倍程度以上)なることが期待されます(ラットやウサギのデータから)。これは、シトルリンのアルギナーゼ抑制作用により、腸管のアルギナーゼが抑制されたため、アルギニンが腸管で代謝分解され難くなり、速やかに体循環系に移行したためと考えられました。加えて、シトルリンは吸収された後、腎臓に取り込まれ、そこでその多くが徐々にアルギニンに変換されるため、その分がアルギニンの血中濃度にオンされます。この徐々にアルギニンに変換される部分は持続性という形になりますので、アルギニンにシトルリンを加えるということは一石二鳥となります。つまり、アルギニンと共にシトルリンを一緒に摂取しますと(その比率は1:1が望ましいと考えられます)、生物学的利用率が悪くて持続が短いために、大量にそして頻回に(1日に6回程度?!)摂取しなければならなかったアルギニンサプリメントが生まれ変わり、効果の発現がより早く、より少量で(3分の1程度以下?!)、より持続が長い(1日に2回程度ですむ?!)、より望ましいサプリメントになることが期待できます。なお、人ではアルギニンの生物学的利用率がラットより悪いために(人でのアルギニンの生物学的利用率は20~50%であるのに対し、ラットでは60%前後(「①第一の問題点:アルギニンは経口投与(摂取)時の生物学的利用率が悪く、持続性が短い」をご参照ください
、アルギニンとシトルリンを同時に摂取することで、アルギニンの血中濃度と効果がさらに高くなることが期待できます。

  これらの動物を用いてのシトルリンの腸(のアルギナーゼ)によるアルギニンの代謝(分解)抑制効果は、最近人を用いての試験によって人でも同様に認められることが明らかにされました(図5)(Biosci Biotechnol Biochem, 2016 Sep 26; 1-4)。

図5アルギニンとシトルリンを同時投与した時のアルギニン血中濃度の推移(人のデータ)


【図の説明】


  
このように、人において、アルギニンは投与後速やかにアルギニンの血中濃度は上昇しましたが(ピークは約0.5時間後)、その濃度は低く、また速やかに低下し、4時間後にはプラセボの濃度まで低下しました(すなわちアルギニンの働きは投与後4時間程度で消失すると考えられます)。一方、アルギニンにシトルリン(アルギナーゼ阻害剤)を同量併用投与しますと、アルギニンの血中濃度は速やかに上昇し(ピークは約0.5~1時間)、その濃度はより高い(アルギニン投与の場合に比較し約3.4倍増加)ことが示されました。また、投与後4時間後でも血中濃度が維持され、持続性は約12時間程度と考えられました(アルギニンの3倍程度の持続性)。上記データから、アルギニンが腸(のアルギナーゼ)によって分解(代謝)されるのを十分に抑制するには、シトルリンは1000mg程度あるいはそれ以上は必要と考えられます。また、アルギニンとシトルリンの比率は1:1が望ましいと考えられます。


②第二の問題点の克服によって⇒アルギニンの分解が抑えられ、アルギニンの効果が十分に発揮できます

  「②第二の問題点:アルギニンは、アルギナーゼによって分解されるため、アルギナーゼ活性が高い場合はアルギニンの体内濃度が低下します」 において、メタボリックシンドローム、糖尿病、高血圧、動脈硬化、心筋梗塞、脳卒中、糖尿病性血管障害、心不全、肺動脈高血圧症、末梢血管障害、ED、喘息、肝障害、妊娠高血圧症候群、感染症、がん、老化などで、アルギナーゼ活性の上昇が見られ101112、その結果アルギニンの不足を引き起こし、それがこれらの病気や異常の大きな原因の一つになっていると考えられていることを述べました。また、このとき、アルギニン不足を補うために、アルギニンを摂取すると、短期間の摂取によってある程度の効果が見られるが、長期間(例えば3~6ヶ月程度以上)の摂取によっては効果が減弱したり、消失したり、場合によっては有害作用が生じることも述べました。そして、その原因を調べると、アルギニンの長期間の作用によってアルギナーゼ活性の上昇が見られ、その上昇はアルギニンの作用量が多くなるほど高くなること、また、上昇したアルギナーゼによるアルギニンの欠乏あるいはアルギナーゼによる作用によって、NOの生成の減少と活性酸素(スーパーオキシド)の生成増加(eNOSアンカップリング)が生じ、細胞や組織の老化(例えば血管では血管の老化である動脈硬化)が促進されることを述べました。一方、アルギナーゼの抑制(遺伝子サイレンシングによる抑制)によって、NOの生成は増加し、活性酸素(スーパーオキシド)は減少し、細胞の老化は抑制されることを述べました。

  では、実際にアルギナーゼ阻害剤を用いた場合に、アルギナーゼの上昇した病気において、アルギナーゼ阻害剤はどのような効果を示すでしょうか。アルギナーゼ阻害剤はいくつか報告されており、動物および人において、それぞれ興味のある効果が示されています11。例えば、メタボリックシンドローム、糖尿病、高血圧、動脈硬化、心筋梗塞、脳卒中、糖尿病性血管障害、心不全、肺動脈高血圧症、ED、老化などでアルギナーゼ活性の上昇が見られ、それにアルギナーゼ阻害剤を作用させると、アルギナーゼによるアルギニン不足が原因と考えられる、eNOSアンカップリングによるNO生成の減少と活性酸素(スーパーオキシド)の生成増加が改善されること、またそれぞれの病気に関係する異常が改善されることが示されています11

  例をいくつかあげたいと思います。Bagnostらは35)
、本態性高血圧の動物モデル(自然発症高血圧ラット、SHR)を用いて、高血圧とアルギナーゼの関係、およびそれに対するアルギナーゼ阻害剤の作用を検討しました。SHRの腸間膜動脈において、正常ラット(WKYラット)に比べ、アルギナーゼ(アルギナーゼI)の発現は2倍に増加していました。一方、これにアルギナーゼ阻害剤(nor-NOHA)を作用させると、アルギナーゼ(アルギナーゼI)の発現は正常ラットに近いレベル(-38%)まで低下しました。次に血管の拡張性に対する作用を調べました。SHRの腸間膜動脈の血管拡張性(ACh刺激)は、正常ラットに比べ低下していましたがアルギナーゼ阻害剤(nor-NOHA)を作用させると、血管拡張性の低下は正常ラットのレベルまで改善しました。SHRは高血圧を自然発症し、人の本態性高血圧のモデルとして使われていますので、高血圧に対するアルギナーゼ阻害剤(nor-NOHA)の作用を検討しました。SHRにアルギナーゼ阻害剤(nor-NOHA)を10週間投与しますと、血圧(収縮期血圧)は徐々に下がり始め、5週目で最大(-30mmHg)になり、それ以降プラトーになり、降圧作用の減弱化は見られませんでした。このことは、SHRの高血圧の少なくとも一部に、アルギナーゼ上昇によるアルギニン不足が関係していること、アルギナーゼ阻害剤の作用は投与期間が長くなっても低下しないことから、アルギナーゼ阻害剤によるアルギナーゼの誘導は起こりにくいと考えられることを示しています。加えて、アルギナーゼ阻害剤(nor-NOHA)は、SHRの大動脈の中膜の肥厚も抑制しました。

  Kimらは36)老化に伴う血管の老化(動脈硬化)の主な原因にアルギニンの不足があり、それには老化によるアルギナーゼ活性の上昇が大きく関係していること、アルギナーゼの阻害により血管の老化が抑制されることを示しました。老齢ラット(~22~24ヶ月齢。ラットの寿命は30ヶ月程度です)では、若齢ラット(3ヶ月齢)に比べ、血管のアルギナーゼ活性は1.5倍に増加し、NOの生成は約1/4に低下し、活性酸素(スーパーオキシド)は約2倍に増加していたことから、老齢ラットの血管内皮細胞ではeNOSアンカップリングが引き起こされていると考えられました。次に、これらのラットにアルギナーゼ阻害剤(ABH)を慢性投与(25日間投与)しました。その結果、老齢ラットのアルギナーゼ活性、NOの生成、活性酸素(スーパーオキシド)レベルは、それぞれほぼ若齢ラットのレベルまで回復しました。このことから、老齢ラットにおける血管内皮細胞のeNOSアンカップリングはアルギナーゼ活性の上昇が原因であると考えられました。老化により血管の拡張性や進展性の低下が見られますが、これは、高血圧や動脈硬化の原因となります。老齢ラットにおいて、若齢ラットに比べ、血管の拡張性(Ach刺激)や進展性(PWV)が低下しましたが、アルギナーゼ阻害剤(ABH)の慢性投与によってこれらはほぼ若齢ラットのレベルまで回復しました。これらの結果は、老齢ラットでは、老化により、アルギナーゼの活性上昇が起こり、それによってアルギニンの欠乏を引き起こし、それによるeNOSアンカップリングにより、NOの生成低下と活性酸素(スーパーオキシド)の増加が起こるために、血管障害を引き起こし、動脈硬化の発症や進展が促進されると考えられること、また、アルギナーゼ阻害剤によりアルギナーゼを阻害すると、老齢ラットのこれらの異常がほぼ抑制され、若齢ラットのレベルまで改善されることから、動脈硬化の発症や進展が抑制されると考えられることを示しています。

  Romeroらは37、シトルリンが、糖尿病において増加したアルギナーゼ活性、NO生成低下、活性酸素(スーパーオキシド)生成増加を、ほぼ正常レベルまで抑制させたことを報告しました。糖尿病モデルラット(STZによって誘発)において、糖尿病誘発4週間後、血管(大動脈)と肝臓のアルギナーゼ活性は、正常ラットに比べ、それぞれ約2倍と約2.5倍に増加しました。この時アルギニンを投与すると、アルギナーゼ活性(血管)はさらに増加しました(正常ラットの約2.5倍)。また、糖尿病誘発8週間後では、血管(大動脈)と肝臓のアルギナーゼ活性は、正常ラットに比べ、それぞれ約1.6倍と2.3倍に増加しました。この時シトルリンを投与すると、増加したアルギナーゼ活性(血管および肝臓)はほぼ完全に(正常ラットのレベルまで)抑制されました。次に、血管内皮細胞によるNO生成への影響を調べるために、糖尿病誘発8週間後の冠動脈の拡張性(Ach刺激)を検討したところ、正常ラットに比べ、明らかに拡張性が低下していましたが、これにシトルリンを投与した時、低下した拡張性はほぼ正常ラットレベルまで改善しました。このことは、糖尿病状態において、血管内皮細胞は障害を受け、NOの生成を低下させますが、シトルリンによって、NOの生成はほぼ正常レベルまで回復したことを示しています。次に活性酸素に対する影響を検討しました。糖尿病誘発8週間後のラットの心臓では、過酸化脂質(脂質と活性酸素が反応して生成)が37%増加していました。一方、シトルリンを投与しますと、過酸化脂質の生成が抑制されました。糖尿病状態の何がアルギナーゼ活性の増加をもたらすかを検討するため、内皮細胞(BCEC)を用いて検討されました。内皮細胞を高いグルコース濃度(25mmol/L)(糖尿病状態の血糖値に相当)で24時間処理すると、正常レベルのグルコース濃度(5mmol/L)(正常状態の血糖値に相当)の場合に比べ、アルギナーゼ活性は2倍近くまで増加しました。一方、これにシトルリンを加え処理しますと、高グルコース濃度によって引き起こされたアルギナーゼ活性の増加は、ほぼ正常レベルまで低下しました。また、高グルコースで活性酸素(スーパーオキシド)の生成も増加しますが、シトルリンで処理しますと正常レベルまで低下しました。

  El-Bassossyらは38、シトルリンが、メタボリックシンドロームで増加したアルギナーゼ活性、NO生成低下、活性酸素生成増加などを、ほぼ正常レベルまで抑制させたことを報告しました。メタボリックシンドロームモデルラット(フルクトースの投与によって作成)において、アルギナーゼ活性は、正常ラットに比べ、約2.3倍に増加しました。また、NOの生成は、正常ラットに比べ、低下していました。加えて、活性酸素は、正常ラットに比べ、約2倍に増加していました。一方、これにシトルリンを投与しますと、これらの異常はほぼ正常レベルまで改善されました。メタボリックシンドロームモデルラットにおいては、血糖値、インスリンレベル、インスリン抵抗性、中性脂肪、および血圧の上昇が見られましたが、シトルリンの投与によって、これらは改善しました。

  では、アルギニンを長期間(例えば3ヶ月程度以上)摂取した時に見られる働きの減弱や消失が、アルギナーゼ阻害剤を一緒に摂取することで防げるでしょうか。これについては、林らは、アルギナーゼ阻害剤としてシトルリンを用いて検討しました40)
  ウサギ(ニュージーランドホワイト種。雄)に、それぞれ高コレステロール食(高コレステロール群)、高コレステロール食とアルギニン(飲水中に2.5%含有。以下同様)(高コレステロール食+アルギニン群)、高コレステロール食とシトルリン(飲水中に2.0%含有。以下同様)(高コレステロール食+シトルリン群)、高コレステロール食とアルギニンとシトルリン(高コレステロール食+アルギニン+シトルリン群)、または標準食(標準食群)を12週間摂取させました。その結果、試験開始後12週目の時点において、標準食の場合に比べて、高コレステロール食を摂取させた場合、血管(胸部大動脈)の拡張性(アセチルコリンによる血管拡張性。NOを主に介しています)は明らかに低下していました(約40%の低下)。これは高コレステロール食により血管内皮細胞が傷つけられ、NOの産生が抑制されたためと考えられました。これに対して、アルギニンの摂取は、高コレステロール食による血管拡張性の低下を改善しませんでした(改善傾向は見られました)。また、アルギニンによる血流増加作用に関する検討において(右の中心耳動脈を用いた)、アルギニンは、高コレステロール食群の血流を増加させませんでした(増加傾向はありました)。さらに、動脈硬化に対するアルギニンの効果を検討しましたところ、アルギニンの摂取は、高コレステロール食によって形成された、血管(胸部大動脈)の動脈硬化をほとんど縮小しませんでした。そこで、アルギニンによるNO生成増加の程度を調べるために、血中のNO産物(NO
とNO。NO生成の指標)やcGMP(NOによって生成が増加し血管を拡張させる。NO生成の指標)を調べましたが、アルギニンは、高コレステロール食群のNO産物やcGMPをほとんど増加しませんでした。これらの結果は、アルギニン摂取開始12週の時点で、アルギニンを十分量摂取しているにもかかわらず、アルギニン摂取によるNOの生成、血管拡張、血流増加作用、あるいは動脈硬化抑制作用は見られないということを示しており、この理由として、先に述べましたように、アルギニンの長期摂取によってアルギナーゼが活性化され、アルギニンの分解が促進されたためと考えられます。では、アルギナーゼの働きを阻害するために、アルギニンと共に、アルギナーゼ阻害剤のシトルリンを一緒に摂取させたとき、アルギニンの働きはどのように変化するのでしょうか。この場合高コレステロール食+アルギニン+シトルリン群)、高コレステロール食によって低下した血管拡張性は、アルギニンとシトルリンの同時摂取によって改善されました(約70%の改善)。血流増加作用についても、アルギニンとシトルリンの同時摂取によって、高コレステロール食群の血流を明らかに(統計的に有意に)増加させました(約50%の増加)。動脈硬化に関しては、高コレステロール食による動脈硬化形成を、アルギニンとシトルリンの同時摂取によって明らかに(統計的に有意に)抑制しました(約40%の抑制)。血中のNO産物やcGMPの量も、アルギニンとシトルリンの同時摂取によって明らかに(統計的に有意に)増加しました。なお、シトルリンのみの摂取(高コレステロール食+シトルリン群)の場合、血管拡張性、血流増加作用、動脈硬化形成、あるいは血中NO産物やcGMP量にはほとんど影響しないか、改善する傾向が見られただけでした。
  
これらの結果は、アルギニン
を長期摂取(12週間)したとき、アルギニンの働き(NO生成、血管拡張作用、血流増加作用、動脈硬化抑制作用など)はほとんど消失しますが、シトルリン(アルギナーゼ阻害剤)をアルギニンと同時に摂取することで、アルギニンの働きの消失を防ぐことができることを示しています。また、アルギニンの働きの消失は、主として、アルギニンの長期摂取によって誘導活性化されたアルギナーゼがアルギニンを分解したためと考えられること、さらにアルギナーゼ阻害剤のシトルリンをアルギニンと同時に摂取することでアルギナーゼが抑制されたため、アルギニンの働きが十分に発揮されたものと考えられます。


〔ここでは少数の例について述べましたが、アルギナーゼと病気の関係、あるいはアルギナーゼ阻害剤がこれらの病気(や異常)をどのように改善するかについてもっと詳しくお知りになりたい方は、他の総説11(やその中の文献)などをご参照ください〕。

  
これまでのデータから、アルギナーゼ阻害剤は、アルギナーゼを強力に(ほぼ完全に)抑制し、その抑制作用は長期投与によっても減弱しないことから、アルギナーゼ阻害剤をアルギニンと一緒に摂取することで、アルギニンの最大の欠点の一つである、長期摂取におけるアルギニンの効果の減弱や消失(場合によっては有害作用を生じることもあります)を防いだり、アルギナーゼ活性が高い病気(例えば、メタボリックシンドローム、糖尿病、高血圧、動脈硬化、心筋梗塞、脳卒中、糖尿病性血管障害、心不全、肺動脈高血圧症、末梢血管障害、ED、喘息、肝障害、妊娠高血圧症候群、感染症、がん、老化など)に対する効果を高めたりすることが可能となります。

  では、これまで知られているアルギナーゼ阻害剤の中で、実際に、人に長期に使用した場合、安全に使用できるものはどれでしょうか。多くのものが実際の使用にあたって安全性面やその他の面で問題がある中で、現在、最も有望なものに、シトルリンがあります。シトルリンは人において安全性が確認されており、現在、厚生労働省により食品としての使用が可能となっております2425

  すなわち、アルギニンをシトルリンと一緒に摂取することで、アルギニンの最大の欠点の一つである、長期摂取(例えば3ヶ月程度以上)や大量摂取(例えば1日3g程度以上)におけるアルギナーゼ活性の上昇によるアルギニンの効果の減弱や消失(場合によっては有害作用を生じることもあります)を防いだり、アルギナーゼ活性が高い病気(例えば、メタボリックシンドローム、糖尿病、高血圧、動脈硬化、心筋梗塞、脳卒中、糖尿病性血管障害、心不全、肺動脈高血圧症、末梢血管障害、ED、喘息、肝障害、妊娠高血圧症候群、感染症、がん、老化など)に対する効果を高めたりすることが可能となります。また、シトルリンは、体内でアルギニンに変換され、アルギニンとして効果を発揮しますので、まさに一石二鳥となります。

 
 では、実際に人に使用する場合、シトルリンはどのくらい摂取すればよいでしょうか。シトルリンのアルギナーゼ阻害作用や血中濃度などから判断して(図5。文献31373839など)、アルギナーゼを十分阻害するには、1日1000mg程度は必要と考えられます。アルギニンとシトルリンの比率については、①第一の問題点の克服によって⇒アルギニンは生体での利用率が高まり、持続性が長くなることで、より少ない量でより長く効果が持続することになりますでも述べましたように、アルギニン:シトルリン(1:1)が望ましいと考えられます。これは、生物学的利用率1)の観点からだけでなく、効果についてもこの比率(あるいはこれに近い比率)が高い効果を示すことが報告されているからです〔例えば、アルギニンあるいはシトルリン単独よりもアルギニン+シトルリン(1:0.8~1)の方が効果が高いだけでなく、これら単独では効果がない場合でも、アルギニン+シトルリン(1:0.8~1)にすると効果が示されると報告されています〕(図5。文献323440)。

  以上をまとめますと、
②第二の問題点:アルギニンは、アルギナーゼによって分解されるため、アルギナーゼ活性が高い場合はアルギニンの体内濃度が低下します」に対して、アルギナーゼ阻害剤のシトルリンを用いることでこれを克服することが可能と考えられます。人に実際に用いる場合、シトルリンの摂取量は1日1000mgあるいはそれ以上が望ましいと考えられます。アルギニンとシトルリンの比率は1:1が望ましいと考えられます。すなわち、アルギニン+シトルリン(1000mg+1000mg)あるいはそれ以上を毎日摂取することによって、アルギニン単独摂取に比べ、長期間にわたって効果が減弱することなく(アルギニン単独では長期間の摂取によって効果が減弱したり消失する可能性が高いです)、より強力に(アルギニン単独ではアルギナーゼによって分解されるため効果が弱くなる場合があります)、寿命延長や若返り、老化および老化病の抑制が可能になることが期待できます。
 

③第三の問題点の克服によって⇒NOの生成が促進され、より高い効果が期待できるようになります
  

  ③第三の問題点:アルギニンの最も重要な作用として、アルギニンがNOS(一酸化窒素合成酵素)によって変化を受け生成するNO(一酸化窒素)による働きがありますが、NOSは活性酸素の影響を受けやすく、活性酸素によってその活性が低下しますで述べましたように、eNOSによってアルギニンからNOが生成されるためには、補因子であるテトラヒドロビオプテリン(BH)が必須ですが、BHは、酸化によって容易に分解されるという性質があります。実際、酸化状態ではBHは20分以内で酸化され消失することが示されています41正常な状態(健康な状態)でも、体内で常に活性酸素は生成していますが(成人が消費する酸素のうちの3~5%が活性酸素になります)42老化や老化病では、さらに酸化ストレス(活性酸素が過剰な状態)が増加することが知られていますので(文献434445など)、これがBH酸化を促進し、BH不足を引き起こしている可能性があります。BHが不足しますと、eNOSはアルギニンからNOを作ることができず、代わりに酸素から活性酸素のスーパーオキシドを生成します(eNOSアンカップリング)。これによって酸化ストレスはさらに悪化します。また、スーパーオキシドはNOと反応してNOを分解すると共に、さらに酸化力が強いパーオキシナイトライトになります。パーオキシナイトライトはBHを容易に酸化分解しますので、NOの生成はさらに減少し、活性酸素がさらに増加するという悪循環に陥ることになります23)この悪循環を断ちきるためには、BH酸化分解を抑制(抗酸化剤による活性酸素の消去など)してNOSが正常に機能するようにしてやる必要があります。

  BH酸化分解を効果的に抑制する抗酸化剤としてアスコルビン酸(ビタミンC)が報告されています41。人の内皮細胞(HUVEC)を用いて、酸化条件下(酸性またはアルカリ性条件下KI/I
で酸化)で処理した時の細胞内のBHの残存量を測定したところ、ビタミンCが加えられていない場合に比べ、10μMのビタミンCを加えた場合、明らかに(統計的に有意に)BHの残存量は増加(約2.5倍)しました(1μMのビタミンCを加えた場合、BHの残存量は増加する傾向にありましたが統計的に有意ではありませんでした)。その残存量はビタミンCを100μM加えた時がほぼピークで約3倍に増加しました。一方、それ以上ビタミンCを加えてもBH残存量は増加せず、かえって減少しました。次に、人の内皮細胞(HUVEC)を用いて、ビタミンCを加えない時と、加えたとき(ビタミンC100μM)の、イオノマイシン刺激によるNOの生成(NOの生成量を反映するシトルリンとcGMP生成量で見積もられました)に対する影響を検討しました。その結果、ビタミンCを加えたとき、加えない場合に比べ、シトルリンとcGMPの生成量はそれぞれ約3.5倍に増加しました。このことは、ビタミンCを加えたことで、BHの残存量が増加し、NOの生成量が約3.5倍増えたものと考えられました。なお、ビタミンCはBHの合成には影響しませんでした。

  一方、別の研究では46、内皮細胞(PAEC)内へのビタミンCの取り込みは、細胞外のビタミンC濃度が75~100μM付近でピークになること(それ以上の濃度では取り込みは低下します)、ビタミンCによるcGMP生成促進作用は同様に75μM付近で最大になること(それ以上の濃度では生成促進作用は低下します)が示されています。なお、ビタミンC75μMで処理した時の内皮細胞内のBHの量は、処理してない場合に比べ2.3倍増加しました。

  次に、ビタミンCによる
BHの酸化分解の抑制作用のメカニズムが検討されました47)
その結果、ビタミンCは、活性酸素を消去することによってBHの酸化分解を抑制するというよりも、BHが活性酸素(特にパーオキシナイトライト)によって酸化され生成したBHラジカルを還元してBHを再生することによって、結果的にビタミンCがBHの酸化分解を抑制するということが分かりました。

  では、実際、ビタミンCは、NOを介したアルギニンの効果を増強するでしょうか。これについては、いくつかの研究があります。例えば、Tousoulisらは48、狭心症の患者において、ビタミンCがアルギニンの効果を増強することを示しました。狭心症は、心筋に酸素や栄養を供給する冠動脈の血流不足によって、心筋が酸素不足になることで生じます。多くの場合、冠動脈の動脈硬化によって生じた冠血管の狭窄による血流障害が原因となります(「アルギニンは動脈硬化および心血管病を予防・改善します!」をご参照ください)。狭心症の治療は、通常、低下した血流を薬で増やす対症療法が主ですが、根本原因の動脈硬化は進行するために、病状は進行し、結果的に心筋梗塞を引き起こし死に至ります。では、その動脈硬化の原因は何で、それを改善する方法はあるのでしょうか。これまでの研究で、主として血管内皮細胞の障害によってNOの生成不足が起こり、それが動脈硬化の原因ではないかと考えられています。実際、NOの生成を促進するアルギニンを摂取することで、狭心症の改善や動脈硬化の改善が見られています(「アルギニンは動脈硬化および心血管病を予防・改善します!」をご参照ください)。では、血管内皮細胞の障害の原因は何でしょうか。それは、活性酸素が原因と考えられています。活性酸素が血管内皮細胞を直接障害したり、eNOSの活性を低下させたり(BHを酸化分解して)、NOを分解したり(活性酸素がスーパーオキシドの場合、NOはスーパーオキシドと反応してより酸化活性の強いパーオキシナイトライトを生成します)して、NOの生成を抑制します。このことから、アルギニンと共に、抗酸化剤(特にビタミンC)を一緒に投与することで、アルギニンだけに比べて、さらに高い効果が期待できます。本研究では、冠動脈の血管拡張作用に対する効果が検討されました。狭心症の患者(28名)が3群に分けられました。A群(8名、平均年齢59歳)にはアルギニンとビタミンCを、B群(10名、平均年齢57歳)にはアルギニンを、C群(10名、平均年齢56歳)にはビタミンCを、それぞれ冠血管内(アルギニン)または静脈内(ビタミンC)に投与しました。その結果、冠動脈近位部において、アルギニン投与によって血管径は4.87%増加しました(統計的に有意)。ビタミンC投与によっては血管径は1.93%増加しました(統計的に有意)。一方、アルギニンとビタミンCを一緒に投与しますと血管径は8.68%増加しました(統計的に有意)。また、冠動脈遠位部においては、アルギニン投与によって血管径は6.33%増加しました(統計的に有意)。ビタミンC投与によっては血管径は2.09%増加しました。一方、アルギニンとビタミンCを一緒に投与しますと血管径は13.07%増加しました(統計的に有意)。このように、アルギニンとビタミンCを一緒に投与しますと、アルギニンまたはビタミンCを単独で投与するよりもより強く血管を拡張すること(アルギニン単独の約2倍の作用)、アルギニンとビタミンCを一緒に投与したときの血管拡張作用の強さはアルギニンとビタミンCそれぞれ単独投与の総和よりも大きいことから相乗効果と考えられることなどが明らかとなりました。
これらの結果は、狭心症の患者では、酸化ストレス亢進により(それによるBHの減少により)、eNOSの活性が低下しているため、アルギニンを投与してもNOの生成は十分ではないが、ビタミンCを一緒に投与することで、BHが増加し、eNOS活性が上昇するために、NOの生成が増加し、血管拡張作用が強められた((約2倍の効果増強)ものと考えられました。

  上記の結果は、アルギニンの短期投与の結果でしたが、長期投与においても、ビタミンC(あるいはビタミンCとビタミンE)がアルギニンの働きを増強することが示されています。これについては、林らによって検討されました40)
  ウサギ(ニュージーランドホワイト種。雄)に、それぞれ高コレステロール食(高コレステロール食群)、高コレステロール食とアルギニン(飲水中に2.5%含有。以下同様)とシトルリン(飲水中に2.0%含有。以下同様)高コレステロール食+アルギニン+シトルリン群)、高コレステロール食とビタミンC(飲水中に0.25%。以下同様)とビタミンE(150mg/kg/日経口投与。以下同様)(高コレステロール食+ビタミンC+ビタミンE群)、高コレステロール食とアルギニンとシトルリンとビタミンCとビタミンE(高コレステロール食+アルギニン+シトルリン+ビタミンC+ビタミンE群)、または標準食(標準食群)を12週間摂取させました。その結果、試験開始後12週目の時点において、標準食の場合に比べて、高コレステロール食を摂取させた場合、血管(胸部大動脈)の拡張性(アセチルコリンによる血管拡張性。NOを主に介しています)は明らかに低下していました(約40%の低下)。これは高コレステロール食により血管内皮細胞が傷つけられ、NOの産生が抑制されたためと考えられました。これに対して、アルギニンとシトルリンの摂取(高コレステロール食+アルギニン+シトルリン群)は、高コレステロール食によって低下した血管拡張性を改善しました(約70%の改善)。一方、これにビタミンCとビタミンEを一緒に摂取させます(高コレステロール食+アルギニン+シトルリン+ビタミンC+ビタミンE群)と、血管拡張性はさらに改善され、標準食群とほぼ同等でした(ほぼ100%の改善)。次に動脈硬化に対する効果につきましては、高コレステロール食による動脈硬化形成は、アルギニンとシトルリンの同時摂取(高コレステロール食+アルギニン+シトルリン群)によって明らかに(統計的に有意に)抑制されました(約40%の抑制)が、これにビタミンCとビタミンEを加える(高コレステロール食+アルギニン+シトルリン+ビタミンC+ビタミンE群)ことで、さらに抑制されました(約60%の抑制)。次に、活性酸素生成に対する効果が検討されました。高コレステロール食群の血管(動脈)では活性酸素(スーパーオキシド)の生成が、標準食群に比べて約3倍に増加していました。これに対し、アルギニンとシトルリンを摂取(高コレステロール食+アルギニン+シトルリン群)させますと、スーパーオキシドの生成は約2/3に抑制されました(統計的には有意ではありませんでした)。一方、アルギニンとシトルリンにビタミンCとビタミンEを加えると(高コレステロール食+アルギニン+シトルリン+ビタミンC+ビタミンE群)、スーパーオキシドの生成は約1/3まで抑制されました(統計的に有意)。
  これらの結果は、アルギニンとシトルリン〔アルギナーゼ阻害剤。ある異常や病気(例えば、メタボリックシンドローム、糖尿病、高血圧、動脈硬化、心筋梗塞、脳卒中、糖尿病性血管障害、心不全、高血圧肺動脈高血圧症、末梢血管障害、ED、喘息、肝障害、妊娠高血圧症候群、感染症、がん、老化など)のとき、あるいはアルギニンの長期摂取(例えば3ヶ月程度以上など)や大量摂取(例えば1日3g程度以上)などによって引き起こされる、アルギナーゼの活性化によるアルギニンの分解を抑え、アルギニンが十分働く条件を整えます〕に加え、抗酸化剤(ビタミンCとビタミンE)を摂取させると、アルギニン(とシトルリン)によって示された血管拡張性や動脈硬化の改善がさらに改善されることを示しています。高コレステロール食の摂取による血管拡張性の低下や動脈硬化の形成促進は、活性酸素による血管内皮細胞の障害と、それに伴うNO(抗動脈硬化因子)生成の低下が大きく関わっていることが知られていますが、ここで示された結果はこのことを支持しています。すなわち、高コレステロール食は、活性酸素(スーパーオキシド)の生成を増加させ、それによって内皮細胞を傷つけ、次いでNOの生成を抑制し、血管拡張性を抑制したり、動脈硬化の形成を促進すると考えられますが、その改善や抑制にはNOの生成を促進するアルギニン(とシトルリン)の摂取だけでは不十分で、活性酸素を抑制する抗酸化剤(ビタミンCとビタミンE)を一緒に摂取することでより強く(またはほぼ完全に)これらの異常を改善したり抑制することが示されました。

  
酸化ストレスの亢進は、食べ過ぎ、運動不足、ストレス、喫煙などのライフスタイルの乱れ、あるいは老化や老化病(あるいは生活習慣病)(例えば、肥満、メタボリックシンドローム、高血糖、高血圧、脂質代謝異常、糖尿病、加齢黄斑変性症、動脈硬化、心筋梗塞、免疫異常、アルツハイマー病、がんなど)、パーキンソン病、喘息、関節リウマチ、腎炎など、色々な異常や病気において認められることが報告されています4950。このような異常や病気の予防・改善を目的としてアルギニンを摂取する場合、NOSは活性酸素によって活性が低下している可能性が高いため、アルギニン単独では効果が弱いか効果が認められない可能性が高いと考えられます。その場合、NOSの活性を高めるため、ビタミンC(あるいは他の抗酸化剤と組み合わせて)をアルギニンと一緒に摂取することで、アルギニンの効果が十分に発揮できるものと考えられます(アルギナーゼが活性化されていたり、誘導されているような場合には、アルギナーゼ阻害剤のシトルリンをアルギニンと共に摂取する必要があります)。

  では、実際にビタミンCをアルギニンと一緒に摂取する場合、NOSを活性化させるためにはど
のくらいの量を摂取すればいいのでしょうか。先ほども述べましたように、NOSの活性低下は活性酸素によるBHNOS活性に必須の成分))の酸化分解が原因であり、ビタミンCの10μM以上、望ましくは70~100μMでそれが十分に抑制されることを示しました。健康な成人男女を用いて検討されたビタミンC摂取量とその血中(血漿中)濃度の関係を調べた試験において〔被験者は、ビタミンC欠乏状態(ビタミンC血中濃度5~10μM)にするために、1日にビタミンCを5mg未満しか含まないビタミンC制限食を摂らせました。ビタミンC制限食は試験期間中摂取させました〕5152、ビタミンCの長期摂取試験で定常状態における(摂取開始後25~35日前後で定常状態に達します)血中濃度(その血中濃度がずっと維持される状態)は、1日摂取量200mg程度で70μM程度まで増加しました。なお、それ以上摂取量を増やしても血中濃度はわずかしか増加しませんでした。その理由としては、それ以上の摂取量では摂取量が多くなるほど生物学的利用率1)が悪くなること〔例えば、摂取量が200mgでは生物学的利用率はほぼ100%(これはビタミンCは、消化管から吸収されたものはほとんど代謝されずに全身の血液中に移行するということを示しています。従って、ビタミンCでは生物学的利用率が吸収率にほぼ等しいと考えられます)ですが、500mg以上では約7割以下です〕、また、吸収されたものも尿中にほとんどが排泄されることが示されました。例えば、摂取量が100mgでは、尿中に25~50mg排泄されます。500mgでは、生物学的利用率(吸収率)は約7割で、吸収された量の7~8割は尿中に排泄されます。このことは、ビタミンCの摂取時体内残存量には限界があり(摂取した分のうちの50~75mg程度と考えられます。なお、この量は、ビタミンCの必要量や、体内貯蔵量が変化しても変わってくる可能性があります)、それ以上はいくら摂取しても、吸収されないか、吸収されてもすぐに排泄されることを示しています。また、日本人(成人)は平均100mg程度を毎日食物から摂取しているとされていますので53、通常100mg程度を摂取すれば、NOSの活性化に十分な70μM付近に達すると考えられます。これらのことから、効果を十分に保つと共に、無駄な摂取を防ぎ(無駄な摂取は体に余計な負担をかけます。また、資源の無駄遣いや原価の上昇を招きます)、安全性面でも心配がないビタミンCの摂取量は、1日100mg程度が望ましいと考えられます。一方、ビタミンCが欠乏しているような場合[ダイエットや食生活の乱れなどでビタミンCの摂取量が非常に少ない場合や、酸化ストレスの上昇〔食べ過ぎ、運動不足、ストレス、喫煙などのライフスタイルの乱れ、あるいは老化や老化病(例えば、肥満、メタボリックシンドローム、高血糖、高血圧、脂質代謝異常、糖尿病、加齢黄斑変性症、動脈硬化、心筋梗塞、免疫異常、アルツハイマー病、がんなど)、パーキンソン病、喘息、関節リウマチ、腎炎など〕などでビタミンCの必要量が大きく増加している場合など]、ビタミンCの1日100mg程度の摂取によっては、血中濃度は60μM前後まで低下する可能性がありますので5152、1日摂取量を200mgまで増量してもよいでしょう(なお、ビタミンCの血中濃度が60μM前後でも、NOS活性増強作用やBHの酸化分解抑制作用はピーク時の90%以上保持されていますので特に問題ないと考えられます4146)。

  
なお、厚生労働省によるビタミンCの摂取推奨量は、心臓血管系の疾病予防効果並びに有効な抗酸化作用を指標として設定され、成人(18歳以上)において男女とも1日100mgとなっています54。これに関連した文献として、例えば、Khawらによる報告があります55)。彼らは、英国のノーフォーク在住の45歳から79歳の19,496人の男女について、血漿中のビタミンCの濃度と、全死亡率、および心血管病、虚血性心疾患、およびがんによる死亡率との関係を、前向き試験において、4年間追跡しました。被験者は、血漿中ビタミンCの濃度によって5群に分けられました。血漿中ビタミンC濃度と、全死亡率、および心血管病、虚血性心疾患による死亡率は、逆の関係にありました。すなわち、男性においては、全死亡率に関して、1群(平均血漿中ビタミンC濃度21μmol/L。ビタミンCの1日平均摂取量51mg)の相対リスクを1としますと、2群(平均血漿中ビタミンC濃度38μmol/L。ビタミンCの1日平均摂取量77mg)の相対リスクは0.80、3群(平均血漿中ビタミンC濃度48μmol/L。ビタミンCの1日平均摂取量83mg)の相対リスクは0.59、4群(平均血漿中ビタミンC濃度57μmol/L。ビタミンCの1日平均摂取量92mg)の相対リスクは0.47、5群(平均血漿中ビタミンC濃度73μmol/L。ビタミンCの1日平均摂取量109mg)の相対リスクは0.48となり、1群に比べ、4群と5群では相対リスクがほぼ半減しました。さらに、心血管病および虚血性心疾患による死亡率の相対リスクは、1群を1としますと、2群で0.90~1.18、3群で0.67~0.92、4群で0.29~0.35、5群で0.29~0.32となり、1群に比べ、4群と5群では相対リスクがほぼ1/3まで減少しました。また、いずれの死亡率においても、相対リスクの減少程度はほぼ4群でピークになり5群ではプラトーになるように見られました。また、女性においても同様の傾向が見られました。がんによる死亡率に関しては、男性では、ビタミンCの血漿中濃度の増加と相対リスクが逆の関係にあり、1群の相対リスクを1としたとき、2群で0.74、3群で0.51、4群で0.57、5群で0.47とほぼ半減し、3群以降リスク低減効果はピークになるように見られました。一方、女性では、がんによる死亡率と血漿中ビタミンC濃度の増加との間には相関関係は見られませんでした。このように、ビタミンCの血漿中濃度が50~60μM程度(ビタミンCの1日摂取量80~90mg程度)のとき、全死亡率、心血管病、虚血性心疾患、がんによる死亡率を最も低下させ、それより血漿中濃度が高くても(あるいは摂取量が多くても)効果はそれ以上強くならずプラトーになることが分かりました〔これは、種々の病気による死亡、特に心血管病(心臓病、種々の血管病)、虚血性心疾患(心筋梗塞)、あるいはがんによる死亡の抑制には、ビタミンCの1日摂取量は100mg程度あれば十分であるということを示しています〕。これは、厚生労働省によるビタミンCの摂取推奨量が、成人(18歳以上)において男女とも1日100mgとなっていることを、データ面から支持するものです。また、心血管病(虚血性心疾患を含む)による死亡に対する抑制効果が特に強いということは、心血管病の原因が主に動脈硬化に基づくものであるということ、動脈硬化は活性酸素による血管内皮細胞の障害とeNOSの活性低下によるNO生成の低下と活性酸素(スーパーオキシド)生成の増加が主な原因の一つと考えられていること、ビタミンCは活性酸素を抑制し、eNOSの活性酸素による活性低下を防いでeNOS活性を高めNO生成を増加させ活性酸素(スーパーオキシド)の生成を低下させることで動脈硬化を抑制したと考えられることなどによって説明することができます。さらに、ビタミンCと共に、eNOSの活性を高めNOの生成を増加させるアルギニン(とシトルリン)を摂取することで、動脈硬化の抑制はさらに強力になり、心血管病による死亡率をさらに低下させることが期待できるということはすでに述べました。

  以上をまとめますと、
③第三の問題点:アルギニンの最も重要な作用として、アルギニンがNOS(一酸化窒素合成酵素)によって変化を受け生成するNO(一酸化窒素)による働きがありますが、NOSは活性酸素の影響を受けやすく、活性酸素によってその活性が低下します」に対して、抗酸化剤のビタミンCを用いることでこれを克服することが可能と考えられます。人に実際に用いる場合、ビタミンCの摂取量は1日100mg程度が望ましいと考えられます。ビタミンCをアルギニン(またはアルギニンとシトルリン)と一緒に摂取することで、アルギニン単独(あるいはアルギニンとシトルリン)に比べて、NOを介する活性は相乗的に活性化されることが期待できます(例えば約2倍の活性増強効果)。
  老化や老化病のほとんどは、アルギニンによって予防や改善が期待できますが、その作用の大部分はNOを介していること、老化や老化病では酸化ストレスが亢進していることなどから、寿命延長や若返り、老化および老化病の抑制を期待してアルギニン(やアルギニンとシトルリン)を用いる場合、アルギニン単独(あるいはアルギニンとシトルリン)ではなくビタミンCを一緒に摂取することが、その効果を高めるために必須のことと考えられます。



3.アルギニンの欠点を克服し、超強力・超持続を目指した、進化型「スーパーアルギニンサプリメント」の開発の試み

これまで議論してきましたように、「アルギニン」には様々な素晴らしい働きがあることを述べました。
アルギニンは、アンチエイジング効果(寿命延長美肌効果など)を示し、老化や老化病や体の異常〔肥満メタボリックシンドローム糖尿病糖尿病合併症動脈硬化心血管病
ED高血圧症心不全認知症感染症骨粗鬆症がん不妊症妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)消化性潰瘍肝障害ひどい慢性の痛み貧血床ずれ子供の低身長など〕を強力に予防・改善する画期的成分です。しかも、体に必要なアミノ酸で生体成分ですので、安全性の問題はほとんどありません。(経口の医薬品はほとんどが化学合成物質で、体にとっては異物ですので、重篤な場合死に至る副作用が避けられませんが、アルギニンは私たちの体に欠かすことのできないアミノ酸で生体成分ですので副作用の心配はほとんどありません。安心してお飲みいただけます)。

◎これらのアルギニンの超健康効果は、そのアミノ酸効果、成長ホルモン効果、一酸化窒素(NO)効果、糖化抑制効果、抗酸化効果、免疫増強効果などによって行われると考えられます。


◎例えば、「アルギニン」は、一酸化窒素(NO)を介して、
老化や若返りの二大説である、遺伝子説と摩耗説の両方にアタックし、寿命を延ばしたり(長寿)、老化および老化病の抑制が期待できます。
すなわち、アルギニンはNOを介して、テロメラーゼを活性化してテロメアを伸ばし、長寿遺伝子のサーチュイン遺伝子を活性化し、これらの働きによって、老化や老化病を抑制して、長寿や若返りが期待できます(「アルギニン(NO)は、テロメラーゼおよび長寿遺伝子(サーチュイン)を活性化し、寿命を延ばし、老化および老化病を抑制し、若返りが期待できる超画期的成分です!!」をご参照ください)。

◎このような
アルギニンのスーパーメディシン的な素晴らしい働きと安全性の高さは、体を健康に保つために無くてはならない生体成分のアルギニンだからこそ可能であり、現在までの(そして恐らくはこれからも)医薬品ではとても望むことはできません(医薬品は特定の病気に対する治療効果を目的として開発されるため、一つあるいは多くても数種の病気にしか治療効果は期待できません。また、特に経口剤はほとんどが化学合成物質ですので、副作用は避けることはできず、死に至るような重篤な副作用を含め、安全性面で多くの問題があります)。また、アルギニンは、サプリメントとしても、その効果を示す人や動物等でのデータの豊富さや効果の強力さなどの点から、これまで見出されてきたサプリメント成分の中で最高の成分と考えられます。

◎そこで、私たちは、長寿や若返り、老化や老化病の予防・改善を目的として、健康な人から病気で悩む人まで安心して摂取できる、本格的
アルギニンサプリメントの開発を企図してきました。しかし、その際いくつかの問題点として、アルギニンのアルカリ性による消化管障害、あるいは味のまずさによる飲みにくさなどがあげられました。そして、それらを解決したサプリメントの開発に2003年初めて成功し、本邦初の本格的アルギニンサプリメントとして販売してきました(「副作用がなく大変飲みやすい『アルギニンサプリメント』の開発」をご参照ください)。

◎しかしながら、その後のアルギニンに関する多くの研究によって、アルギニンにはさらにいくつかの大きな問題点があることが分かってきました。
  第一の問題点は、
アルギニンは、経口摂取時の生物学的利用率(体に利用される割合)が悪く〔摂取したアルギニンの2~5割しか体に利用されません。つまり5~8割は代謝(分解)されます〕、持続性が短い(4~6時間程度。つまり1日4~6回程度は摂取する必要があると考えられます)ということです。
  第二の問題点は、
アルギニンは、アルギナーゼによって分解されるため、アルギナーゼ活性が高い場合〔老化、メタボリックシンドローム、糖尿病、高血圧、循環器病(動脈硬化、心筋梗塞、脳卒中、糖尿病性血管障害、心不全、肺動脈高血圧症、末梢血管障害、EDなど)、喘息、肝障害、妊娠高血圧症候群、感染症、がんなどにおいて、あるいは長期間の摂取(例えば3ヶ月程度以上など)や大量摂取(例えば1日3g程度以上など)などにおいて〕、アルギニンの体内濃度が低下し、アルギニンの働きが低下したり、消失したり、場合によってはかえって健康障害を起こしたり、病状を悪化させたりします。
  第三の問題点は、
アルギニンの最も重要な作用として、アルギニンがNOS(一酸化窒素合成酵素)の働きによって変化を受け生成するNO(一酸化窒素)による働きがありますが、NOSは活性酸素の影響を受けやすく、酸化ストレス(活性酸素)が亢進しているとき〔食べ過ぎ、運動不足、ストレス、喫煙などのライフスタイルの乱れ、あるいは老化や老化病(例えば、肥満、メタボリックシンドローム、高血糖、高血圧、脂質代謝異常、糖尿病、加齢黄斑変性症、動脈硬化、心筋梗塞、免疫異常、アルツハイマー病、がんなど)、パーキンソン病、喘息、関節リウマチ、腎炎など〕、NOSの活性が低下するために、NOの生成が減少したり、NOの代わりに活性酸素(スーパーオキシド)を生成したりしますので、アルギニン(NO)の働きが減少したり、消失したり、生成した活性酸素によってかえって健康が損なわれたり、病状が悪化したりする可能性があります。


第一の問題点は、アルギニンと共にシトルリン(1:1の比率で)を一緒に摂取することでこれを克服することが可能と考えられます。アルギニン単独で摂取した場合に比べ、アルギニンと共にシトルリン(1:1の比率で)を一緒に摂取することで、アルギニンの血中濃度のピークは早く(摂取後0.5~1時間程度に)、より高く(3倍程度以上)、そして血中濃度持続時間はより長く(3倍程度)なることが期待できることが分かりました。つまり、アルギニンは、生物学的利用率が悪くて持続性が短いために、大量にそして頻回に(1日に4~6回程度以上)摂取しなければなりませんでしたが、アルギニンと共にシトルリン(1:1の比率で)を一緒に摂取することで、効果の発現が早く、より少量で(3分の1程度以下)、より持続が長くなる(1日に2回程度ですむ)ことが期待できます。(詳しくは「①第一の問題点の克服」をご参照ください)。

◎第二の問題点は、アルギナーゼ阻害剤のシトルリンを用いることでこれを克服することが可能と考えられます。人に実際に用いる場合、シトルリンの摂取量は1日1000mgあるいはそれ以上が望ましいと考えられます。アルギニンシトルリンの比率は1:1が望ましいと考えられます。すなわち、アルギニンシトルリン(1000mg+1000mg)あるいはそれ以上を毎日摂取することによって、アルギニン単独摂取に比べ、長期間にわたって効果が減弱することなく〔アルギニン単独では長期間(例えば3ヶ月程度以上)の摂取によって効果が減弱したり消失する可能性が高い〕、より強力に(アルギニン単独ではアルギナーゼによって分解されるため、効果が弱くなったり、消失したり、かえって悪化する可能性があります)、寿命延長や若返り、老化および老化病の抑制が可能になることが期待できます。(詳しくは「第二の問題点の克服」をご参照ください


◎第三の問題点は、
抗酸化剤のビタミンCを用いることでこれを克服することが可能と考えられます。人に実際に用いる場合、ビタミンCの摂取量は1日100mg程度が望ましいと考えられます。ビタミンCをアルギニンと一緒に摂取することで、アルギニン単独に比べて、NOを介する活性は相乗的に活性化されることが期待できます(例えば約2倍の活性増強効果)。老化や老化病のほとんどは、アルギニンによって予防や改善が期待できますが、その作用の大部分はNOを介していること、老化や老化病では酸化ストレスが亢進していることなどから、寿命延長や老化および老化病の抑制を期待してアルギニンを用いる場合、アルギニン単独ではなくビタミンCを一緒に摂取することが、その効果を高めるために必須のことと考えられます。(詳しくは「③第三の問題点の克服」をご参照ください

  しかしながら、活性酸素は水層だけでなく脂質層でも生成します。ビタミンCは水溶性のため水層では抗酸化作用を示しますが、脂質層(細胞膜など)では働かないため、脂質層で働く抗酸化剤が必要です。脂質層で働く抗酸化剤として主なものにビタミンEがあります。この点を考慮し、林らの研究では抗酸化剤としてビタミンCと共にビタミンEも使用したものと考えられます。さらに、近年コエンザイムQ10が抗酸化剤として注目されていますが、ビタミンCとビタミンEとコエンザイムQ10は抗酸化ネットワークを作りお互いに助け合って強力に抗酸化作用を示すとされています56
  ビタミンEの摂取量については色々議論のあるところですが、最近の大規模なメタアナリシス(対象者135,967人)の結果から”ビタミンEは1日に150IU(100mg)を超えた量を摂取すると死亡率が増える”と報告されています57)
そのため、ビタミンEのおすすめする摂取量は、1日150IU(100mg)以下です。この理由として、大量のビタミンEが存在すると、脂質層で、ビタミンEと活性酸素やラジカルが反応して生成するビタミンEラジカルの量が増え、これがプロオキシダント(酸化促進剤)となって傷害を引き起こすためと考えられています。ビタミンEは脂溶性のためビタミンEラジカル(安定ラジカル)は脂質層に長くとどまります。通常ビタミンEラジカルのラジカルは脂質層と水層の境界面で水溶性の抗酸化剤(ビタミンCなど)に受け渡され、ビタミンEが再生されますが、ビタミンEラジカルの量が多くなると脂質層でさらなるラジカル傷害を進めることになったと考えられます。これらのことから、おすすめするビタミンEの摂取量は1日150IU(100mg)以下です。それを超えた量ですと長期間の摂取で死亡率が増加する可能性があります。このように、脂溶性の抗酸化剤は多量を摂取することには十分注意する必要があります。

  コエンザイムQ10の摂取量につきましては、厚生労働省より「原則医薬品(ノイキノン58)など)の1日用量(1日30mg)を超えないように」との指導がなされていますが59)、サプリメントとしての長期安全性が保障されていない現状では、これは当然のことと考えられます。短期間の摂取でいくら安全でも長期間の摂取で安全とは限りません。例えば、ビタミンEはかなり安全性の高い物質と信じられてきましたが、長期間の摂取について多数の人について調査したところ、前述しましたようにビタミンEは1日に150IU(100mg)を超えた量を摂取すると死亡率が増える”というメタアナリシスの結果が報告され、1日100mgを超えての摂取は推奨されなくなりました。コエンザイムQ10も、ビタミンEと同様に脂溶性の抗酸化剤ですので、これと同じ理由で高用量摂取がかえって健康を損なう可能性があります。これらのことから、コエンザイムQ10のおすすめする1日摂取量は1日30mgです。

◎以上の検討結果を基に、「アルギニン」の欠点を克服し、超強力・超持続を目指した、進化型『スーパーアルギニンサプリメント』」の開発を試みました。その結果、アルギニン(1000mg)、シトルリン(1000mg)、アスコルビン酸2-グルコシド(安定・持続型ビタミンC誘導体)(200mg)(ビタミンC100mgに相当)※1、ビタミンE(50mg)、コエンザイムQ10(30mg)を基本配合とし、これにアルギニンのアルカリ性の中和剤としてクエン酸※2を加え、さらにダイエットや食生活の乱れた方への対策としてビタミンB類(ビタミンB、B、B、B12)、ナイアシン、葉酸、パントテン酸を加え、また、寝たきりを防ぐための骨対策としてビタミンDとカルシウムを、男性のために亜鉛を加え、最後に味を調え飲みやすくするため天然甘味料のエリスリトール※2を加え、顆粒状のサプリメントとしました(特許出願中)。そして、この配合量を1日の基本量としました。なお、体調などに合わせて摂取量は増減します。

※1:ビタミンCとして、ビタミンCそのものではなく、アスコルビン酸2グルコシド(安定・持続型ビタミンC誘導体)(200mg)(ビタミンC100mgに相当)を使用した理由は、ビタミンCとアミノ酸(アルギニンなど)を混合すると褐変反応を生じるためです60)。実際、ビタミンCを配合した製品では、酸素不透過性の袋に充填密封して(スティック包装)、加速安定性試験(40℃、75%RH)の条件下で17日間保管しただけで、細粒のブロッキング(部分的固化)と変色が生じました。そこでビタミンCをアスコルビン酸2-グルコシドに変更したところ、加速安定性試験において変化は見られませんでした。アスコルビン酸2-グルコシドはビタミンCと異なり、化学的に安定で、酸化、熱、光に対して影響を受けにくく、経時的劣化がすすむビタミンCの弱点が解消されているとされていますので61)、その物性が反映されたものと考えられます。さらに、ビタミンCは摂取後速やかに血中濃度が低下しますが(摂取後6~7時間以内には摂取前の値に戻るとされています62))、アスコルビン酸2-グルコシドは摂取した後、体内で酵素的にゆっくりとアスコルビン酸(ビタミンC)に代謝・吸収されるために、持続性が長いとされ61)、これもアスコルビン酸2-グルコシドの大きなメリットとなります。
※2:この配合理由については副作用がなく大変飲みやすい『アルギニンサプリメント』の開発」をご参照ください。




 
ここで開発した『
スーパーアルギニンサプリメント』は(開発におよそ1年8ヶ月程かかりました)、アルギニンの大きな問題点を克服し、超強力〔アルギニンの3倍程度以上、あるいはアルギナーゼが活性化されている場合や酸化ストレス(活性酸素)が亢進している場合は7倍程度あるいはそれ以上〕・超持続(アルギニンの約3倍で、長期間(例えば3ヶ月程度以上)効果が期待できる、従来のアルギニンサプリメントを大きく進化させた、寿命延長や若返り、老化および老化病抑制のための画期的スーパーアンチエイジングサプリメントであると考えられます。




(文献、資料、注釈)
1)生物学的利用率とは、投与された薬物や化学物質が、どれだけ全身の循環血液中に到達し作用するかの指標の一つです。薬物や化学物質を経口投与しますと、消化管からの吸収効率、肝臓や消化管での代謝(初回通過効果)の影響を受けるため、循環血液中に全てが到達するわけではありません。一方、静脈内投与では、一般に投与された薬物(や化学物質)は、ほぼ完全に生体で利用されます。そのため、生物学的利用率は、経口投与時の薬物(や化学物質)の循環血液中の量〔AUC:薬物(や化学物質)の血中濃度(縦軸)と投与後時間(横軸)によって囲まれた部分の面積〕を、静脈内投与時の薬物(や化学物質)の循環血液中の量(AUC)で割って出します(%)。
2)"Pharmacokinetics and Safety of Arginine Supplementation in Animals" J Nutr, 137, 1673S (2007).
3)"Pharmacokinetics of intravenous and oral L-arginine in normal volunteers" Br J Clin Pharmacol, 47, 261 (1999).
4)"Pharmacokinetics of L-arginine during chronic administration to patients with hypercholesterolaemia" Clinical Science, 96, 199 (1999).
5)"Intestinal Mucosal Amino Acid Catabolism" J Nutr, 128, 1249 (1998).
6)"Arginine metabolism: nitric oxide and beyond" Biochem J, 336, 1 (1998).
7)"Arginine metabolism and nutrition in growth, health and disease" Amino Acids, 37, 153 (2009).
8)"Recent advances in arginine metabolism: roles and regulation of the arginases" Brit J Pharmacol, 157, 922 (2009).
9)"Pharmacokinetic and pharmacodynamic properties of oral L-citrulline and L-arginine: impact on nitric oxide metabolism" Br J Clin Pharmacol, 65, 51 (2007).
10)"Arginases and Arginine Deficiency Syndromes" Curr Opin Clin Nutr Metab Care, 15, 64 (2012).
11)"Arginase as a potential target in the treatment of cardiovascular disease: reversal of arginine steal?" Cardiavascular Research, 98, 334 (2013).
12)"Arginase: an emerging key player in the mammalian immune system" British Journal of Pharmacology, 158, 638 (2009).
13)アルギニンで若返る!」をご参照ください。
14)『超アミノ酸健康革命-21世紀のサプリメント「アルギニン」のすべて』(古賀 弘著、今日の話題社)。
15)"Effects of Dietary L-Arginine on Atherosclerosis and Endothelium-Dependent Vasodilatation in the Hypercholesterolemic Rabbit: Response According to Treatment Duration, Anatomic Site, and Sex" Circulation, 94, 498 (1996).
16)"L-Arginine Therapy in Acute Myocardial Infarction: The Vascular Interaction With Age in Myocardial Infarction (VINTAGE MI) Randomized Clinical Trial" JAMA, 295, 58 (2006).
17)"L-Arginine Supplementation in Peripheral Arterial Disease: No Benefit and Possible Harm" Circulation, 116, 188 (2007).
18)"Pharmacokinetics of intarvenous and oral L-arginine in normal volunteers" Br J Clin Pharmacol, 47, 261 (1999).
19)"Pharmacokinetic and pharmacodynamic properties of oral L-citrulline and L-arginine: impact on nitric oxide metabolism" Br J Clin Pharmacol, 65, 51 (2008).
20)"Long term exposure to L-arginine accelerates endothelial cell senescence through arginase-II and S6K1 signaling" Aging, 6, 369 (2014).
21)"Paradoxical effect of L-arginine: acceleration of endothelial cell senescence" Biochem Biophys Res Commun, 386, 650 (2009).
22)"Positive crosstalk between arginase-II and S6K1 in vascular endothelial inflammation and aging" Aging Cell, 11, 1005 (2012).
23)"Tetrahydrobiopterin, L-Arginine and Vitamin C Act Synergistically to Decrease Oxidant Stress and Increase Nitric Oxide That Increases Blood Flow Recovery after Hindlimb Ischemia in the Rat" Mol Med, 18, 1221 (2012).
24)
”L-シトルリンの機能性と食品への応用” FOOD RESEARCH, 2009.7, 10.
25)”L-シトルリンの生理機能” New Food Industry, 51(No.9), (1) (2009).
26)”シトルリンの代謝と薬効” 化学と生物、46(No7), 460 (2008).
27)"Diabetes-induced Coronary Vascular Dysfunction Involves Increased Arginase Activity" Circ Res, 102, 95 (2008).
28)"Arginase inhibition alleviates hypertension in the metabolic syndrome" Brit J Pharmacol, 169, 693 (2013).
29)"Therapeutic Use of Citrulline in Cardiavascular Disease" Cardiovascular Drug Reviews, 24, 275 (2006).
30)プロドラッグとは、主として薬の世界で使われる用語で、体内で代謝されてから作用を示すタイプの薬のことをいいます。高い薬理活性がある化合物でも、吸収性が悪かったり、投与した後消化管内や肝臓で分解されたりして、体内に有効成分が十分移行しない場合があります。そのようなとき、体内あるいは目標部位に到達してから薬理活性のある化合物に変換され、効果を発揮するように化学的に修飾されたり、そのような働きを示す化合物がプロドラッグです。
31)"Pharmacokinetic and pharmacodynamic properties of oral L-citrulline and L-arginine: impact on nitric oxide metabolism" Br J Clin Pharmacol, 65, 51 (2008).
32)"Oral supplementation with a combination of L-citrullin and L-arginine rapidly increases plasma L-arginine concentration and enhances NO bioavailability" Biochem Biophys Res Commun, 454, 53 (2014).
33)AUCとは、通常薬学で使われる用語で、血中濃度時間曲線下面積ともいいます。薬剤を投与してから、血中に移行して消失するまでの濃度を表したグ ラフで描かれる曲線と横軸(時間軸)によって囲まれた面積です。体循環血液中に入った薬物量に比例するので、体内に取り込まれた薬の量を示す指標となります。
34)”シトルリンおよびアルギニンを含有する即効性血中アルギニン濃度上昇型経口剤” 公開特許公報、特開2014-193919 (2014); 特許公報、特許第5872636号。
35)"Cardiovascular effects of arginase inhibition in spontaneously hypertensive rats with fully developed hypertension" Cardiovasc Res, 87, 569 (2010).
36)"Arginase inhibition restores NOS coupling and reverses endothelial dysfunction and vascular stiffness in old rats" J Appl Physiol, 107, 1249 (2009).
37)"Diabetes-induced Coronary Vascular Dysfunction Involves Increased Arginase Activity" Circ Res, 102, 95 (2008).
38)"Arginase inhibition alleviates hypertension in the metabolic syndrome" Brit J Pharmacol, 169, 693 (2013).
39)「協和発酵バイオ(株)よりの提供資料」。
40)"L-citrulline and L-arginine supplementation retards the progression of high-cholesterol-diet-induced atherosclerosis in rabbits" PNAS, 102, 13681(2005).
41)"L-Ascorbic Acid Potentiates Endothelial Nitric Oxide Synthesis via a Chemical Stabilization of Teterahydrobiopterin" J Biol Chem, 276, 40 (2001).
42)”フリーラジカルと抗酸化栄養素”「ハーパー・生化学」(原書29版)(丸善出版、平成25年)、p.636。
43)「アンチエイジング医学の基礎と臨床」(日本抗加齢医学会。2011年)。
44)「活性酸素の本当の姿」(有限会社ナップ、2014年)。
45)"Metabolic Syndrome, Aging and Involvement of Oxidative Stress" Aging and Disease, 6, 109 (2015).
46)"Ascorbic Acid Enhances Endothelial Nitric Oxide Synthase Activity by Increasing Intracellular Tetrahydrobiopterin" J Biol Chem, 275, 17399 (2000).
47)"Interactions of Peroxynitrite, Tetrahydrobiopterin, Ascorbic Acid, and Thiols" J Biol Chem, 278, 22546 (2003).
48)"Effects of vitamin C on intracoronary L-arginine dependent coronary vasodilatation in patients with stable angina" Heart, 91, 1319 (2004).
49)"Metabolic Syndrome, Aging and Involvement of Oxidative Stress" Aging and Disease, 6, 109 (2015).
50)"Oxidative Stress, Prooxidants, and Antioxidants: The Interplay" Biomed Res Int, 2014, 761264 (2014).
51)"Vitamin C pharmacokinetics in healthy volunteers: Evidence for a recommended dietary allowance" Proc Natl Acad Sci USA, 93, 3704 (1996).
52)"A new recommended dietary allowance of vitamin C for healthy young women" Proc Natl Acad Sci USA, 98, 9842 (2001).
53)「平成21年国民健康・栄養調査報告」 (厚生労働省、平成23年10月)。
54)「日本人の食事摂取基準(2015年版)」策定検討会報告書(厚生労働省、平成26年3月)。

55)"Relation between plasma ascorbic acid and motality in men and women in EPIC-Norfolk prospective study: a prospective population study" Lancet, 357, 657 (2001).
56)”コエンザイムQ-10への期待” New Food Industry, 44, 1 (2002)。
57)”Meta-Analysis: High-Dosage Vitamin E Supplementation May Increase All-Cause Mortality" Ann Intern Med, 142, 37 (2005).
58)「ノイキノン」の添付文書
59)コエンザイムQ10を含む食品の取り扱いについて”(厚生労働省。平成18年)。
60)”L-アスコルビン酸、デヒドロアスコルビン酸とグリシンとの褐変反応について” 栄養と食糧、20(No3), 215 (1968)など。
61)安定・持続型ビタミンCの発明から大学発ベンチャーの立ち上げと保健機能性食品の誕生までの道程” 日薬理誌、132, 160 (2008).
62)"Vitamin C: A Concentration-Function Approach Yields Pharmacology and Therapeutic Discoveries" Adv Nutr, 2, 78 (2011).


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4.お知らせ(ホームページ責任者、参考図書)

【ホームページ責任者】


古賀 弘
Eメール:kogahrs555@nifty.com

健康コンサルタント
医薬品・健康食品研究開発コンサルタント
薬学博士(東京大学)
日本抗加齢医学会正会員


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【参考図書】

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超アミノ酸健康革命-21世紀のサプリメント「アルギニン」のすべて』(古賀 弘著、今日の話題社、1,575円(税込))


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