テロメアを長くする薬は本当に若返りと長寿の特効薬か!?
ーアルギニン(NO)は寿命を延長し、老化および老化病を抑制しますが、その働きにはテロメラーゼの活性化によるテロメア伸長作用が大きく関わっているものと考えられますー
      

【ま と め】

現在老化説として最も有力な説はプログラム説と摩耗説です

◎摩耗説については、アルギニン(NO)は、長寿遺伝子(サーチュイン)を活性化し、ミトコンドリアの働きを高めて、体を活性化し、寿命を延ばし、老化、老化病、肥満、メタボリックシンドロームを強力に予防したり改善する画期的成分です!!に詳しく述べましたのでご参照ください。

プログラム説とは、寿命や老化は遺伝的にプログラムされているとするものです。ここではプログラム説の主体であるテロメア説について最新の文献をもとに詳しく解説します。また、最も強力なアンチエイジング成分と考えられるアルギニンがテロメアにどのように関わっているかを述べます。

テロメア説とは、寿命や老化の程度はテロメアの長さによって決まるというものです。実際、テロメアが長い人と短い人を比べた場合、テロメアが長い人の方がより健康で長生きします。また、テロメアが短いと、死亡率が高くなり、老化が促進されたり、老化病(肥満、高脂血症、2型糖尿病、高血圧、動脈硬化、心血管病、心不全、骨粗鬆症など)になるリスクが高くなることが報告されています。そのため、若さや健康を保ち、寿命を延ばすためにはテロメアを長く保つことは極めて重要なこととなります。


◎テロメアは細胞分裂に伴いDNAが複製される度に短くなりますが、活性酸素によって傷つけられても短くなります。一方、テロメラーゼはテロメアを伸ばします。活性酸素はまたテロメラーゼも抑制します。そのため、活性酸素の害からテロメアやテロメラーゼを守ったり、テロメラーゼを活性化することで、テロメアを長く保つことができますので、それによって寿命を延ばし、老化や老化病を抑制することが可能になると考えられます。

テロメラーゼの活性化が若返りの特効薬になりうる可能性が示されました。テロメラーゼ活性を失くしたマウスでは、機能障害を起こした短いテロメアを示し、細胞は5〜6回の継代培養後分裂を停止し、老化した細胞の形態を示しました。また、DNA損傷の増加、種々の組織の機能低下がみられました。例えば、精巣萎縮と睾丸サイズの減少とそれによる生殖能力の低下、顕著な脾臓の機能低下、脳における神経幹細胞の自己複製能の減少や神経細胞増殖能の低下などによる脳重量の減少、嗅覚減退など老化したマウスに見られる現象が見られました。また、テロメラーゼの活性を失くしたマウスではそうでないマウスに比べ寿命がほぼ半分に短縮しました。一方、このマウスの細胞にテロメラーゼが活性化されるような処置を行うと、テロメアは長くなり、細胞は分裂増殖を再開し、さらに8回以上の継代培養後も分裂し続けました。さらにマウスではテロメラーゼ活性化後わずか4週間後に、組織や臓器の若返りが見られました。例えば、正常な精巣サイズへの回復と生殖能力の増加、脾臓重量の回復が見られました。また、脳においては神経幹細胞の自己複製能の回復や神経細胞増殖能の正常化、脳重量の回復などが見られました。嗅覚に関してはほぼ正常レベルまで回復しました。このマウスでは寿命も延長しました。これらの結果は、加齢によってテロメアが短くなり、老化や老化病になっても、テロメラーゼを活性化して、テロメアを長くすれば、若返ることができることを示しています。つまり、テロメアを長くすることができる薬は若返りと長寿の特効薬になりうることを示しています。

テロメラーゼはNO(一酸化窒素)によって主にコントロールされていると考えられています。すなわち、テロメラーゼはNOによって活性化されます。

種々の生体成分や天然成分やライフスタイルが、死亡率を低下させたり、寿命を延ばしたり、健康寿命を延ばしたり、老化を防いだり、老化病を抑制することが知られていますが、それらの成分やライフスタイルは、テロメアを保護してその短縮を抑制したり〔抗酸化剤、ビタミン類(葉酸、ビタミンB12、ナイアシン、ビタミンDなど)、ミネラル(マグネシウム、亜鉛など)、オメガ―3脂肪酸、ポリフェノール、運動、地中海食、エストロゲンなど〕、テロメラーゼを活性化(保護)(抗酸化剤、地中海食、ビタミンD,エストロゲン、亜鉛など)します。それらの働きはそれら成分やライフスタイルによる抗酸化作用やNOを介する作用が主に関係しているものと考えられます。

◎アルギニンは、一酸化窒素合成酵素(eNOS)を活性化し、一酸化窒素(NO)の生成を促進します。NOはテロメラーゼを活性化し、テロメアの短縮を防いだり、テロメアを伸ばしたりして、細胞の老化を防ぎます。このようにして、アルギニンは、寿命を延長し、老化や老化病を抑制するものと考えられます。

◎アルギニン(NO)は、テロメラーゼを活性化しテロメア長を維持・伸長するだけではなく、長寿遺伝子(サーチュイン)の活性化など、老化や老化病を抑制するための様々な働きをします。また、アルギニンは、老化の大きな原因の一つと言われている糖化を抑制します。実際、アルギニンは、寿命を延長し、老化や老化病を強力に抑制しました。

◎このように、アルギニンは、現在老化の最も有力な二大説であるプログラム説と摩耗説両面から強力に老化を抑制する、これまでの中で最も強力なアンチエイジング成分と考えられます。さらに抗酸化剤(ビタミンC、ビタミンE、コエンザイムQ10など)と一緒に摂取することで、さらに強力に寿命を延長し、老化や老化病を強力に抑制することが期待できます。

◎『アルギニン』は生体成
分(体に必要なアミノ酸)です。アルギニンの安全性は高く副作用の心配はほとんどないと考えられます。

 



【目次】

I.テロメアの長さを維持したり、長さを伸ばしたりすることで、本当に若返りと長寿が可能か!?

【プログラム説とは】

1.ストレスによるテロメア短縮とその抑制
1−1)抗酸化成分の血中濃度とテロメアの長さとの関係
1−2)微量栄養素(ビタミン、ミネラルなど)はテロメアの長さにどう影響するか
1−3)栄養素とテロメアの関係(レビュー)
1−4)運動とテロメアの関係

2.テロメラーゼとその活性化
2−1)テロメラーゼの再活性化によって若返ることができる!!
2−2)食生活とテロメラーゼ活性の関係
2−3)体内成分とテロメラーゼとの関係
2−3−1)ビタミンDとテロメラーゼの関係
2−3−2)女性ホルモンとテロメラーゼの関係
2−3−3)アルギニン(NO)とテロメラーゼの関係
図.アルギニン(NO)および他成分のテロメラーゼおよびテロメアに対する作用と老化および老化病抑制作用との関係


II.アルギニンの寿命延長、老化および老化病の予防・改善効果
表.アルギニン(NO)の寿命延長、抗老化、老化病抑制作用
図.アルギニン(NO)の寿命延長、抗老化および老化病抑制のメカニズム



III.お知らせ(ホームページ責任者、参考図書)


【お問合せ先】
本ページおよびアルギニンに関するお問い合わせは本ページ責任者古賀までお願いします(Eメール:kogahrs555@nifty.com



上記以外のアルギニンの働きについてお知りになりたい方は
アルギニンで若返る!』をご覧ください。

 



 I.テロメアの長さを維持したり、長さを伸ばしたりすることで、本当に若返りと長寿が可能か!?
  不老長寿は古来人間の究極の夢であり、そのため不老長寿の方法を求めて膨大な努力と研究が行われてきました。しかし、それも目立った成果はほとんどなくほとんどが徒労に終わってきました。しかしながら、近年の老化研究における目覚しい進歩のおかげで、現在老化の原因についてもかなり明らかにされてきました

  現在老化説として最も有力な説はプログラム説と摩耗説ですが、これらは全く独立したものではなくお互いに関連性があります。摩耗説とは簡単に言いますと、体に毒になる物質、特に活性酸素によって、体の成分、例えば遺伝子、タンパク質、脂質、糖類などが徐々に傷つけられることによって、細胞や組織や臓器の機能や働きが低下し、老化が引き起こされるというものです。この対策としては、体内の抗酸化システムの働きを強化するか、または/および、食物やサプリメントとして抗酸化成分をたっぷり取ればいいことになります。摩耗説については別の機会に詳しく述べたいと思います(「
アルギニン(NO)は、長寿遺伝子(サーチュイン)を活性化し、ミトコンドリアの働きを高めて、体を活性化し、寿命を延ばし、老化、老化病、肥満、メタボリックシンドロームを強力に予防したり改善する画期的成分です!!」を参照ください)。ここでは、主にプログラム説について詳しく述べることにします。

  
プログラム説の主体であるテロメア説については、テロメアとテロメラーゼの発見に寄与した3人の科学者に、2009年ノーベル生理学・医学賞が授与されたことで一躍有名になり、マスコミなどに広く取り上げられるようになって、それに働く成分がさも若返りや長寿の夢の特効薬のように言われたことがあります。このところ世間的にはそのブームも少し覚めた感じがありますが、実際には医学や科学の世界では次々とそれを裏付けるデータも蓄積されてきています。そこで、最新のデータも含め、そこのところを医学的、科学的に検証してみたいと思います。

  
また、アルギニン(NO)はテロメラーゼを活性化し、テロメア長を維持しますが、アルギニンが寿命(生存率)や老化や老化病にどういう働きを示すかについても述べたいと思います。


【プログラム説とは】

  プログラム説とは、寿命や老化は遺伝的にプログラムされているとするものです。例えば、動物の寿命は種によって固有の寿命があります。例えば、人の最大寿命は約120歳で、マウスの最大寿命は3歳以下です。このような種による寿命の違いは遺伝的に決まっています。また、身体の老化現象の多く、例えば、しわ、白髪、薄毛、物忘れなどのほとんどは程度の差はあれ加齢に伴って必然的に出現し、丁度遺伝的ににそれぞれがプログラムされているように見えます。また、女性の閉経は、一定の年齢になると全ての女性に起こり、遺伝的にプログラムされています。

  では遺伝子のどの部分が寿命や老化と関係しているのでしょうか。諸説がある中で現在最も注目されているものにテロメア説があります。生物の設計図であるDNAは、例えば私たち人の細胞では46本に分けられ、それぞれ線状の染色体として存在しています。この染色体の末端についているのがテロメアです。テロメアの働きは、一つは染色体末端の保護、もう一つは染色体の末端を完全に複製することです。ところで、テロメアには避けがたい宿命があります。それは細胞分裂に伴ってDNAが複製されるたびに短くなることです。人のテロメアは最初1万〜2万塩基対ありますが、細胞が増殖する過程で、1回の細胞分裂あたり100〜150塩基対ほど短くなります。テロメアが5000塩基対位まで短くなると細胞は分裂を停止し、細胞は老化しやがて死んでしまいます。このように、組織や臓器に老化細胞が増えていくと、組織や臓器は縮小し、働きも低下し身体全体が老化し人は死んでしまいます。ところで、人の最大寿命は120歳程度と考えられていますが、テロメアの長さから計算した最大寿命とほぼ一致します。ではどうしてほとんどの人は120歳前に死亡するのでしょうか。それは、人のテロメアは長い人と短い人がいるということです(個人差が大きい)。60歳あたりからすでに平均テロメア長が5000塩基対程度になる人もいれば、100歳になっても十分に長いテロメアを持っている人もいます。実際、テロメアが長い人と短い人を比べた場合、テロメアが短い人より長い人の方が長生きするというデータがあります。テロメアが短かった人たちは心臓血管系(3.18倍の死亡率)や感染症(8.54倍の死亡率)で亡くなる頻度が高かったそうです。なお疫学研究において、短い白血球のテロメア長(全身のテロメアの長さを反映)と、より高い死亡率、老化の促進および慢性疾患(肥満、高脂血症、動脈硬化、心血管病、心不全、2型糖尿病、高血圧、骨粗鬆症など)のより高いリスクとが関連することが報告されています。このことは、テロメアの短縮が細胞の老化を早め、肥満、高脂血症、動脈硬化、2型糖尿病、高血圧などの慢性疾患や感染症に罹りやすい体にし、死亡率を高めるものと考えられます。そのため、
若さや健康を保ち、寿命を延ばすためにはテロメアを長く保つことは極めて重要なこととなります。

【注】最近、慶応大学医学部が、英国 のニューカッスル大学との共同研究によって、百寿者(100歳以上)や遺伝的に百歳に到達する確率が高いと考えら れる百寿者の直系子孫(血縁のある子供)では、テロメア長がより長く保たれており、実際の年齢 が 80 歳代でも、60 歳代の平均値に匹敵する長さを有していることが分かったことを報告しています(百寿者の秘訣:健康寿命を延ばす二つの要因を発見 −1,554 名を対象とする大規模高齢者コホート研究−)。


1.ストレスによるテロメア短縮とその抑制

  しかしながら、最初同じくらいのテロメア長を持っていても寿命は同じとは限りません。それは、テロメアは色々なストレスによっても短くなるということです。ストレスとして、放射線や活性酸素などがありますが、これらはDNAを損傷しテロメアを短縮します。中でも活性酸素によってDNAは日常的に損傷しテロメアを短縮します。そのため、活性酸素に対し有効な対策を取ることは、テロメア短縮を遅らせ老化を防ぐのに有効と考えられています。


1−1)抗酸化成分の血中濃度とテロメアの長さとの関係

  実際、抗酸化成分の血中濃度とテロメアの長さとの関係を調べた研究があります7)。平均年齢66歳の高齢者(男女786人、オーストリア)について、ビタミンC,ルテイン、ゼアキサンチン、β−クリプトキサンチン、カンタキサンチン、リコペン、ビタミンE,カロテン、レチノールの血中濃度と白血球のテロメアの長さ(全身のテロメアの長さを反映)が測定されました。その結果、ルテイン、ゼアキサンチンおよびビタミンCとテロメア長との間に明らかに正の相関関係がありました。中でも
ビタミンCが最も相関関係が強力でした。一方、その他の抗酸化成分はテロメア長と相関関係はありませんでした。このことは抗酸化成分、中でも特にビタミンCがテロメアの長さの維持に保護的効果を有することを示しています。


1−2)微量栄養素(ビタミン、ミネラルなど)はテロメアの長さにどう影響するか

  また、一方、女性(586人。年齢35〜74歳。米国)を用いた疫学研究において、微量栄養素(ビタミン、ミネラルなど)が白血球のテロメア長にどう影響するかが調べられました8)。被験者の65%がマルチビタミン(種々のビタミンやミネラルを万遍なく配合)を摂取していました。そのうち74%がほぼ毎日摂取していました(すなわち全体のほぼ半分がマルチビタミンを毎日摂取していました)。マルチビタミンを毎日摂取している人は、摂取していない人に比べ、平均5.1%長いテロメアを有していました。この差は約9.8年分のテロメアに相当します。このことは、
マルチビタミンを毎日摂取している人は、摂取していない人に比べ、生物学的に約10年若いということになります。この効果は抗酸化剤サプリメント(抗酸化成分を主に配合)でも同様に認められました。このことは、マルチビタミンや抗酸化成分がストレス(活性酸素など)を抑制することでテロメアの短縮を防いだためと考えられます。さらに、食物から摂取した微量栄養素がテロメア長にどういう影響があるかが検討されました。その結果、ビタミンCとビタミンEをより多く摂取している人では明らかに(統計的に有意に)長いテロメアを有していることが示されました。一方、他の微量栄養素はテロメア長と関係ありませんでした。マルチビタミンを摂取していないグループでもビタミンCとビタミンEのより多い摂取はより長いテロメアと関係していました。これらの結果は、ビタミンや抗酸化成分、特にビタミンCやビタミンEは、テロメアの短縮を抑制し、生存率(寿命)を伸ばし、老化を抑制し、慢性疾患(動脈硬化、2型糖尿病、高血圧、肥満など)のリスクを低減させることが期待できることを示しています。


1−3)栄養素とテロメアの関係(レビュー)

  栄養素とテロメアの関係をまとめた文献があります9)。テロメアの長さは加齢、ストレス、感染症、肥満、慢性病(特に老化病、例えば、メタボリックシンドローム、生活習慣病、アルツハイマー病、パーキンソン病、がんなど)によって短くなることが知られています。加齢の場合は細胞分裂を繰り返したため、ストレス、感染症、慢性病の場合はそれらによって障害を受け消失した細胞を補うための増加した細胞分裂のため、テロメアが短縮していきます。これらの病気の根底には炎症が関与しています。炎症は酸化ストレスを生じます。そのため、炎症や酸化ストレスを軽減する成分はテロメアの短縮を防ぐことができます。テロメアは、健康的なライフスタイルや食事で長く維持されます。また、テロメアの長さを長くするテロメラーゼ(後述)の活性にもライフスタイルや食事が影響することが知られています。この文献では食事の成分(栄養素)がテロメアの長さにどう影響するかについて述べています。

●葉酸(ビタミンB群の一つ)はテロメアの合成に必要ですので、それが不足するとテロメアが短くなります。
●ビタミンB
12をサプリメントとして摂取すると、摂取しない場合に比べテロメアが長く維持されることが報告されています(女性)。ビタミンB12は抗酸化活性と抗炎症作用を持っています。そのため、高用量をサプリメントとして摂取した場合、ビタミンB12の抗酸化作用と抗炎症作用がテロメアを長く維持するのに寄与したものと考えられます。
●ニコチンアミド(ビタミンB群の一つ)は細胞においてテロメアの短縮を抑制します。ニコチンアミドは活性酸素の生成を抑制します。
●ビタミンAとβ−カロテンは、食事から摂取した場合、テロメア長を長く維持します(女性)。ビタミンAとβ−カロテンの抗酸化活性がテロメア長の維持に寄与したものと考えられます。なお、
ビタミンAとβ−カロテンはサプリメントとして摂取した時、死亡リスクを増加させる可能性があるという報告があります10)また、ビタミンAの過剰摂取は様々な安全性面での問題を生じます11)。β−カロテンの過剰症は特に報告されていませんが、喫煙者(過去喫煙していた人も含め)がサプリメントとしてβ−カロテンを摂取した場合、肺がん、前立腺がん、脳出血、心臓血管病、および死亡のリスクが増加する可能性があります12)。これらのことから、ビタミンAとβ−カロテンは食事から摂ることをおすすめします。サプリメントとして摂ることはおすすめできません。
●ビタミンDの血中濃度と白血球のテロメア長との間に正の相関関係があることが報告されています(女性)。ビタミンDは抗炎症作用を示しますのでこれがテロメアの短縮を防いでいるものと考えられます。
●ビタミンCとビタミンEは良く知られていますように、抗酸化活性を持っています。ビタミンCとビタミンEは、食事として摂取した場合でも、サプリメントとして摂取した場合でも、摂取量に応じてテロメアがより長くなりました(女性)。細胞を用いた試験において、ビタミンCとビタミンEは、通常の場合に比べ、細胞の寿命を数倍伸ばしました。また、細胞の老化を抑制しました。加齢に伴うテロメアの短縮はビタミンCとビタミンEで半分近くまで抑制されました。加齢に伴うテロメラーゼ活性の低下もビタミンCとビタミンEで抑制されました。このことは、
ビタミンCとビタミンEは、活性酸素を消去することによって、活性酸素によるテロメアの短縮とテロメラーゼの活性低下を抑制し、テロメア長を長く保つことで寿命を延ばし、老化を抑制することを示しています。
●マグネシウムは、食事として摂取した場合、テロメア長を長く維持します(女性)。マグネシウムが欠乏した状態を続けると、酸化ストレスが増加し、テロメアは短くなります(ラット、細胞)。
●亜鉛は、テロメラーゼ活性を高めます。高齢者において、テロメアの短縮が限界に達した細胞(細胞分裂できない老化した細胞)の割合やテロメア長の減少の程度は細胞内の亜鉛の減少の程度と関係していました。亜鉛は酸化ストレスを減少させます。このように、亜鉛は酸化ストレスの軽減やテロメラーゼ活性の増加などによってテロメア長に影響する可能性があります。
●鉄は、他の栄養成分と異なり、テロメアを短くします。鉄は活性酸素を生成させ酸化ストレスを増加させます。鉄によるテロメアの短縮は、鉄による活性酸素の生成と酸化ストレスの上昇によるものと考えられます。そのため、病気の治療のために必要な場合を除き、鉄の摂りすぎは控えるべきと考えられます。
●オメガ−3 脂肪酸(ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸)の血中濃度とテロメア短縮の軽減の大きさの間に正の相関関係があることが示されています。オメガ−3 脂肪酸の血中濃度と、低レベル炎症マーカーと高レベル抗炎症マーカーとが相関していました。また、オメガ−3 脂肪酸の摂取は、抗酸化酵素(スーパーオキシドディスムターゼ、カタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ)の活性を増強し、寿命を延長しました(マウス)。オメガ−3 脂肪酸による抗炎症活性と抗酸化活性が細胞のターンオーバーとDNAの酸化的障害を減少させ、その結果テロメアの短縮を抑制したものと考えられます。
●ブドウ種子とお茶に含まれるポリフェノールは抗炎症活性と抗酸化活性を持つことが報告されています。実際、お茶を習慣的に飲む人は、たまにしか飲まない人に比べ、長いテロメアを有していました(約5年の生存期間の差に相当)。また、ブドウ種子ポリフェノールの摂取はより長いテロメアと相関する傾向が見られました(マウス)。
●ウコンの成分クルクミンはポリフェノールの一種です。クルクミンは抗酸化活性と抗炎症活性を示します。クルクミンを摂取させたとき、DNAの障害が減少し、テロメアの長さがより長く維持される傾向がありました(マウス)。
●抗酸化栄養素として知られているコエンザイムQ10もテロメアを長く維持することが報告されています(ラット)13)。通常のラットおよび酸化ストレスが増加したラットを用いて検討されました。通常のラットにコエンザイムQ10を摂取させると、長い部分のテロメアの割合が増加しました。一方、短い部分のテロメアの割合は低下しました。酸化ストレスの増加したラットではテロメアの長い部分の割合は通常のラットに比べ低下し、一方、短い部分の割合は増加していましたが、コエンザイムQ10を摂取させると、長い部分と短い部分のテロメアの割合はそれぞれ通常ラットのレベルまで回復しました。これは、コエンザイムQ10の抗酸化作用によって、活性酸素によるテロメアの酸化障害が抑制され、テロメア長が長く維持されたものと考えられました。


1−4)運動とテロメアの関係

  一方、ライフスタイルの改善がテロメアを長くすることが知られています。運動は、肥満、メタボリックシンドローム、高血圧、高脂血症、糖尿病、動脈硬化、アルツハイマー病、骨粗鬆症、がんなどの代謝異常や慢性病を予防・改善し、死亡率を低下させ、健康寿命を延ばすことは良く知られています。これらの異常や病気は老化と関係があると考えらえています。そのため、運動はテロメアの短縮を抑制する可能性があります。これらを背景に運動とテロメアの長さとの関係を検討した研究があります14)。双子の男女2401人(女性2152人、男性249人。年齢18〜81歳。英国)が試験に採用されました。被験者の白血球のテロメアの長さは個人間でかなり差があり、4.9から9.1キロベース(kb)〔1キロベースは1000塩基(対)〕の範囲でした(平均7.0kb)。テロメアの長さは年齢とともに短くなり、年間の平均消失数は21.0ヌクレオチド〔塩基(対)〕でした。運動レベルは4段階に分類されました〔運動習慣なし(余暇時間における1週間当たりの平均運動時間16分)、短い運動時間(同36分)、中程度の運動時間(同102分)、長い運動時間(同199分)〕。肥満度(BMI)の増加は運動レベルの減少およびより短いテロメア長と有意に相関していました。余暇時間の運動レベルと平均テロメア長との関係では、運動レベルが増加するにつれて明らかに(統計的に有意に)テロメアが長くなりました。運動習慣なしグループに比べ、長い運動時間グループのテロメアは平均200ヌクレオチド〔塩基(対)〕長いことが示されました。この差は9.5年分のテロメアに相当します。このことは、良く運動する人は、運動しない人に比べ、生物学的に約10年若いということになります。これらの結果は、運動による老化や老化病の抑制、あるいは死亡率の低下などの健康効果の少なくとも一部は、運動によるテロメア長の維持効果が関わっているということを示しています。では、運動がどうしてテロメア長の維持効果を示すのでしょうか。適度な運動は体内の抗酸化ストレス能を高めることが知られています。これは運動による酸化ストレスの増加に対抗するために体内の抗酸化システム(抗酸化酵素など)が増強されるためではないかと考えられています(これを運動ホルミシス現象と言います)15)

  では、健康に良い運動とはどのようなものでしょうか。これに対する検討結果が報告されています16)。運動習慣のない健康な人を、3種類の強度の運動に分けました。すなわち、弱い強度の運動群〔25%VO2max(最大酸素摂取量の25%の強度)〕、中等度の強度の運動群(50%VO2max)、強い強度の運動群(75%VO2max)です。各強度群の被験者は自転車エルゴメーターを使って、1日30分間、週5〜7回、12週間、各強度の運動を行いました。運動の健康効果は、アセチルコリン刺激による前腕血流量の増加を指標としました〔アセチルコリン刺激によって血管内皮細胞からNOの生成が促進されそれによって血管が拡張し血流が増加します。血管内皮細胞の働きに異常があるかどうかを調べるための指標の一つ。内皮細胞の機能に異常があるとNOの生成が低下し血流が減少します。内皮細胞の機能に異常がある(NOの生成が低下する)と動脈硬化や心血管病を起こすリスクが高くなります。それは、NOは動脈硬化を防ぐためです。糖尿病、高血圧症などの患者で内皮細胞機能の異常(NOの生成低下)が一般的にみられます〕。その結果、中等度の強度の運動群では、アセチルコリン刺激による前腕血流量の増加は50%増強されました。一方、弱い強度の運動群と高い強度の運動群では、アセチルコリン刺激による前腕血流量の増加の増強は見られませんでした。つまり、最大酸素摂取量の半分(50%)の中等度の運動では、運動による健康効果が見られたのに対し、最大酸素摂取量の25%の弱い強度の運動と最大酸素摂取量の75%の高い強度の運動では、運動による健康効果が見られなかったということです。弱い強度の運動では運動の強さが弱いために運動による健康効果がでなかったものと納得できますが、強い強度の運動の場合どうして運動による健康効果が出なかったのでしょう。これを明らかにするために、強い強度の運動の場合の、体内の酸化ストレス(活性酸素)に対する影響が検討されました。その結果、強い強度の運動の場合、体内の酸化ストレスは明らかに(統計的に有意に)上昇しました。一方、弱い強度の運動の場合、体内の酸化ストレスは変化ありませんでした。中等度の運動の場合、体内の酸化ストレスはかえって弱くなる傾向が見られました。このことは、中等度の強度の運動では、運動によって生成した活性酸素は、その刺激によって誘導された抗酸化酵素によって完全に消去され、さらにその抗酸化酵素は元々体内にある活性酸素の一部までも消去したと考えられるのに対し、強い強度の運動では、運動によって生成した活性酸素の量が多すぎて、誘導された抗酸化酵素だけではそれを消去することができなかったため、体内の抗酸化ストレスが上昇したものと考えられます。従って、
運動習慣のない健康な人が、健康を維持するため、あるいは病気のリスクを回避するために運動する場合、おすすめする最適な運動の強度は、最大酸素摂取量の半分(50%)位です。運動の強度は弱すぎても効果がないし、強すぎては酸化ストレスによる障害によって病気に罹りやすくなり、寿命も短くなるでしょう。

  では、運動とマルチビタミン(抗酸化ビタミンを含んでいます)や抗酸化サプリメントを併用すれば、それぞれの効果が発揮されて、テロメア長はさらに長く維持されるでしょうか。事はそんなに簡単ではないようです。運動と抗酸化サプリメント(ビタミンC+ビタミンE)を併用した場合、抗酸化サプリメントは運動の健康効果を打ち消すことが報告されました17)。ではどうしてそういうことが起こったのでしょうか。適度な運動は適度に活性酸素の産生量を増やします。これによってPGC1α/β、PPARγが誘導されます。PGC1α/βは、体内の抗酸化酵素〔スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、グルタチオンペルオキシダーゼ(GPX1)、カタラーゼ〕を誘導するとともに、種々の健康効果、例えば、インシュリン感受性の向上などをもたらします。ところが、運動と抗酸化サプリメントを併用すると、運動によって生じた活性酸素が抗酸化サプリメントによって消去されました。それとともに、PGC1α/β、PPARγの誘導はほぼ完全に抑制され、SOD、GPX1などの抗酸化酵素の誘導もほぼ完全に抑制されました。また、種々の健康効果も消失しました。運動と抗酸化サプリメント〔やマルチビタミン(抗酸化ビタミンが含まれています)〕を併用すれば相加的あるいは相乗的な効果が得られるのではないかと考えていた私たちにとってこれらのデータは衝撃的でした。

  
以上のデータから、運動とマルチビタミンや抗酸化サプリメントが、お互いのテロメア維持効果や健康効果になるべく影響しないで最大限の効果を発揮するようにするには、例えば、運動習慣のない人ではマルチビタミンや抗酸化サプリメントを毎日摂取することがテロメア長の維持や健康を保つには重要と考えられます。一方、運動習慣のある人では運動日はマルチビタミンや抗酸化サプリメントの摂取は止めたほうがよいでしょう。運動日でない日は摂取したほうがよいと思われます。ただ、激しい運動をする人は活性酸素の発生が体内の抗酸化システムの能力を上回り、酸化障害を起こす可能性がありますのでマルチビタミンや抗酸化サプリメントの摂取をおすすめします(効果があるという報告と効果がないという報告がありますが)。抗酸化成分としてビタミンEを用いる場合はその摂取量に気を付けてください。ビタミンEは1日に150IU(100mg)を超えた量を摂取すると死亡率が増えるというメタアナリシスの結果が報告されています18)。この理由として、大量のビタミンEが存在すると、ビタミンEと活性酸素が反応して生成するビタミンEラジカルの量が増え、これがプロオキシダント(抗酸化物質がある条件下では逆に酸化促進物質になるもの)となって傷害を引き起こすためと考えられています。そのため、おすすめするビタミンEの摂取量は1日150IU(100mg)以下です。それを超えた量ですと長期間の摂取で死亡率が増加する可能性があります


2.テロメラーゼとその活性化

  一方、テロメアはテロメラーゼという酵素によって伸ばすことができます。テロメラーゼは人では生殖細胞や幹細胞(多能性幹細胞)に高い活性が検出されますが、その他の体細胞のほとんどに活性が認められません。ただ、組織幹細胞〔皮膚や血液のように、きまった組織や臓器で、消えた細胞のかわりを作り続けている幹細胞。例えば、骨髄には造血幹細胞があり赤血球や白血球などの血液細胞を作っています。また、皮膚や肝臓では細胞が次々と作られたり再生するのも、骨折が治るのも、髪の毛が伸びるのもこの組織幹細胞の働き(自己複製能)のおかげです。現在、神経、上皮、心筋、肝、消化管上皮、生殖、造血、間葉系、骨格筋など様々な場所に見つかっています〕には弱いテロメラーゼ活性が発現していて、細胞分裂ごとのテロメア短縮を減弱し一生を通じて多くの細胞を供給できますが、テロメラーゼ活性が弱いため、年齢とともにテロメアが短縮し、細胞は老化します。このことは、これら組織幹細胞に見られるテロメラーゼ活性は、テロメア短縮による細胞老化を防ぐことができないほど不十分であり、機能細胞を供給し続けられないということです。また、細胞の老化とともにテロメラーゼ活性が低下するとの報告もあります。これらのことから、
組織幹細胞の弱いテロメラーゼ活性をより強くすることで、老化防止や若返り、はては120歳以上の長寿を達成しようという試みが盛んにおこなわれています。他方、テロメラーゼはがん細胞の多くに高い活性が示され、それががん細胞に無限増殖性を与えていることが考えられます。しかしながら、最近の研究で、テロメラーゼの活性化だけでは細胞はがん化(造腫瘍性)しないことが示されていますが、完全にその懸念を払拭するまでには至っていません5)。そのため、現在は、テロメラーゼ活性を自在に発現調節できる方法や成分の開発が試みられています。


2−1)テロメラーゼの再活性化によって若返ることができる!!

  
テロメラーゼの活性化が若返りの特効薬になりうる可能性を示した研究があります19)。ハーバード大学医学部のJaskelioffらが行った研究で、テロメラーゼ活性を失くしたマウスでは、機能障害を起こした短いテロメアを示し、細胞は5〜6回の継代培養後分裂を停止し、老化した細胞の形態を示しました。つまり細胞はほとんど分裂しない静止状態になりました。また、DNA損傷の増加、種々の組織の機能低下、特に増殖性の高い組織、例えば生殖細胞のアポトーシスによる極度の精巣萎縮と睾丸サイズの減少とそれによる生殖能力の低下、顕著な脾臓の機能低下、クリプト細胞のアポトーシスに伴う腸陰窩の減少と絨毛の退化、脳における神経幹細胞の自己複製能の減少や神経細胞増殖能の低下などによる脳重量の減少、嗅覚減退など老化したマウスに見られる現象が見られました。また、テロメラーゼの活性を失くしたマウスではそうでないマウスに比べ寿命がほぼ半分に短縮しました。一方、このマウスの細胞にテロメラーゼが再活性化されるような処置を行うと、テロメアは長くなり、細胞は分裂増殖を再開し、さらに8回以上の継代培養後も分裂し続けました。さらにマウスではテロメラーゼ再活性化後わずか4週間後に、組織や臓器の若返りが見られました。精巣の生殖細胞のアポトーシスの減少による正常な精巣サイズへの回復と生殖能力の増加、脾臓重量の回復、腸クリプト細胞のアポトーシスの減少が見られました。また、脳においては神経幹細胞の自己複製能の回復や神経細胞増殖能の正常化、脳重量の回復などが見られました。嗅覚に関してはほぼ正常レベルまで回復しました。このマウスでは寿命も延長しました。

  人の典型的な老化現象には、白髪、皮膚の弾力の低下としわ、視力の低下、聴力の低下、嗅覚の低下、筋力の低下、骨折しやすくなる、血管の老化(動脈硬化など)、性機能の低下、記憶力の低下などが見られますが、これらはほとんどがテロメアの短縮による組織幹細胞の機能低下が原因で、新しい細胞が供給されにくくなったためと考えられます。Jaskelioffらによる上記研究では、テロメラーゼ活性の消失によるテロメアの短縮により増殖停止状態(老化状態)にある組織幹細胞が、テロメラーゼの再活性化によりテロメア長を回復し、増殖能を回復して、細胞や組織や臓器の若返りが起こったものと考えられます。このことから、
人においても、テロメラーゼの活性化によるテロメアの伸長や、ストレスなどによるテロメア短縮の抑制などによりテロメア長を長く保つことができれば、120歳以上の長寿や、本当の意味での若返り(細胞、組織、臓器および身体全体の若返り)が可能になるのではないかと考えられます。

  では、人の場合、テロメラーゼはどうすれば活性化できるのでしょうか。人では遺伝子工学的にテロメラーゼを活性化することはほとんど不可能ですし、がん化の危険もあります。そのため、生体物質や人間が昔から摂取してきてがん化の危険がない物質を摂取することでテロメラーゼを活性化できれば理想的です。実はそのような物質が種々見出されてきています。そのような物質をうまく摂取することで長寿や若返りができたらすごく素敵ですしワクワクしますよね!一方、ライフスタイルを工夫することでもテロメラーゼが活性化されることが知られています。


2−2)食生活とテロメラーゼ活性の関係

  先ず、ライフスタイルがテロメラーゼにどういう影響を及ぼすかについて見てみましょう。食事の違いが健康や寿命に大きく関わることは良く知られています。日本食が健康に良く、日本人の長寿命に寄与していると言われています。一方、地中海食の健康効果もよく知られています。地中海食は健康に最も良い食事の一つと言われています。10年間の追跡調査によって、地中海食をよく食べる人は、そうでない人に比べ、死亡率が低く、心血管病やがんによる死亡率が低下しました20)。また、脂質代謝、血管拡張性、糖質代謝、酸化ストレスなど心血管病の危険因子に対して良い効果を示します。加えて、地中海食は長寿とより長い健康寿命をもたらすことが示されています。一方で、地中海食は細胞を酸化ストレスから守り、細胞の老化や細胞死(アポトーシス)を防ぎ、テロメアの短縮を抑制することが示されました。
  ではどの程度地中海食を食べればテロメア長の維持や健康効果に結び付くのでしょうか。さらに地中海食はテロメラーゼの活性に影響するのでしょうか。これらを明らかにするため検討がなされました21)。217人の白人(イタリア住人)の男女(平均年齢77.9歳)が試験に登録されました。白血球のテロメアの長さは年齢とともに減少しました。1年年を取るごとにテロメアは58塩基(b)だけ短くなりました。年齢とは関係なく、女性のほうが男性より長いテロメアを持っていました。その差は330bでしたので、女性は男性より生物学的に5.7年若いということになります。なお、イタリア人の平均寿命(2012年)は男性80歳、女性85歳ですので22)、テロメアの長さの差から計算した差とほぼ一致しました。このことから、テロメアの長さを測ることによって余命を調べることができるかもしれません。実際、テロメアの長さを測って余命を推測しようという試みはすでに色々行われています23)。次に、喫煙とテロメアの関係が調べられました。そうしますと、喫煙者では、非喫煙者に比べ、テロメアは490b短縮していました。これは、喫煙者は非喫煙者に比べ8.4年生物学的に老化しているということになります。ところが過去喫煙歴があっても禁煙することによってテロメア長は回復することが示されました。喫煙歴があるが現在喫煙していない人では、非喫煙者と比べ、テロメアは60b短かっただけでした。つまり、禁煙することによってテロメア長はほぼ非喫煙者のレベルまで回復することを示しています。白血球のテロメアの長さとテロメラーゼ(PBMC)活性との間には有意な正の関係がありました。このことは、テロメラーゼ活性が高いほどテロメアも長いということを示しています。
  被験者は、地中海食をどの程度摂取したかによって分類されました。分類は地中海食スコア(MDS)に従って3分類に分けました。第一分類は低スコア群(MDSが3以下)、第二分類は中スコア群(MDSが4〜5)、第三分類は高スコア群(MDSが6以上)です。MDSとは、食物群を9分類し、男女別の摂取量の中央値を計算し、各食物群の摂取量が中央値より多いか少ないかでスコア化したものです。有益と考えられる食物群(野菜、マメ科植物、果実、穀物、魚、一価不飽和脂肪/飽和脂肪比)の摂取量や比が中央値より多い場合1のスコアを、少ない場合0のスコアを、有害と考えられる食物群(魚肉以外の肉、乳製品)の摂取量が中央値より少ない場合1のスコアを、多い場合0のスコアを与えました。アルコールにつきましては、スコア1が、男性の場合1日摂取量が10〜50g(エタノールとして)の時、女性の場合1日摂取量が5〜25g(エタノールとして)の時与えられました。このようにMDSの合計は0〜9となります。MDSが0の人は地中海食をほとんど実行しない人で、9の人は地中海食を忠実に実行する人です。(MDSについては詳しくは文献24を参照ください)。
  MDSの各スコア群とテロメアの長さやテロメラーゼ活性との関係を調べてみますと、高スコア群のテロメアの長さやテロメラーゼ活性は(統計的に)有意に低スコア群や中スコア群よりも高値でした。テロメアは加齢によって短縮しますが、地中海食はこの短縮をどれくらい抑制できるのでしょうか。MDS低スコア群、中スコア群、高スコア群の1年間のテロメアの短縮数は、それぞれ72b、57b、51bでした。つまり、地中海食をほとんど実行しない人と地中海食を忠実に実行する人とでは、1年間にテロメアの長さが21b違ってくるということになります。10年間では210bになるとしますと、地中海食をよく食べる人はそうでない人に比べ、10年経った時生物学的に3.6年(平均の年間テロメア短縮数58で割った時)若いということになります。また別の計算では、両者の最初のテロメア長が各10000bだったとして、これが5000bまで短くなると、細胞は分裂を停止し老化し死滅(アポトーシス)するとしますと、地中海食をほとんど実行しない人では69年で老化してやがて死んでしまいますが、地中海食を忠実に実行する人では老化するまでには98年かかるということになります。実に29年もの差ができてしまうことになります。個体レベルで、実際にここまで差が出るかどうかはわかりませんが、疫学的研究は地中海食がより長い寿命と健康寿命をもたらすことを示しています。また、テロメラーゼは地中海食をよく食べる人ではより活性化されますが、MDS低スコア群に比べ高スコア群ではテロメラーゼ活性は約20%活性化されていました。
  では、地中海食の何がテロメア長やテロメラーゼ活性に良い影響を示しているのでしょうか。MDS高スコア群の人たちの炎症性成分や活性酸素由来成分の血中濃度は、低スコア群に比べ低値を示しました。テロメアの長さやテロメラーゼ活性は、炎症スコアや活性酸素由来成分と負の相関関係がありました。炎症スコアは活性酸素由来成分と正の相関関係にありました。このことは、炎症反応が活性酸素の生成を高め、テロメアやテロメラーゼを障害し、テロメアの短縮やテロメラーゼ活性の低下を引き起こしているものと考えられました。これらのことから、地中海食は炎症を抑え、活性酸素の生成を抑制することで、テロメアの短縮を抑制し、テロメラーゼを活性化するものと考えられました。
  次に、MDSスコアと健康度がどう相関するかについて見てみますと、健康な高齢者(高血圧、心筋梗塞、血管病、認知症、脳卒中、心不全を持たない人)の比率はMDSスコアが大きくなるほど高くなり、低スコア群に比べ高スコア群で1.6倍でした(健康な人の割合は低スコア群で34.3%、高スコア群で54.4%)。また、健康な高齢者のテロメアは、不健康な高齢者(上記の病気の二つ以上を併発)より長く(220bの差)、テロメラーゼ活性も健康な高齢者のほうがより高活性でした。
  
以上をまとめてみますと、地中海食、すなわち、野菜、マメ科植物、果実、穀物、魚、オリーブオイル(一価不飽和脂肪酸を豊富に含みます)を積極的に摂取し、魚肉以外の肉や乳製品の摂取をできるだけ控え、アルコールはほどほど(男性では1日にワインにして約90ml〜450ml、女性では1日にワインにして約45〜225mlが適正量です)にした食事は、脂質代謝、血管拡張性、糖質代謝の異常など心血管病のリスクを低下させ、心血管病やがんによる死亡率を低下させ、より長い寿命と健康寿命をもたらします。この地中海食の健康効果は、主にその抗炎症効果および抗酸化活性に由来するものと考えられます。この抗炎症活性と抗酸化活性がテロメアを長くし、テロメラーゼ活性を高めたものと考えられます。一方、テロメラーゼはテロメアを長くします。つまり、地中海食は、その抗炎症活性と抗酸化活性によって、直接テロメアの障害を抑制してテロメア長を長く維持し、また、その抗炎症活性と抗酸化活性によって(地中海食に含まれる栄養成分によって直接テロメラーゼが活性化される可能性もありますが)テロメラーゼ活性を高めることで間接的にテロメアを長くするものと考えられました。この長く維持されたテロメアによって、地中海食をよく食べる人に見られる、種々の健康効果と健康寿命の延長と長寿がもたらされたものと考えられます。


2−3)体内成分とテロメラーゼとの関係


2−3−1)ビタミンDとテロメラーゼの関係


  ビタミンDは、腸管でのカルシウムの吸収を促進し、骨の形成を助けるビタミンとして知られていますが、そのほかに様々な作用を持っています。例えば、筋肉、炎症、免疫系、心血管系、脳神経系などへの作用が報告されています。ビタミンDはその作用機構と機能の多様性からホルモンに分類されることもあります。ビタミンDの欠乏は、種々の老化性疾患、例えば、骨粗鬆症、筋力低下、高血圧、2型糖尿病、心血管病、死亡率と関係があります。また、ビタミンD濃度の低下は、種々の自己免疫疾患(多発性硬化症、関節リウマチ、1型糖尿病など)のリスク増大と関係があります。一方、ビタミンDの摂取は、骨粗鬆症や筋力低下を改善し、血管の硬さや内皮反応性(動脈硬化と関係)を改善し、免疫関連疾患(1型糖尿病、多発性硬化症、関節リウマチ)の発症を抑制し重症度を減弱しました。ビタミンDの濃度と炎症マーカー(CRP)の間に逆の相関がみられ、ビタミンDは炎症反応を抑制すると考えられました。ビタミンDは脳神経系にも影響を与えます。ビタミンDの欠乏は認知機能の低下を引き起こし、認知症やアルツハイマー病のリスクを増大させました(ビタミンDが欠乏した人たちは、ビタミンDが欠乏していない人たちに比べ、認知症やアルツハイマー病発症のリスクが2倍以上増加しました)25)。一方、ビタミンDの摂取は、老化による学習能力や記憶力の低下を改善しました。高齢者においてはビタミンDの濃度は低下しますのでこれらの疾患のリスクはより増大するものと考えられます。そのため、特に高齢者ではサプリメントなどによりビタミンD、特に日光による活性化が必要でない
ビタミンDの積極的な摂取がすすめられます。〔しかし、摂りすぎは過剰症(高カルシウム血症、腎障害など)を引き起こしますのでご注意ください。ビタミンDの1日の摂取目安量は5.5μgです。上限量は100μg/日です(「日本人の食事摂取基準(2015年版)」)。海外品には大量のビタミンDが含まれているものがありますのでご注意ください〕。これらのビタミンDの作用にはテロメアやテロメラーゼが関与している可能性が考えられました。
  2160人の女性(平均年齢49.4歳、英国)について、ビタミンD(25−ヒドロキシビタミンD)濃度と白血球テロメア長との関係が検討されました26)。加齢によって白血球のテロメアは短縮しました。年間のテロメアの短縮数は21.5bpでした。25−ヒドロキシビタミンD濃度とテロメア長との間には正の相関がみられました。炎症マーカー(CRP)の濃度とテロメア長および25−ヒドロキシビタミンDの濃度との間には負の関係が見られました。被験者たちを25−ヒドロキシビタミンDの濃度に応じて3つに分類しましたところ、濃度が高いほどテロメア長は長くなりました。濃度が最も低い人たちのテロメア長と濃度が最も高い人たちのテロメア長の差は107.1bpでした。つまり、25−ヒドロキシビタミンD濃度が最も高い人たちは最も低い人たちに比べ生物学的に5年若いということになります(5年長生きする可能性があります)。被験者の約1/3(700人)がビタミンDのサプリメントを摂取していたために、ビタミンD摂取とテロメア長との関係が調べられました。ビタミンDを摂取している人たちは摂取していない人たちに比べより長いテロメア長を有していました。その差は110bpでした。このように、ビタミンDの濃度が高い人たちは低い人たちに比べより長い白血球のテロメア長を有していました。また、ビタミンDのサプリメントからの摂取によってもテロメア長は長く維持されることが明らかにされました。ビタミンDのこの作用は、炎症を抑制することで活性酸素の生成を抑え、それによるテロメアの障害を抑制し、それによってテロメア長が長く維持されたものと考えられました。ビタミンDによるテロメア長の維持によって生物学的老化が5年ほど抑制されると考えられました。
  ビタミンDによるテロメア長の維持にテロメラーゼが関係しているかが検討されました27)。肥満したアフリカ系アメリカ人は通常ビタミンDが不足していますので、その人たちを被験者としました。試験はランダム化二重盲検プラセボ対象臨床試験で行われました。被験者はビタミンD〔〜2,000IU(50μg)/day〕を摂取させたグループ(19人)とプラセボ(偽薬)群(18人)にランダムに分けられました。試験は16週間行われました。ビタミンDを摂取させたグループでは、摂取前に比べテロメラーゼ活性(PBMC)は19.2%増加していました。プラセボグループのテロメラーゼ活性(PBMC)は試験前に比べ変化はありませんでした。ビタミンDの血中濃度増加の程度とテロメラーゼ活性の増加の程度との間には有意な相関がありました。上記しましたように、ビタミンDはテロメア長を長く維持しますが、その働きの少なくとも一部はビタミンDのテロメラーゼ活性増加作用が関与しているものと考えられました。


2−3−2)女性ホルモンとテロメラーゼの関係

  女性は男性に比べ長生きです。日本人の平均寿命は女性が86.6歳で、男性は80.2歳です(2013年厚生労働省調査)。また、100歳以上の高齢者数は58,820人(平成26年。厚生労働省調査)で、そのうち女性の占める割合は87.1%です。寿命における性差はテロメアに関係があると考えられています。生まれたばかりの頃はテロメアの長さに性差はありません。しかし、その後、男性のテロメア長は女性に比べ早く短くなります。短いテロメアは老化や老化病(心血管病、認知症、糖尿病、肝硬変、潰瘍性大腸炎、腎不全など)と関係があるといわれていますが、実際、男性はそのような異常や病気になりやすいといわれています。また、男性の短いテロメアが寿命の短さと関係があるといわれています28)。ある報告によると、年齢とは関係なく、女性のほうが男性より長いテロメアを持っていました(被験者はイタリアの平均年齢77.9歳の男女)。テロメア長の差から計算した時、女性は男性より生物学的に5.7年若いということになりました。なお、この差は平均寿命の差(約5年)とほぼ一致しました21)
  では、テロメア長における男女の差は何が原因なのでしょうか。その大きな要因の一つが女性ホルモンです。テロメアは活性酸素によって傷つけられやすく、それによってテロメアは短くなります。そのため、テロメアの長さを維持するためには活性酸素の害からテロメアを守ってやる必要があります。エストロゲン(女性ホルモン)は活性酸素の生成を抑えます。一方、テストステロン(男性ホルモン)はそのような作用を持っていません。この差が男女におけるテロメア長の差の原因の一つになっている可能性があります。
  また、テロメア長の維持にはテロメラーゼの働きが極めて重要です。テロメラーゼは短くなったテロメアも長くすることができます。そのためテロメラーゼの活性化はテロメアを長く保ち、老化や老化病を防ぎ寿命の延長ももたらします。エストロゲンは直接あるいは間接的にテロメラーゼを活性化します28)。なお、エストロゲンによるテロメラーゼの活性化には、eNOS(血管内皮型一酸化窒素合成酵素)の活性化によるNO(一酸化窒素)の生成が必要なことが報告されています29)
  このように、生殖期にある女性ではエストロゲンによる酸化ストレスの軽減作用やテロメラーゼ活性化作用によりテロメアが長く維持されるため、女性は男性に比べ老化や老化病に罹りにくいですが、閉経後はエストロゲンの急激な低下により、その保護作用がなくなり、その後は男性と同様に老化や老化病が進みます30)。しかしながら、生殖期での貯金があるため(女性では男性に比べ長いテロメアを持っているため)、結果的に、男性に比べて女性では老化や老化病発症の遅延や長寿命がもたらされるものと考えられます。
  内因性のエストロゲンとテロメアの関係が検討されました31)。女性においては、生殖期年数、つまり、内因性のエストロゲンによる曝露年数(初潮から閉経までの期間として計算)の長さと老化や老化病(心血管病、認知症など)に対するリスクの低下が関係すると考えられています。そこで、閉経後の女性を対象に、内因性のエストロゲンの曝露年数とテロメア長やテロメラーゼ活性との関係が検討されました。53人の閉経後の女性(全員がホルモン療法を受けていました)が被験者となりました。内因性のエストロゲンの曝露年数の長さとテロメアの長さ、および低下したテロメラーゼ活性との間に有意な(統計的に)関係がありました。つまり、生殖期年数が長いほどテロメアも長くなり、逆にテロメラーゼ活性は低下するということを示しています。一方、閉経後のホルモン療法の長さとテロメア長やテロメラーゼ活性との関係は見出されませんでした。このことから内因性のエストロゲンは女性において細胞老化の抑制と関係があると考えられました。本研究では、内因性のエストロゲンの曝露年数とテロメラーゼ活性との間には負の関係が見られましたが、これは前述した、エストロゲンはテロメラーゼを活性化するという以前の報告(試験管内)と異なっているように思われます。しかし、本研究では、テロメラーゼ活性は閉経後数年以上経ってから測定されました。テロメラーゼ活性は、当然のことながら、エストロゲンが存在しているときは活性化されていますが、エストロゲンが存在しなくなれば低下します32)。そのことから、閉経後数年以上経ったときに測定されたテロメラーゼ活性は、内因性のエストロゲンが低下した時の状態を示しているために、当然低下しているものと考えられます。
  エストロゲンを内因性ではなく、外因性に投与した時に、投与しない場合と比較してテロメアにどういう効果があるか検討されました33)。被験者は、55歳から69歳までの閉経後の女性で、5年以上ホルモン療法を受けているグループ(65人)と、閉経後ホルモン療法を受けていないグループ(65人)のテロメアの長さが比較検討されました。。その結果、ホルモン療法を受けているグループは、ホルモン療法を受けていないグループに比べ、より長いテロメア長を持っていました。ホルモン療法を受けているグループは、ホルモン療法を受けていないグループに比べ、BMI、空腹時血糖値が有意に(統計的に)に低く、HDLコレステロールが有意に高く、運動頻度やビタミン摂取率が有意に高く、これらがテロメア長に影響している可能性が考えられましたので、これらの因子を調整して統計解析がなされた結果、テロメア長と関係があるのはホルモン療法のみでした。
  
以上のことから、女性ホルモン(エストロゲン)は、その抗酸化作用とテロメラーゼ活性化作用によりテロメア長を長く維持します。その結果、女性は男性に比べ老化や老化病にかかりにくく寿命が長いものと考えられました。しかし、女性ホルモン(エストロゲン)は、当然のことながら男性には投与することはできないので、男性には女性ホルモンの抗老化作用、老化病抑制作用、長寿命効果を享受することはできません。また、女性でも閉経後は女性ホルモンは激減するため、その効果を享受することはできません。その場合はホルモン療法(HRT)あるいはエストロゲン療法(ERT)がありますが、心血管系、乳がん、静脈血栓症など種々の副作用の問題からその使用法や使用期間などに制限があります34)。ではその良い効果は男性や閉経後女性は享受できないのでしょうか。それに対する答えはNO(一酸化窒素)にあります。エストロゲンのテロメラーゼ活性化作用29)、血管35)や骨36)に対する作用、(細胞)老化抑制作用29b)など、その健康効果の多くは一酸化窒素を介することが知られています。そのために、NOをアルギニンから生成する酵素、一酸化窒素合成酵素(NOS、特にeNOS)を活性化する成分(アルギニンなど)を使うことによってエストロゲンと同等以上の(NOの直接効果もありますので)抗老化、老化病抑制効果、寿命延長効果などが期待できます。また、アルギニンはアミノ酸ですので安全性が高く安心して摂取することができます。もちろん性ホルモン作用はありません。


2−3−3)アルギニン(NO)とテロメラーゼの関係

  テロメラーゼはNO(一酸化窒素)によって主にコントロールされていると考えられています3738)。細胞の老化やテロメア長およびテロメラーゼ活性にNOがどういう影響を示すかが検討されました39)。血管内皮細胞(ヒト臍帯静脈由来、HUVEC)は、細胞分裂させるたびに老化していき、それと共にテロメア長が短くなっていきました。また、テロメラーゼ活性は細胞分裂と共に低下しました。テロメラーゼ活性の低下は細胞老化の開始に先行していました。つまり、細胞は分裂するたびに少しづつテロメラーゼ活性が低下していき、それと共にテロメア長が短くなり、細胞老化が進むと考えられました。この細胞老化に対するNOの効果が検討されました。血管内皮細胞(HUVEC)はNO存在下で培養すると、細胞の老化は約50%抑制されました。また、NOによってテロメラーゼ活性の低下およびテロメア長の短縮も抑制されました。一方、血管内皮細胞(HUVEC)をNOS(一酸化窒素合成酵素)阻害剤(アルギニンからNOを合成する酵素の働きを抑制してNOが合成されないようにする化合物)と共に培養すると、テロメラーゼ活性は強く抑制されました。それに対し、血管内皮細胞(HUVEC)をNOと共に培養すると、テロメラーゼ活性は約3倍増加しました。すなわち、NOはテロメラーゼ活性をコントロールしているものと考えられました。なお、血管内皮細胞の老化は動脈硬化や老化の促進因子になると考えられています。
  eNOS(血管内皮型一酸化窒素合成酵素)の活性化(NOの生成を増加)がテロメラーゼ活性にどういう影響があるかが検討されました40)。HEK293細胞(ヒト胎児腎細胞由来)またはHUVEC(ヒト臍帯静脈由来血管内皮細胞)にeNOSを遺伝子導入しますと、NOの生成は1.82倍に増加し、テロメラーゼ活性は2.24倍に増加しました。一方、細胞の老化はeNOSの導入によって抑制されました。
  
以上のことから、NOはテロメラーゼ活性をコントロールしそれを活性化することで、テロメア長の短縮を抑制したり、テロメア長を伸ばします。そしてそれによって細胞の老化、引いては体の老化を抑制するものと考えられました。体の中で、NOはアルギニンから作られますので、アルギニン(NO)は、テロメラーゼの活性化によるテロメア長の短縮化抑制や伸長作用によって、細胞や体の老化、引いては寿命延長作用や老化病の抑制作用を示すことが期待できます。

  
次のは、アルギニン(NO)のテロメラーゼ活性化作用と老化や老化病抑制作用との関係、また、抗酸化剤のeNOS活性化作用や老化および老化病抑制作用との関係を示しました。これらの作用により、アルギニン(NO)や抗酸化剤は老化や老化病を抑制することが期待できます。さらに、アルギニン(NO)と抗酸化剤を同時に摂取することでさらに強力に老化や老化病を抑制することが期待できます。寿命を延ばし、老化や老化病を抑制するといわれている多くの生体成分や天然成分、あるいはライフスタイルがテロメラーゼ活性化作用やテロメラーゼ保護作用、テロメア保護作用を示すことが報告されていますが、その作用にはそれらの抗酸化作用やNOを介する作用が働いているものと考えられます。


図.アルギニン(NO)および他成分のテロメラーゼおよびテロメアに対する作用と老化および老化病抑制作用との関係



  アルギニンからeNOS(血管内皮型一酸化窒素合成酵素)の働きで生成したNO(一酸化窒素)は、テロメラーゼを活性化しテロメアを長くします。テロメアを長くすることで老化や老化病が抑制され、寿命が延長することが期待できます。一方、加齢、放射線、紫外線、NADPHオキシダーゼ、ミトコンドリア、遷移金属(鉄イオン、銅イオンなど)などにより生成した活性酸素は、eNOSの正常な働きに必要なBH
(テトラヒドロバイオプテリン)を酸化し減少させます。BHやアルギニンの不足は、eNOSの正常な働き(アルギニンからNOを生成する)を阻害し、NOを生成する代わりに活性酸素(スーパーオキシド、O)を生成します(eNOSアンカップリング)。そのため、抗酸化剤(ビタミンCなど)はBHの減少を防ぎ、eNOSを活性化し、NOの生成を促進します。つまり、アルギニンと抗酸化剤は相乗的にeNOSを活性化しNOの生成を促進します。また、活性酸素はテロメラーゼやテロメアを抑制し、老化や老化病を促進しますが、抗酸化剤は活性酸素によるテロメラーゼやテロメアの抑制を防ぎ、老化や老化病を抑制します。このように、アルギニン単独でも老化や老化病を強力に抑制しますが、抗酸化剤を同時に摂取することでより強力に老化や老化病を抑制し、寿命(勿論健康寿命も)を延長するものと考えられます。すなわち、アルギニンは、NOのテロメラーゼ活性化作用によってテロメア長を維持したり伸ばしたりして、老化や老化病(肥満、メタボリックシンドローム、高血圧、糖尿病、動脈硬化、心血管病、骨粗鬆症、認知症、がんなど)を抑制し、寿命を延長することが期待できます。
  一方、種々の生体成分や天然成分やライフスタイルがテロメラーゼを活性化(保護)したり(抗酸化剤、地中海食、ビタミンD,エストロゲン、亜鉛など)、テロメアを保護してその短縮を抑制したり〔抗酸化剤、ビタミン類(葉酸、ビタミンB
12、ナイアシン、ビタミンDなど)、ミネラル(マグネシウム、亜鉛など)、オメガ―3脂肪酸、ポリフェノール、運動、地中海食、エストロゲンなど〕することが報告されていますが、それらの働きはそれら成分やライフスタイルによる抗酸化作用やNOを介する作用が主に関係しているものと考えられます。



(文献、資料)
1)「老化・寿命のサイエンス」(実験医学増刊、2013)。
2)「ハーパー・生化学」(原書29版)(丸善出版、平成25年)。
3)「アンチエイジング医学の基礎と臨床」(日本抗加齢医学会。2011年)。
4)「健康寿命を伸ばす!アンチエイジングへの取り組み」(東洋出版、2014年)。
5)「細胞増殖の仕組み−細胞周期、癌遺伝子、細胞老化−」(薬学雑誌、126、1087(2006))。
6)"Association between telomere length in blood and mortality in people aged 60 years or older" Lancet, 361, 393 (2003).
7)"Association Between Higher Plasma Lutein, Zeaxanthin, and Vitamin C Concentrations and Longer Telomere Length: Results of the Austrian Stroke Prevention Study" J Am Geriatr Soc, 62, 222 (2014).
8)"Multivitamin use and telomere length in women" Am J Clin Nutr, 89, 1857 (2009).
9)"Diet, nutrition and telomere length" Journal of Nutritional Biochemistry, 22, 895 (2011).
10)"Mortality in randomized trials of antioxidant supplements for primary and secondary prevention: systematic review and meta-analysisi" JAMA, 297, 842 (2007).
11)国立健康・栄養研究所の「健康食品」の安全性・有効性情報の『ビタミンA(レチノール)』の項を参照ください。
12)国立健康・栄養研究所の「健康食品」の安全性・有効性情報の『カロテン』の項を参照ください。
13)"Coenzyme Q10 prevents accelerated cardiac aging in a rat model of poor maternal nutrition and accelerated postnatal growth" Molecular Metabolism, 2, 480 (2013).
14)"The association Between Physical Activity in Leisure Time and Leukocyte Telomere Length" Arch Intern. Med, 168, 154 (2008).
15)「活性酸素の本当の姿」(有限会社ナップ、2014年)。
16)"Effect of Different Intensities of Exercise on Endothelium-Dependent Vasodilation in Humans - Role of Endothelium-Dependent Nitric Oxide and Oxidative Stress" Circulation, 108, 530 (2003).
17)"Antioxidants prevent health-promoting effects of physical exercise in humans" Prc Natl Acad Sci USA, 106, 8665 (2009).
18)"Meta-Analysis: High-Dosage Vitamin E Supplementation May Increase All-Cause Mortality" Ann Intern Med, 142, 37 (2005).
19)"Telomerase reactivation reverses tissue degeneration in aged telomerase deficient mice" Nature, 469, 102 (2011).
20)"Mediterranean Diet, Lifestyle Factors, and 10-Year Mortality in Elderly European Men and Women" JAMA, 292, 1433 (2004).
21)"Mediterranean Diet, Telomere Maintenance and Health Status among Elderly" PLoS One, 8, e62781 (2013).
22)WHO資料総務省統計局
23)"Study Finds DNA Length Can Predict Life Expectancy" (Intermountain Medical Center, USA, 2013)など。

24)"Adherence to a Mediterranean Diet and Survival in a Greek Population" N Engl J Med, 348, 2599 (2003).
25)"Vitamin D and the risk of dementia and Alzheimer disease" Neurology, 83, 920 (2014).
26)"Higher serum vitamin D concentrations are associated with longer leukocyte telomere length in women" Am J Clin Nutr, 86, 1420 (2007).
27)"Increased Telomerase Activity and Vitamin D Supplementation in Overweight African Americans" Int J Obes (Lond), 36, 805 (2012).
28)"Sex differences in telomeres and lifespan" Aging Cell, 10, 913 (2011).
29)a)"Estrogen Receptor-α and Endothelial Nitric Oxide Synthase Nuclear Complex Regulates Transcription of Human Telomerase" Circ Res, 103, 34 (2008). b)"Endothelial cellular senescence is inhibited by nitric oxide: Implications in atherosclerosis associated with menopause and diabetes" Prc Natl Acad Sci USA, 103, 17018 (2006).
30)「エストロゲンと血管」 日本生殖内分泌学会雑誌、18、11(2013)。「閉経後脂質異常症」 日産婦誌、61、N−520(2009)など。
31)"Greater endogeneous estrogen exposure is associated with the telomere maintenance in postmenopausal women at risk for cognitive decline" Brain Res, 16, 1379 (2011).
32)"Estrogen deficiency reversibly induces telomere shortening in mouse granulosa cells and ovarian aging in vivo" Protein Cell, 2, 333 (2011).
33)"Effect of Long-Term Hormone Therapy on Telomere Length in Postmenopausal Women" Yonsei Medical Journal, 46, 471 (2005).
34)「ホルモン補充療法ガイドライン2012年度版解説」 日産婦誌、65、N−49(2013)。「HRTは何時まで続けることが可能か」 日産婦誌、63、N−155(2011)。
35)"Mechanism of Cerebrovascular Protection: Estrogen, Inflammation and Mitochondria" Acta Physiol (Oxf), 203, 149 (2011).
36)"Nitric oxide as a mediator of estrogen effects in osteocytes" Vitam Horm, 96, 247 (2014).
37)"The telomerase tale in vascular aging: regulation by estrogens and nitric oxide signaling" J Appl Physiol, 106, 333 (2009).
38)"Mechanisms involved in the aging-induced vascular dysfunction"
Frontiers in Physiology, 3, 1 (2012).
39)"Nitric Oxide Activates Telomerase and Delays Endothelial Cell Senescence" Circ Res, 87, 540 (2000).
40)"Endothelial cellular senescence is inhibited by nitric oxide: Implications in atherosclerosis associated with menopause and diabetes" Prc Natl Acad Sci USA, 103, 17018 (2006).



 


II.アルギニンの寿命延長、老化および老化病の予防・改善効果

  アルギニン
は、動物において寿命を延ばし、動物や人において老化や老化病(肥満、メタボリックシンドローム、糖尿病、糖尿病合併症、動脈硬化、心血管病、ED、高血圧症、心不全、認知症、感染症、骨粗鬆症、肝障害、痔、がんなど)を予防、改善します(が、それには、アルギニンから生成する一酸化窒素(NO)そのものによる作用抗糖化作用抗酸化作用、あるいはNOによる長寿遺伝子(サーチュイン)の活性化作用(ミトコンドリア合成と活性化作用、抗酸化酵素誘導作用など)およびテロメラーゼ活性化作用(テロメア伸長作用)などが関係しているものと考えられます()。また、アルギニン(NO)の作用は抗酸化剤によって増強されます。


表.アルギニン(NO)の寿命延長、抗老化、老化病抑制作用

 老化および老化病の種類 アルギニンの効果  メカニズム  参考ページ
 寿 命  ・生存数を増加させました(寿命を延長しました)。(動物) ・一酸化窒素(NO)を介した作用
・免疫増強作用
・抗酸化作用
・抗糖化作用
長寿遺伝子(サーチュイン、SIRT1)の活性化作用
テロメラーゼ活性化作用など
アルギニンは長期摂取によってがんの発生を少なくし生存数を増やします!
肥 満  ・脂肪を優先的に減少させます。筋肉の減少はほとんど見られませんでした。(人)
・腹部脂肪(ウェスト周囲径)を強力に減少させました。(人)
・血液中の中性脂肪および脂肪酸が減少。(動物)
・脂肪組織の脂肪分解が増加し、脂肪酸の酸化(燃焼)が増加。(動物)
・一酸化窒素(NO)を介した作用
・脂肪を燃焼し熱に変える褐色脂肪組織を増やします(新しいメカニズム)。
・脂肪組織での脂肪の酸化(燃焼) に関係する遺伝子(NOS−1、HO−3、AMPK、PGC−1α)の発現が上昇。
・アルギニンのこれらの働きには、一酸化窒素(NO)、成長ホルモン、アディポネクチン、GLP−1などのホルモンが関係していると考えられます。
絶対やせる!ダイエットの決め手はこれだ!(ダイエットの革命『アルギニンダイエット』について)
ミトコンドリアと肥満
 メタボリックシンドローム ・肥満(腹部肥満)、高血糖、高血圧などを改善し、メタボリックシンドロームを改善。(人) ・アルギニンのこれらの働きには、一酸化窒素(NO)、アディポネクチンなどが関係していると考えられます。 アルギニンはメタボリックシンドロームを強力に予防・改善します!
ミトコンドリアとメタボリックシンドローム
糖尿病  ・糖尿病へ高率に移行する境界型(耐糖能異常、IGT)の高血糖を正常に戻し、糖尿病や動脈硬化のリスクを低下させました。(人)
・2型糖尿病患者の血糖値を低下させ、糖尿病を改善しました。(人)
・一酸化窒素(NO)を介した作用
・アルギニンによる血糖値正常化や血糖低下作用は、アルギニンのインシュリン分泌増加作用やインシュリン抵抗性改善作用が関係してるものと考えられます。
・アルギニンは血糖低下ホルモンのGLP−1の分泌を促進します。
 ・アルギニンは糖尿病・糖尿病合併症を予防・改善します!
 糖尿病合併症 ・糖尿病(高血糖)で障害を受けた血管や血行動態を改善しました。(人、動物)
・糖尿病で治りにくくなった傷の治りを促進しました。糖尿病による足の潰瘍を治しました。(人、動物)
・糖尿病性腎症を予防・改善しました。(動物)
・糖尿病合併症と関係がある疾患(動脈硬化、狭心症、閉塞性動脈硬化症、ED、認知症など)を予防・改善します。(人、動物)
・アルギニンのこれらの働きには、一酸化窒素(NO)を介した作用と、糖尿病合併症の主な原因である糖化を抑制する作用が関係しているものと考えられます。 アルギニンは糖尿病・糖尿病合併症を予防・改善します!
 動脈硬化  ・効果的な薬がほとんどない動脈硬化を強力に予防、改善します(スタチン系の薬剤より強力です)。(人、動物)
・動脈硬化の原因である血管内皮細胞の異常を改善します。(動物)
・血管を拡張したり、血管を柔らかくしたり、血液が固まるのを抑えたりして動脈硬化ができるのを予防したり、動脈硬化を改善します。(人、動物)
・アルギニンの動脈硬化予防・改善作用は抗酸化剤(ビタミンC、ビタミンE)によって増強されます。(動物)
・アルギニンの抗動脈硬化作用には一酸化窒素(NO)の働きが関係します。 
・動脈硬化の主な原因の一つである糖化を抑制します。
・抗酸化作用を示します。
・動脈硬化を引き起こす主な原因である変性LDL(酸化LDL、糖化LDL)(超悪玉コレステロールともいわれます)の生成を抑えます。
・動脈硬化の大きな危険因子であるホモシステインの濃度を低下させます。
アルギニンは動脈硬化および心血管病を予防・改善します!
 心血管病 ・狭心症を改善します。(人)
・閉塞性動脈硬化症(間欠性跛行)を改善します。(人)
・アルギニンによる心血管病の改善作用は、その強力な抗動脈硬化作用と、アルギニンから生成した一酸化窒素(NO)による血管保護作用、血管拡張作用、血流増加作用、血栓形成抑制作用などが関係しているものと考えられます。 アルギニンは動脈硬化および心血管病を予防・改善します!
 E D ・勃起障害を改善しEDを改善します。(人、動物)
・アルギニンのED改善作用は抗酸化剤によって増強されます。(人)
・アルギニンはバイアグラのED改善作用を増強します。(人)
・陰茎血管での一酸化窒素(NO)の生成を増加させることで血管を拡張させ陰茎を勃起させます。
・動脈硬化を抑制します(老化によるEDは動脈硬化が主な原因です)。
アルギニンはED(勃起不全)を予防・改善します! 
 高血圧症 ・食塩の摂りすぎで引き起こされた高血圧、本態性高血圧、糖尿病や肥満に合併した高血圧、ストレスによる高血圧、動脈硬化が原因と考えられる高血圧を改善します。(人、動物)
・高血圧に合併した腎症や心血管系の異常などの合併症を改善します。(動物)
・アルギニンの高血圧改善作用には一酸化窒素(NO)が関係していると考えられます。 アルギニンは高血圧症を予防・改善します!(血管を柔らかくして血圧を下げるため、動脈硬化が主なの中高年の高血圧に特にお勧めです!) 
 心不全 ・心不全患者(中等症〜重症)の生活の質(QOL)、運動耐容性、心機能、全身循環動態などを改善します。(人) ・アルギニンの心不全改善作用には一酸化窒素(NO)が関係していると考えられます。 アルギニンは心不全を予防・改善します!
 認知症 ・脳血管性認知症患者の知的機能、一般症状(患者の表情の豊かさや反応など)を改善します。(人)
・アルツハイマー病の発症や進行を抑制する ことが期待できます。
・アルギニンの認知症改善作用には一酸化窒素(NO)が関係していると考えられます。
・アルツハイマー病の直接原因と考えられる活性酸素や糖化を抑制します。
アルギニンは認知症を予防・改善します!
 感染症 ・アルギニンは種々の感染症を予防・改善します(老化によって感染症に罹りやすくなります)。(人、動物) ・一酸化窒素(NO)を介した作用
・アルギニンは免疫細胞(T細胞、マクロファージ)を活性化し、免疫力を高めます。
アルギニンは感染症を予防・改善します! 
 骨粗鬆症 ・閉経後骨粗鬆症患者、老人性骨粗鬆症患者の骨密度を増やし、痛みの症状を軽減します。(人)
・骨折の治癒を促進します。(動物)
・一酸化窒素(NO)が関係していると考えられます。 アルギニンは骨粗鬆症を予防・改善します!
痔  ・痔(切れ痔)を改善します。(人)  ・一酸化窒素(NO)の作用で肛門圧を下げ(排便を容易にする)、肛門の血流を高める(傷の治りを早める)。  アルギニンは痔を治します! 
 が ん   ・進行性(ステージIII、IV、再発がん)のがん患者で、延命効果と再発抑制効果を示し、5年生存率を有意に向上させ、一部の患者で完全治癒も可能にしました。(人)  ・アルギニンによる抗がん作用には、免疫増強作用、腫瘍組織におけるサバイビン発現抑制作用、iNOS発現増加作用(NO生成増加)、ODC活性減少作用などが関係しているものと考えられます。     アルギニンはがんを予防・改善します!(アルギニンはがん患者でがんを抑制し、再発を抑制し、延命効果を示し、完全治癒も可能にしました)  


図.アルギニン(NO)の寿命延長、抗老化および老化病抑制のメカニズム



アルギニン
からeNOS(血管内皮型一酸化窒素合成酵素)の働きで生成したNO(一酸化窒素)は、テロメラーゼを活性化しテロメアを長くします。テロメアを長くすることで老化や老化病が抑制され、寿命が延長することが期待できます。また、NOは、長寿遺伝子からつくられるタンパク質のサーチュイン(SIRT1)の生成を促進します。サーチュインは逆にeNOSを活性化します(ポジティブフィードバック)。サーチュインを活性化することで老化や老化病が抑制されることが期待できます。サーチュインは、抗酸化酵素の生成を促進して酸化ストレス(活性酸素が過剰な状態)を抑制して老化や老化病を抑制します。また、サーチュインはミトコンドリアの生成と活性化を促進し、老化や老化病を抑制します。すなわち、アルギニンは、NOのテロメラーゼ活性化作用とサーチュイン活性化作用によって、老化や老化病(肥満、メタボリックシンドローム、高血圧、糖尿病、動脈硬化、心血管病、骨粗鬆症、認知症、がんなど)を抑制し、寿命を延長することが期待できます。一方、加齢、放射線、紫外線、NADPHオキシダーゼ、ミトコンドリア、遷移金属(鉄イオン、銅イオンなど)などにより生成した活性酸素は、eNOSの正常な働きに必要なBH(テトラヒドロバイオプテリン)を酸化し減少させます。BHやアルギニンの不足によって、eNOSはNOを生成する代わりに活性酸素(スーパーオキシド、O)を生成します(eNOSアンカップリング)。そのため、抗酸化剤(ビタミンCなど)は、酸化されたBHを還元再生してBHの減少を防ぎ、NOの生成を促進します。つまり、アルギニンと抗酸化剤は相乗的にeNOSを活性化しNOの生成を促進します。また、活性酸素はテロメラーゼ、テロメア、サーチュイン、ミトコンドリアを抑制し、老化や老化病を促進しますが、抗酸化剤の強化や抗酸化酵素を活性化することで、活性酸素の害から体を守り、老化や老化病を抑制します。このように、アルギニン単独でも老化や老化病を強力に抑制しますが、抗酸化剤を同時に摂取することでより強力に老化や老化病を抑制し、寿命(勿論健康寿命も)を延長するものと考えられます。一方、ミトコンドリアの働き(ATP産生、熱産生など)にはコエンザイムQ10が補酵素として必須ですが、コエンザイムQ10は加齢とともに体内の量が減少すると言われています。折角アルギニンによってミトコンドリアの生成を促進してもコエンザイムQ10が不足していてはミトコンドリアは十分に働くことはできません。そのため、アルギニンと抗酸化剤だけでなく、コエンザイムQ10を共に摂取することでより強く老化や老化病を抑制することが期待できます。なお、コエンザイムQ10は抗酸化活性を持っています。コエンザイムQ10はビタミンC、ビタミンEと共に体内で抗酸化ネットワークを形成しているために、体内の抗酸化能をより強化するためにも、ビタミンC、ビタミンEと共にコエンザイムQ10を摂取することが望ましいと考えられます。
また、アルギニンは、老化の大きな原因の一つと言われてい糖化を抑制します。






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III.お知らせ(ホームページ責任者、参考図書)

【ホームページ責任者】


古賀 弘
Eメール:kogahrs555@nifty.com

健康コンサルタント
薬学博士(東京大学)
日本抗加齢医学会正会員
(有)ジェイエヌピー研究所
(ホームページ:http://jnp-lab.com/


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【参考図書】

「アルギニン」についてもっとお知りになりたい方には次の本(拙著)をお薦めします。本書は本邦最初で唯一の一般向けアルギニン参考書です。 本書のご購入ご希望の方はインターネット書店(Amazon.co.jpまたは紀伊国屋書店)または全国の書店でお買い求め下さい。


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 リンク集

おもいっきりテレビ
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 ためしてガッテン
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