アルギニンでスマートに身長を伸ばそう!

【目次】

1.身長を伸ばすには


2.アルギニンでスマートに背を伸ばそう!


3.アルギニンと成長ホルモンや身長との関係についての試験データ


4.お知らせ(ホームペ-ジ責任者、参考図書)



【お問合せ先】
本ページおよびアルギニンに関するお問い合わせは本ページ責任者古賀までお願いします(Eメール:kogahrs555@nifty.com



上記以外のアルギニンの働きについてお知りになりたい方は
アルギニンで若返る!』をご覧ください。


(更新日:2020/5/30)




【身長を伸ばすためには】

  普通の健康な子供(成長ホルモン感受性の場合)が身長を伸ばしたいときどうすればよいでしょうか。以下のような方法がすすめられます。

①アルギニンを多く含んだ食物(タンパク質を多く含む食物)を摂る。但し、糖質や脂肪の摂りすぎは成長ホルモンの分泌を妨げるので糖質や脂肪を摂り過ぎないようにしてください。

②運動、睡眠などは成長ホルモンの分泌を増加させますので、運動を十分にし、睡眠を十分にとることが重要です。

③これを少なくとも成長期の間継続します。

  以上の生活を成長期の間続けることで、これらの生活をしていない子供に比べ、結果的に身長が5cmあるいはそれ以上伸びる可能性があります。


  一方、低身長症あるいはそれに近い児童の場合、低身長の原因として色々なことが考えられますので、先ず小児科医にご相談下さい。

  このように、病的な原因がない、健康な子供の身長の高い低いは、遺伝的なものなどに加え、ライフスタイルの違いが大きいと考えられます。つまり、このようなライフスタイルを心がける(あるいはそのような環境で育つ)ことが子供の身長を伸ばすのに非常に重要であると考えられます(親御さんの責任重大ですね)。


【ご注意】
  アルギニンは、臨床試験で、低身長児において成長ホルモンを分泌させることが報告されています。また、食事中のアルギニン量と健康な子供の身長の伸びが相関すると報告されています。しかしながら、アルギニンをサプリメントとして摂取した場合、子供の身長が伸びるかどうかについては、可能性は大いにあると考えていますが、現在臨床試験で証明されていません(報告がありません)。従って、アルギニンサプリメントで身長が伸びるとは言えませんのでご注意下さい。また、アルギニンを含むサプリメントが「身長を伸ばす」と表示したり宣伝したりすると、薬機法(旧薬事法)違反となり摘発されますので十分ご注意下さい。

  現在、子供の身長を伸ばすことが臨床試験等で証明されているのは成長ホルモンだけです。サプリメントや健康食品で子供の身長を伸ばすことが臨床試験で証明されているものは現在ありません(アルギニンを多く含む食事が子供の身長を伸ばすことは臨床試験で証明されていますが)。


1.身長を伸ばすには

(1)身長を伸ばすには

  成長期には身長がどんどん伸びますが、それは成長ホルモンが骨端の成長板に働き骨を成長させて身長を伸ばすからです。一方、骨端が閉鎖しますと成長ホルモンが働かなくなり身長の伸びは止まります。すなわち、骨端の成長板がある間に成長ホルモンがちゃんと働かないと身長は伸びないし、成長ホルモンがよく働くと身長はどんどん伸びることになります。
  そのため、成長期に成長ホルモンをいかに増やすかが身長を伸ばすための大きな鍵となります。
  低身長の原因には色々ありますが、ここでは特に病的な原因がない健康な児童が背を伸ばしたいときの方法を解説します。

【低身長の原因】

  低身長は種々の原因によって起こります。下表にその原因を示します。

表.低身長の原因
内因性低身長
  遺伝性
    家族性
    染色体異常
    骨格形成異常
    原発性成長障害を伴う症候群
  子宮内発育遅延
    胎盤異常
    母体の異常
成長および発達の体質性遅延
全身性障害
  心理社会的愛情遮断
  栄養性
  胃腸性
  心臓性
  肺性
  腎臓性
  その他の慢性疾患または薬物
  内分泌
    甲状腺機能低下症
    クッシング症候群
    偽性副甲状腺機能低下症
    くる病
    IGF(インスリン様成長因子)欠損症
      視床下部機能不全
        特発性
        感染後欠損
        照射後欠損
        組織球増殖症、腫瘍
        心理社会的
      下垂体機能不全
      GH(成長ホルモン)非感受性
        原発性GH非感受性
          ラロン症候群
          GH受容体の欠陥または受容体後の欠陥
          IGF合成またはIGF受容体の欠陥
        続発性GH非感受性
          GHまたはGH受容体に対する抗体
          栄養不良
          その他:慢性腎不全、肝疾患、グルココルチコイド過剰、慢性炎症性疾患
(「メルクマニュアル」より引用)

  このように一口に身長が低いといっても様々な原因が考えられるため、低身長の児童をお持ちの方でご心配な方は小児科医(専門医)に相談されることをおすすめします。特に親の責任は重大でできるだけ早く原因を調べることは重要です。その結果原因が明らかになった場合はその原因を取り除きます。そして、低身長症と診断され、成長ホルモンによる治療が可能とされた場合にはその治療が行われます。
  一方、低身長症の範囲に入らなくても低身長に対するコンプレックスは男女ともに、特に男子の場合深刻なものがあります。その場合、その低身長を是正するための、一般的に手軽に使用できる方法はこれまでありませんでした。成長ホルモンによる治療は低身長症と診断された児童にしか行われませんので(保険診療という意味です)、あえて治療してもらおうとすると、保険外で成長ホルモン治療をしてくれる医師を探さなければなりません。またたとえそのような医師が見つかったとしても治療費用は全て自己負担となり、その費用は年間数百万円かかると言われています。た、成長ホルモンはタンパク質のため注射でしか効果を示さないので、毎日注射する負担感は大変なものです。そこで、安価で経口投与で効果を示す成長ホルモン代替物質あるいは成長ホルモン分泌促進物質が強く求められていました。そのようなものとして最も有望なものがアルギニンです。


(2)成長ホルモンとは

  成長ホルモンは、脳にある下垂体というところで産生される、成長を促進するために働くホルモンです。
  成長期には成長ホルモンが盛んに分泌され身長はどんどん伸びますが、成長ホルモンが不足したり、その働きが悪いと成長が阻害され低身長になります。
  成長ホルモンは、就寝後の最も深い睡眠に入った数時間内に最も多く分泌されます。「寝る子は育つ」などの古いことわざがありますが、これは成長に成長ホルモンが深いかかわりを持っていることを言い表しています。



(3)成長ホルモンはどうやって増やすか

  成長ホルモンを増やす方法として、成長ホルモンを直接注射する方法と、成長ホルモンの分泌を促進する成分を摂取する方法があります。

  成長ホルモンは医薬品で、日本では現在、低身長症(治療基準が大変厳しいです)の治療に成長期の子供にしか使えないので、少し低い身長を伸ばしたい、あるいは格好よくなるために身長をもっと高くしたいなどの場合は成長ホルモンは使えません(使う場合は医師や使う方の自己責任の下に使いますが、適応外使用になります。もちろん保険はききません)。また、成長ホルモンはタンパク質のため注射でしか効果は示しません。そのため、毎日注射しなければならず(自己注射です)、その負担感は大変なものとなります。成長ホルモンは経口投与や口腔内投与(スプレータイプなど)によってはほとんど吸収されませんので効果は期待できません。飲む成長ホルモンとか、成長ホルモンのスプレータイプなどが販売されていますが効果は期待できません。
  そのため、低身長症の治療以外の目的には、体内にある成長ホルモンを分泌させる成分を摂取して成長ホルモンを増やす方法が考えられます。

  現在、成長ホルモンを最も確実に、そして強力に分泌させるものとしてアルギニンが知られています。アルギニンは成長ホルモンの分泌を試験するために医療用にも使われています。それだけアルギニンの成長ホルモン分泌促進作用は確実であるということです。

  アルギニンは、低身長の子供(6~14歳)において1日4g摂取することで成長ホルモンを4倍に増やすことが報告されています。



(4)アルギニンで成長ホルモンを増やすことの利点

●アルギニンは成長ホルモンに比べはるかに安いです

  成長ホルモンを直接注射する場合に比べ、アルギニンははるかに安いです。

  成長ホルモンは大変高価で薬代だけで年間数百万円かかります。低身長症(治療基準が大変厳しいです)の治療は保険でできますが、それ以外の目的(少し低い身長を伸ばしたい、身長をより高くして格好良くなりたいなど)に使う場合は、医師の診察費(医薬品のため医師の管理下でしか使えません)と薬代は自己負担です。

●成長ホルモンは注射でしか効果がありませんが、アルギニンは経口摂取で成長ホルモンを増やします

  成長ホルモンはタンパク質のため注射でしか効果はありません。飲むと消化酵素でバラバラに壊れてしまいます。スプレーなどで口腔内などにスプレーしても皮膚や粘膜からはほとんど吸収されませんので効果は期待できません。

  一方、アルギニンは飲んでも良く吸収されて成長ホルモンを増やします(成長ホルモンの分泌を促進させます)。

●成長ホルモン分泌にはアルギニンだけで十分です

  成長ホルモンを分泌させるためにはアルギニンだけで十分です。アルギニンは成長ホルモンを分泌させるために病院でも使われています(この場合アルギニンだけが使われます)。それだけアルギニンの成長ホルモン分泌促進作用は確実であるということです。

●アルギニンはアミノ酸で生体成分ですので副作用の心配はほとんどないと考えられます。



(5)成長ホルモンを増やすためのアルギニンの飲み方

  成長ホルモンは就寝後数時間内に最も多く分泌されますので、アルギニンはこの分泌をさらに促進するために就寝前に摂取するのが望ましいと考えられます〔低身長児の成長促進などのために成長ホルモンを使う場合も通常就寝前に成長ホルモンを注射(皮下注射)します〕。

  成長ホルモンの分泌促進を最も効率良く行うためには、アルギニンの4g程度〔子供(6~14歳)〕を、就寝前の空腹時に摂取するのが望ましいと考えられます。
  なお、アルギニンと共にシトルリンを一緒に摂取しますと、アルギニンの働きが高まりますので、より少量のアルギニンで同等の働きが期待できます。また、アルギニンの長期摂取(例えば3ヶ月程度以上)によって、アルギニンはアルギナーゼによって分解され、アルギニンの働きは弱くなったり消失する可能性が高いので、その場合アルギニンと共にシトルリン(アルギナーゼ阻害剤)を一緒に摂取することをおすすめします。このようにアルギニンと共にシトルリンを一緒に摂取しますと、アルギニンの働きが高まり、長期的な摂取でもアルギニンの働きが弱まったり消失したりしない、より望ましい働きが期待できます(これについては『最新医学データに基づいたアルギニンの飲み方とアルギニンサプリメントの正しい選び方』をご覧ください)。

●アルギニンを摂取する場合の注意点
  これについては『
最新医学データに基づいたアルギニンの飲み方とアルギニンサプリメントの正しい選び方』をご覧ください。



(6)アルギニンは成長ホルモンの分泌を促進することで身長を伸ばすことが出来るでしょうか?!

  成長ホルモンは身長を伸ばすことが知られています。実際低身長症の子供に成長ホルモンを注射しますと身長の伸びが促進されます。
  では、外部から成長ホルモンを与えるのではなく、内部の成長ホルモンの分泌を促進することで成長ホルモンを増やした場合身長の伸びは促進されるのでしょうか?
  アルギニンは成長ホルモンの分泌を促進することが知られています。しかし、これまでアルギニンが実際に成長期の子供の身長を伸ばすかどうか明らかでありませんでした
  最近の研究によって、成長期の子供の7歳から13歳までの6年間の試験で、アルギニン(食物中の)の摂取量が多い子供は少ない子供より身長の伸びが大きいことが明らかにされました。このことから、アルギニン(食物中の)は成長ホルモンの分泌を促進することで成長期の子供の身長の伸びを促進したものと考えられました。
  しかし、残念ながら、アルギニンをサプリメントとして摂取した時に、子供の身長を伸ばすかどうかについては、可能性は大いにあると考えていますが、まだ証明されてはいません(報告がありません)。



2.アルギニン(食物中の)でスマートに身長を伸ばそう!

(1)アルギニンによる身長促進作用

①アルギニンの摂取量と子供の身長の伸びの関係(3年間の試験結果)

  コペンハーゲン(デンマーク)の6歳の子供203人(男児94人、女児109人)について、アルギニン(タンパク質中の)の摂取量が身長の伸びにどのように影響するかが検討されました。試験期間は3年間でした。その結果、アルギニンの摂取量が多い子供の身長は、少ない摂取量の子供より身長の伸びが大きいことが明らかになりました。特に女児ではその結果は明らかでした。一方、男児の場合はその傾向が見られました。加えて、肥満女児ではアルギニンの摂取量が多いとき体脂肪量の減少が見られました。一方、タンパク質の摂取量と身長の伸びとの間には関係が見られませんでした。

  これらの結果は、アルギニン(タンパク質中の)の摂取量が子供の成長(身長の伸び)に大きく影響していることを示しています。すなわち、(タンパク質中の)アルギニンの摂取量が多いほど子供の成長(身長の伸び)がより促進されることになります。一方、タンパク質の摂取量は子供の成長(身長の伸び)に関係していませんでしたので、子供の成長(身長の伸び)に関係があるのはタンパク質の摂取量ではなく、アルギニンの摂取量であることになります。


アルギニンの摂取量と子供の身長の伸びの関係(6年間の試験結果)
  コペンハーゲン近郊の児童を対象に、アルギニン(食物中の)の摂取量と子供の身長の伸びの関係が検討されました。試験期間は7歳から13歳までの6年間でした。その結果明らかにアルギニン(食物中の)は子供の身長の伸びを促進しました。

  試験は、コペンハーゲン近郊の一般の健康な児童を対象に行われました。平均7歳(6~8歳)の686人の白人の児童(男児359人、女児327人)が試験に参加しました。試験終了時(6年後)の解析可能例数は261人でした。試験脱落例の原因は、他地への移動、試験への参加中断、データの欠落などでした。解析対象例261人(男児123人、女児138人)の試験開始時の平均年齢は7歳、試験終了時の平均年齢は13歳でした。アルギニンの摂取量は摂取した食事から算出されました。

  6年間の追跡試験の結果、7歳から13歳の健康な児童において、アルギニンの低摂取量児童(アルギニンの1日摂取量2.2g未満)に比べ、高摂取量児童(アルギニンの1日摂取量2.5~3.2g)では明らかに(統計的に有意に)身長の伸びが高いことが示されました。このように、通常の健康な児童において、アルギニンの摂取量が少ない場合よりアルギニンの摂取量が多い方が身長の伸びが促進されることが明らかにされました。
  なお、今回の試験ではアルギニンの1日摂取量が3.2gより多い場合身長の伸びに対する効果は明らかでありませんでしたが、この理由については不明です。

③アルギニンの身長増加作用のメカニズムが検討されました。その結果、アルギニンは成長ホルモンを増やし、骨の成長板の幅を増加させました。
  アルギニン(食物中の)は成長期の子供の身長の伸びを促進することが報告されていますが(上記
の文献を参照下さい)、そのメカニズムが動物を使った試験で明らかにされました。

  成長期(青春期)のラットをアルギニン投与群とアルギニンを投与しない対照群に分けました。アルギニンは水に溶かし、1日に体重1kg当たり0.45gを経口的に28日間投与しました。対照群には生理食塩水を投与しました。検査項目は、脛骨の成長板の幅とミネラルの付着速度、柱骨量、大腿骨の骨芽細胞と破骨細胞面、血中の成長ホルモン濃度、視床下部の一酸化窒素合成酵素(nNOS)、可溶性グアニル酸シクラーゼ(サイクリックGMP合成酵素)、成長ホルモン放出ホルモン、ソマトスタチンの発現量、下垂体の成長ホルモンの発現量、視床下部の一酸化窒素合成酵素(nNOS)、可溶性グアニル酸シクラーゼ(サイクリックGMP合成酵素)のタンパクレベルなどでした。

  その結果、アルギニンを投与した群では、脛骨の成長板の幅、大腿骨の骨芽細胞面が増加しました。また、血中の成長ホルモン濃度が上昇しました。加えて、一酸化窒素合成酵素(nNOS)と可溶性グアニル酸シクラーゼ(サイクリックGMP合成酵素)(sGC
α1)のmRNAとタンパクレベルおよび成長ホルモンのmRNAの発現量が有意に上昇しました。一方、ソマトスタチンのmRNAの発現量は低下しました。

  これらの結果から、アルギニンは成長ホルモン分泌を促進することで、成長板(長骨の先端部分にあって骨が成長している部分)や骨芽細胞(新しい骨を形成)に働き、長骨(大腿骨、脛骨、上腕骨などの手足を構成する長い形状の骨)を伸ばして身長を伸ばすと考えられました。また、アルギニンによる成長ホルモン分泌促進作用は、アルギニンによるソマトスタチン(下垂体からの成長ホルモン分泌を抑制)の抑制によるものと考えられました。


【考察】
  成長ホルモンによって子供の身長は伸びます(成長ホルモン感受性の場合)。しかしながら、成長ホルモンは低身長症の子供のみが適応になり、低身長症でない子供がいわゆる単に背を伸ばしたいという希望で治療を受ける場合治療費は自己負担になります。その場合治療費は年間数百万円になると言われています。また、成長ホルモンは注射でしか効果を示さないので、毎日注射する負担は大変なものです。そのため、安価で経口的に摂取できる成長ホルモン代替物質あるいは成長ホルモン分泌促進物質が求められていました。そのようなものとして今最も有望なものの一つがアルギニンです。アルギニンは経口で成長ホルモンの分泌を促進します。しかしながら、これまでアルギニンが実際に子供の身長を伸ばすかどうか不明でした。

  上記文献
は、6歳の子供の3年間の試験から、アルギニン(食物中の)の摂取量が多い子供の身長は、少ない摂取量の子供より身長の伸びが大きいことを明らかにしました。
  さらに、上記文献
は、7歳から13歳までの6年間の試験から、アルギニン(食物中の)の摂取量が少ない児童(1日2.2g未満)に比べ、アルギニン(食物中の)の摂取量が多い児童(1日2.5~3.2g)では明らかに(統計的に有意に)身長の伸びが大きいことを明らかにました。試験対象の児童は普通に成長している健康な児童で、特に低身長症の児童を対象にしたものではありませんでした。
  これらの結果から、アルギニン(食物中の)の摂取量を多くすることで、一般の児童でもより身長を伸ばすことができるということが分かりました。
  なお、今回の試験ではアルギニン(食物中の)の1日摂取量が3.2gより多い場合身長の伸びに対する効果は明らかでありませんでした。この理由については不明ですが、アルギニンを食物から摂っているためカロリー摂取過剰や他の食物成分の影響があるのかもしれません(例えば、糖質や脂肪の摂りすぎによる高血糖や遊離脂肪酸の増加で成長ホルモンの分泌は低下します)。また、他の考えられる原因としては、最近の研究によって、アルギニンの大量、長期摂取で体内のアルギナーゼ(アルギナーゼはアルギニンを分解します)が活性化されることが明らかにされてきていますので、今回の試験で示された、アルギニンの1日摂取量が3.2gより多い場合身長の伸びに対する効果は明らかでなかったという結果は、アルギナーゼの活性化が原因である可能性があります。


  上記文献
は、アルギニンの身長促進作用のメカニズムを検討したものです。動物での検討で、アルギニンによって分泌促進された成長ホルモンが長骨の成長板や骨芽細胞に働き長骨を伸ばすことで身長を伸ばす可能性が示されました。また、アルギニンによる成長ホルモン分泌促進作用は、成長ホルモンの分泌を抑制しているソマトスタチンの抑制によると考えられました。

  このようにアルギニン(食物中の)は、健康な通常の成長をしている子供で身長の伸びを促進することが明らかになりました。この結果は数百名の児童が参加した3年間および6年間の試験で明らかにされました。またアルギニンによって分泌促進された成長ホルモンが、外部から注射によって投与された成長ホルモンと同様に、成長板に働き骨を伸ばすことで身長を伸ばすことが考えられました(動物)。


(2)身長を伸ばすためには

  以上の知見から、普通の健康な子供(成長ホルモン感受性の場合)が身長を伸ばしたいときどうすればよいでしょうか。以下のような方法がすすめられます。

①アルギニンを多く含んだ食事を摂る。但し、糖質や脂肪の摂りすぎは成長ホルモンの分泌を妨げるので糖質や脂肪を摂り過ぎないようにしてください。

②運動、睡眠などは成長ホルモンの分泌を増加させますので、運動を十分にし、睡眠を十分にとることが重要です。

③これを少なくとも成長期の間継続する。


  以上の生活を成長期の間続けることで、これらの生活をしてない子供に比べ結果的に身長が5cmあるいはそれ以上異なってくる可能性があります。


  一方、低身長症あるいはそれに近い児童の場合、低身長の原因として色々なことが考えられますので(上記の「表.低身長の原因」をご参照下さい)、先ず小児科医にご相談下さい。

  このように、病的な原因がない、健康な子供の身長の高い低いは、遺伝的なものなどに加え、ライフスタイルの違いが大きいと考えられます。つまり、このようなライフスタイルを心がける(あるいはそのような環境で育つ)ことが子供の身長を伸ばすのに非常に重要であると考えられます(親御さんの責任重大ですね)。


【ご注意】
  アルギニンは、臨床試験で、低身長児において成長ホルモンを分泌させることが報告されています。また、食事中のアルギニン量と健康な子供の身長の伸びが相関すると報告されています。しかしながら、アルギニンをサプリメントとして摂取した場合、子供の身長が伸びるかどうかについては、可能性は大いにあると考えていますが、現在臨床試験で証明されていません(報告がありません)。従って、アルギニンサプリメントで身長が伸びるとは言えませんのでご注意下さい。また、アルギニンを含むサプリメントが「身長を伸ばす」と表示したり宣伝したりすると、薬機法(旧薬事法)違反となり摘発されますので十分ご注意下さい。
  現在、子供の身長を伸ばすことが臨床試験等で証明されているのは成長ホルモンだけです。サプリメントや健康食品で子供の身長を伸ばすことが臨床試験で証明されているものは現在ありません(アルギニンを多く含む食事が子供の身長を伸ばすことは臨床試験で証明されていますが)。



3.アルギニンと成長ホルモンや子供の成長との関係についての試験データ

①アルギニンが成長ホルモンを増やすデータ(臨床試験データ)


●Belloneらは、低身長児にアルギニンを摂取させると成長ホルモンが増えることを示しました(J. Endocrinol. Invest., 1993; 16: 521-525)。
  低身長児(5.5~13.8歳。31人)を対象に、アルギニンを経口または注射(静脈内)で投与したときの成長ホルモンの分泌の程度を検討しました。低身長児(11人)にアルギニン(塩酸塩)を4g摂取(経口)させたところ、成長ホルモンの基礎分泌が4.2倍に増加しました。また、GHRH(成長ホルモン放出ホルモン)による成長ホルモンの分泌促進はさらに1.6倍増加しました。一方、アルギニン(塩酸塩)0.5g/kgを低身長児(10人)に静脈内に投与したところ成長ホルモンの基礎分泌が5.2倍に増加しました。また、GHRH(成長ホルモン放出ホルモン)による成長ホルモンの分泌促進はさらに2.7倍増加しました。

★このように、アルギニンは、特に成長ホルモンが不足したりその働きが低下している低身長児でも成長ホルモンを増やしました。アルギニンは経口的に摂取しても注射とほぼ同等の成長ホルモン分泌促進効果を示しました。


②アルギニン(食物中の)が子供の成長を促進するデータ(臨床試験データ)

●A. J. van Vughtらは、アルギニン(タンパク質中の)が子供の成長(身長の伸び)を促進することを示しました(Anneke Jah van Vught, Berit L Heitmann, Arie G Nieuwenhuizen, Margriet Ab Veldhorst, Lars Bo Andersen, Henriette Hasselstrom, Robert-Jan M Brummer, and Margriet S Westerterp-Plantenga. Association between intake of dietary protein and 3-year-change in body growth among normal and overweight 6-year-old boys and girls (CoSCIS). Public Health Nutr, 2009, Sep 17; 1-7)。

  タンパク質の摂取が子供の成長促進(身長の伸び)と関係していることが知られています。タンパク質の摂取量が少ないと成長の程度は低くなります。一方、タンパク質の量だけでなく質も成長に関係があることが示されています。タンパク質の質の違いはタンパク質を構成しているアミノ酸の構成比の違いに因ります。つまりタンパク質のアミノ酸の中で特定のアミノ酸が成長に関係している可能性があります。では、タンパク質のどのアミノ酸が子供の成長(身長)に関係しているでしょうか。

  A. J. van Vughtらは、タンパク質のどのアミノ酸が子供の成長(身長の伸び)に関係しているかを調べるために研究を行いました(本研究は、コペンハーゲン大学病院など5つのデンマークやスウェーデンの大学や研究機関の共同研究によって実施されました)。

  コペンハーゲン(デンマーク)の18の学校の6歳の子供がこの研究に協力しました。全部で203人の子供(男児94人、女児109人)のデータが集められました。試験期間は3年間でその間の身長の伸びとアルギニン(食物中の)の摂取量との関係が解析されました。

  その結果、アルギニン(食物中の)の摂取量が多い子供の身長は、少ない摂取量の子供より身長の伸びが大きいことが明らかになりました。特に女児ではその結果は明らかでした。一方、男児の場合はその傾向が見られました。加えて、肥満女児ではアルギニン(食物中の)の摂取量が高いとき体脂肪量の減少が見られました。一方、タンパク質の摂取量と身長の伸びとの間には関係が見られませんでした。

【考察】
  子供の成長促進は主にタンパク質が関係しています。タンパク質の摂取量が少ないと成長の速度が遅くなります。しかし、タンパク質なら何でも良いのではなく、タンパク質の量とともにタンパク質の質が成長に影響を与えます(C. Hoppeら、 Am J Clin Nutr, 80, 447(2004)など)。タンパク質の質の違いは主にタンパク質を構成しているアミノ酸の構成比の違いにあります。

  タンパク質は、食物として摂取されたとき、消化管でほぼアミノ酸にまで分解された後体の中に吸収され、一部は再びタンパク質に再合成され、筋肉、皮膚、毛髪などのタンパク質となります。また、他の一部はアミノ酸として種々の生理作用に関係してきます。いくつかのアミノ酸の生理作用の一つに成長ホルモンの分泌促進作用があります。

  成長ホルモン(GH)は子供の成長(身長の伸び)を促進します。いくつかのアミノ酸は成長ホルモンの分泌促進作用を示しますが、そのうちアルギニンは最も強い作用を示すものの一つであることが知られています(Belloneら、J Pediatr Endocrinol Metab, 9, 523(1996); Bratusch-Marrainら、Acta Endocrinol, 90, 403(1979)など)。実際、アルギニンは成長ホルモンの分泌作用を試験するために医療用として使われています。

  これらのことから、アルギニン(タンパク質として、あるいはアミノ酸として)の摂取量が多いほど成長(身長の伸び)を促進することが期待されます。しかし、これまでアルギニンの摂取量と成長促進(身長の伸び)との関係を明らかにした研究はありませんでした。

  本文献はアルギニン(タンパク質中の)の摂取量が子供の成長(身長の伸び)に大きく影響していることを示しました。すなわち、(タンパク質中の)アルギニンの摂取量が多いほど子供の成長(身長の伸び)がより促進されることが示されました。一方、タンパク質の摂取量は子供の成長(身長の伸び)に関係していませんでしたので、本研究からは子供の成長(身長の伸び)に関係があるのはタンパク質の摂取量ではなく、アルギニンの摂取量であることが示されました。

  以上、まとめてみますと、タンパク質による子供の成長(身長の伸び)促進作用は主にアルギニンによると考えられました。アルギニンはその強力な成長ホルモン分泌促進作用により子供の成長(身長の伸び)を促進するものと考えられました


注:アルギニン(アミノ酸として)を子供の成長促進に使用することについて、以下のようなコメントを著者の一人Dr. van Vughtから頂きました。『We believe that arginine is a strong GH stimulator which could influence linear growth and body composition. Maybe it could be helpful to add arginine as a foodsupplement』(日本語訳:私たちは、アルギニンが強力な成長ホルモン分泌促進作用を持ち、成長促進(身長を伸ばす)や体組成(脂肪など)に影響をおよぼすと考えています。アルギニンは栄養補助に有用であると考えます)。


●A. J. van Vughtらは、アルギニン(食物中の)が子供の身長の伸びを促進することを示しましたvan Vught AJ, Dagnelie PC, Arts IC, Froberg K, Andersen LB, El-Naaman B, Bugge A, Nielsen BM, Heitman BL. Dietary arginine and linear growth: the Copenhagen School Child Intervention Study. Br J Nutr.  2012 Oct 10; :1-9.)。

  A. J. van Vughtらは、以前の報告(上記文献)で、コペンハーゲンの18の学校の6歳の子供(203人)を対象に、アルギニン(食物中の)の摂取量と身長の伸びの関係を3年間追跡し、アルギニンの摂取量が多い子供の身長は、少ない摂取量の子供より身長の伸びが大きいことを明らかにしました。

  本文献では、7歳から13歳までの6年間の追跡結果が示されました。その結果明らかにアルギニン(食物中の)は子供の身長の伸びを促進しました。

  試験は、コペンハーゲン近郊の一般の健康な児童を対象に行われました。平均7歳(6~8歳)の686人の白人の児童(男児359人、女児327人)が試験に参加しました。試験終了時(6年後)の解析可能例数は261人でした。試験脱落例の原因は、他地への移動、試験への参加中断、データの欠落などでした。解析対象例261人(男児123人、女児138人)の試験開始時の平均年齢は7歳、試験終了時の平均年齢は13歳でした。アルギニンの摂取量は摂取した食事から算出されました。

  6年間の追跡試験の結果、7歳から13歳の健康な児童において、アルギニンの低摂取量児童(アルギニンの1日摂取量2.2g未満)に比べ、高摂取量児童(アルギニンの1日摂取量2.5~3.2g)では明らかに(統計的に有意に)身長の伸びが高いことが示されました。このように、通常の健康な児童において、アルギニンの摂取量が少ない場合よりアルギニンの摂取量が多い方が身長の伸びが促進されることが明らかにされました。
  なお、今回の試験ではアルギニンの1日摂取量が3.2gより多い場合身長の伸びに対する効果は明らかでありませんでしたが、この理由については不明です。

【考察】
  成長ホルモンによって子供の身長は伸びます(成長ホルモン感受性の場合)。しかしながら、成長ホルモンは低身長症の子供のみが適応になり、低身長症でない子供がいわゆる単に背を伸ばしたいという希望で治療を受ける場合治療費は自己負担になります。その場合治療費は年間数百万円になると言われています。また、成長ホルモンは注射でしか効果を示さないので、毎日注射する負担は大変なものです。そのため、安価で経口的に摂取できる成長ホルモン代替物質あるいは成長ホルモン分泌促進物質が求められていました。そのようなものとして今最も有望なものの一つがアルギニンです。アルギニンは経口で成長ホルモンの分泌を促進します。しかしながら、これまでアルギニンが実際に子供の身長を伸ばすかどうか不明でした。

  本文献は、アルギニン(食物中の)の摂取量が少ない児童と多い児童を比較し、7歳から13歳(平均年齢)までを追跡調査しました。その結果、アルギニンの摂取量が少ない児童(1日2.2g未満)に比べ、アルギニンの摂取量が多い児童(1日2.5~3.2g)では明らかに(統計的に有意に)身長の伸びが大きいことが分かりました。試験対象の児童は普通に成長している健康な児童で、特に低身長症の児童を対象にしたものではありませんでした。
  これらの結果から、アルギニンの摂取量を多くすることで、一般の児童でもより身長を伸ばすことができるということが分かりました。
  なお、今回の試験ではアルギニンの1日摂取量が3.2gより多い場合身長の伸びに対する効果は明らかでありませんでした。この理由については不明ですが、アルギニンを食物から摂っているためカロリー摂取過剰や他の食物成分の影響があるのかもしれません(例えば、高血糖や遊離脂肪酸の増加で成長ホルモンの分泌は低下します)。 また、他の考えられる原因としては、最近の研究によって、アルギニンの大量、長期摂取で体内のアルギナーゼ(アルギナーゼはアルギニンを分解します)が活性化されることが明らかにされてきていますので、今回の試験で示された、アルギニンの1日摂取量が3.2gより多い場合身長の伸びに対する効果は明らかでなかったという結果は、アルギナーゼの活性化が原因である可能性があります。



③アルギニンの身長増加作用のメカニズムが検討されました。その結果、アルギニンは成長ホルモンを増やし、骨の成長板の幅を増加させました。(Jiang MY, Cai DP. Oral arginine improves linear growth of long bones and the neuroendocrine mechanism. Neurosci Bull. 2011 Jun; 27(3): 156-62)

  アルギニン(食物中の)は成長期の子供の身長の伸びを促進することが報告されていますが(上記文献②)、そのメカニズムが動物を使った試験で明らかにされました。

  成長期(青春期)のラットをアルギニン投与群とアルギニンを投与しない対照群に分けました。アルギニンは水に溶かし、1日に体重1kg当たり0.45gを経口的に28日間投与しました。対照群には生理食塩水を投与しました。検査項目は、脛骨の成長板の幅とミネラルの付着速度、柱骨量、大腿骨の骨芽細胞と破骨細胞面、血中の成長ホルモン濃度、視床下部の一酸化窒素合成酵素(nNOS)、可溶性グアニル酸シクラーゼ(サイクリックGMP合成酵素)、成長ホルモン放出ホルモン、ソマトスタチンの発現量、下垂体の成長ホルモンの発現量、視床下部の一酸化窒素合成酵素(nNOS)、可溶性グアニル酸シクラーゼ(サイクリックGMP合成酵素)のタンパクレベルなどでした。

  その結果、アルギニンを投与した群では、脛骨の成長板の幅、大腿骨の骨芽細胞面が増加しました。また、血中の成長ホルモン濃度が上昇しました。加えて、一酸化窒素合成酵素(nNOS)と可溶性グアニル酸シクラーゼ(サイクリックGMP合成酵素)(sGC
α1)のmRNAとタンパクレベルおよび成長ホルモンのmRNAの発現量が有意に上昇しました。一方、ソマトスタチンのmRNAの発現量は低下しました。

  これらの結果から、アルギニンは成長ホルモン分泌を促進することで、成長板(長骨の先端部分にあって骨が成長している部分)や骨芽細胞(新しい骨を形成)に働き、長骨(大腿骨、脛骨、上腕骨などの手足を構成する長い形状の骨)を伸ばして身長を伸ばすと考えられました。また、アルギニンによる成長ホルモン分泌促進作用は、アルギニンによるソマトスタチン(下垂体からの成長ホルモン分泌を抑制)の抑制によるものと考えられました。


【考察】
  本文献は、アルギニンの身長促進作用のメカニズムを検討したものです。動物での検討で、アルギニンによって分泌促進された成長ホルモンが長骨の成長板や骨芽細胞に働き長骨を伸ばすことで身長を伸ばす可能性が示されました。また、アルギニンによる成長ホルモン分泌促進作用は、成長ホルモンの分泌を抑制しているソマトスタチンの抑制によると考えられました。





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健康コンサルタント
薬学博士
日本抗加齢医学会正会員

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【参考図書】

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